フリーター、ゴーレムになり異世界を闊歩する

てぃー☆ちゃー

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幕間章 雷鯨セルジアのお仕事

雷鯨セルジアのお仕事③

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 シオは魔法の袋から『海槍クラーケン』を取り出すと、その切っ先を水につけて何やら魔力を練りだした。

『ありがたやありがたやありがたやありがたや』

 や、亀よ。念話を切れ。

『じゃあ出すぞ。ほれ』

 水面に巨大な魔法陣が浮き上がると、水が渦を巻く。
 練り上げられた膨大な魔力が魔法陣から迸ると、青白い光と共にオレ様の求めた生き物が姿を現した。

「お初にお目にかかります、クラーケン様。その膨大な魔力に恐れ入ります、僭越ながら一族の代表たる我がご挨拶させて頂きます」

 柔らかい真っ白な毛並みで水をはじいて、体長1メートル程のサイズのつぶらな瞳を持ったネズミが低く渋みのある声で挨拶をした。

「よ、お前が来たか。ゼイン」
「雷鯨様!クラーケン様とご一緒でしたか!世界の危機ですか!?この世の終わりですか!?」
「ちげーよ!なんでそうなるんだ!」
「では、とうとう全世界の海をその手中に収める準備が出来たのですか!このゼイン、否!我らがアクアウォンバット一族がその血と誇りを賭けて貴方様方と共に」
「ちげーって!ちょっとお前たちの知識が欲しかったんだよ!」
「は?またまたご冗談を。雷鯨様とクラーケン様が手を組めば、海どころかあらゆる陸地をもその手中に」
「収めねーから!いいから話を聞け!」
「おお、失礼いたしました。それで、クラーケン様。どのようなご用件で」
『呼んだのオレだけど、用があるのはそっちの鯨だぞ』
「なんと!雷鯨様の為にクラーケン様がご助力を!これは海の歴史が大きく変わりま」
「変わんねえよ!だから知恵を借りたいって言ってんだ!」

 話が進まねえ!

「それでは・・・一体どのようなご用件で?」
「ようやく話が進められるな、実はこの湖でな」

 オレ様は肩を落としながら亀から聞いた話をして、足りない部分を亀に付け加えた。
 横で清蓮が嬉しそうにシオに通訳してたが、気にしない事にした。



「なるほど、簡単に言うとこの湖の生態系が崩れ始めているからなんとかしたいと」
「そういうこと」
『賢いネズミだなー』
「我らが一族は海の賢者を師事しております故。水生生物の危機は確かに雷鯨様としては見過ごせませんな」

 オレ様は頷くと続きを促した。

「雷鯨様のおっしゃる通り、ソルトマイマイが良いでしょう。数はこの水中の魔力量ですと1万程度でよろしいかと。すぐに増えますし」
「あんま増えすぎるとまずくないか?」
「ソルトマイマイを駆除させる為に海老か蟹を入れればいいでしょう。他の生物の事を考えると小型の海老がよろしいですな。それなら魚達の餌にもなりますし」
「なるほどな!」
「こういった場合、この湖の捕食者の頂点の生き物に勝てない程度の連中が丁度良いです。ここの魚達の事を考えると、海老は少し多めに2万くらい欲しいですな。ここは暖かい気候のようですから、セラード大陸の戦場川から呼び出すのがよろしいかと」
『貝より多いんだ?』
「ソルトマイマイ1匹で海老達約20匹の腹が膨れます。それに2万出した海老もすぐにここの魚達に食われて半数くらいまで数が減るでしょう」

あれ?そんなに持ってきちゃってそっちの川は平気か?
 戦場川のことは詳しくないからなー。

「ご心配しなくとも、あそこの川は流域範囲が広いですから100万程度の海老が減ったところで大した問題ではございませんよ。死体がありすぎて海老達も増えに増えてますから」

 顔に出てたか。

「顔に出ておりました」
「うるせよ」
『お前はわかりやすいからなー』

 シオにイラっとしたが、我慢だ。オレ様は大人鯨だからな。

「あとは、念のため大きめのリビングゼリーを1匹放出しておきましょうか。あやつがいればこいつらが定着しなくとも元々いた生物たちが絶滅することもなくなりますから」
「それだ!そうだよそうだよ!それを思い出せなかったんだよ!」
「これらが定着すれば水鳥達も増えて新たな生物がどこから運ばれてくるかもしれませんが、まあそれも自然の営みでしょう。百年も経てばこの湖も様変わりするかもしれませんけどね」
『とりあえず出せばいいのか?』
「おう!シオ頼む!」
『了解だ。量が多いから少し離れておけ。清蓮と亀はオレの上な』
「そ、それは申し訳ないといいますか」
「いいじゃねえか。ここに来る途中に運ばせようとしてたし」
「それはセルジア様が」
『まあまあ、早く乗る』

 シオは清蓮を優しく持ち上げて肩に乗せる。亀は清蓮の手の中だ。
 シオは再びクラーケンを水につけて魔力を練り上げていく。
 先ほどよりも巨大な魔法陣が出来上がると、そこからドボドボとソルトマイマイが出るわ出るわ・・・・。

『きもいな』
「そうだな」
「海老を出すともっとすごい光景になりますよ」
『うへえ』
「オレ様もシオの上にいこ」
『残念だな、ネズミで定員オーバーだ』
「うわっ!ずるいぞゼイン!」
「申し訳御座いません、ですが召喚主様には逆らえませんから!」
「嬉しそうだなオイって、ちょっと待て!海老まだ出すんじゃ!ぎゃああああああああああああああ!」

 この日オレ様の体は海老の波に飲まれる羽目になった。
 くそっ、オレ様の素晴らしさを理解できない生き物なんて嫌いだ。





「よーおっちゃん!解決してきたぜ!」
「まじか!早いな!」

 オレ様は漁師のおっちゃんに声をかけに戻ってきた。
 漁師達人間も、湖の生態系の一つだ。オレ様が守ってやらなきゃならない時もある。

「とは言うものの、減った魚たちがいきなり増える訳じゃないけどな。1、2年は捕れる魚は減ったままだが大丈夫か?」
「そうか、そりゃあそうだよな。船から降りる連中はまだ出るかもしれんな」
「むしろその方が魚達が増えるチャンスと言えばチャンスけどな。あんたらも生きていく上で必要かも知れんが、魚達を捕り尽したら結局この湖は死んじまう」
「ははは、そんな事をしたら青月の雷鯨様の怒りを食らっちまう。オレ達もわきまえてるさ」

 それは良かった。オレ様も世話した土地を滅ぼしに来ないで済むからな。

「それにここは鍛冶場の街だ、仕事はいくらでもある。家族を含めて食っていこうと思えばみんなで働けばいいさ、船さえ手放さなければいずれ湖に戻れるんだろ?」
「そういうことだ、実感がわくようになるには数か月かかるだろうが。その時には釣り糸でも垂らしてみてくれ」
「そうか・・・じゃあその時には冒険者ギルドで報酬を受け取ってくれ。受注はしておいたんだろ?」

 あ?いや、オレ様冒険者じゃねえし。

「そいつは取り下げていいぜ?多分受け取らないだろうし」
「あ?」
「だって冒険者ギルド行かないといけないんだろ?面倒じゃん」
「面倒ってお前・・・」
「漁が出来なくなるんだ、金もいるだろ?お前らで使いな!」
「でもそれじゃあ」
「すぐに結果を出せる事をした訳じゃねーし?それに水生生物のトラブルはオレ様の仕事みたいなもんだしな!」
「仕事?やっぱ海人族はそういった管理も行ってるのか?」
「そんなところだ!じゃあな!」
「あ、おい・・・行っちまったな。何だったんだあいつは」

 オレ様は颯爽と湖に戻ると、対岸まで向かって一気に泳いだ。
 パンダ亀とアクアウォンバットのゼインのいる地点まで戻って、最後の仕上げをすることに。

「あれ?シオ達は?」
「今日の宿を取りに行かれました、そろそろ日の落ちる時間ですからね。宿が決まったら迎えに来られるそうです」
「そうか?じゃあお前も水からあがりな。仕上げの一発を落とすから」
「ええ、よろしくお願いいたします。海老達が魚の卵を食わない様にしっかり散らして下さい」
「わかってるよ。クラゲは、と」

 オレ様はリビングゼリーを見据えると、片手を帯電させる。

「雷鯨の名のもとに!轟け雷音!落ちろ雷撃!」

 別に叫ぶ必要もないけどな!やっぱ格好って大事じゃん!
 オレ様の放った素敵電撃がリビングゼリーに直撃すると、そのリビングゼリーは粉々に霧散した。

「あとは勝手に食われて再生してを繰り返すでしょう。その先は、この湖とこの湖の生き物たちの力に任せるのがいいです」
『雷鯨様、有難うございました。これでこの湖は蘇りまする』
「おう!で、お前はどうする?ここに残るか?仲間のとこにいくか?」
『そうで御座いますね・・・やはり独りは寂しいですから』
「じゃあ用事が済んだら連れていってやるよ!」
『有難う御座います』
「いいってことよ!」
「そういえば、雷鯨様。お子様が生まれるそうで。おめでとうございます」
『おお!そうでありましたか!それはめでたいですね!』

 え?何それ・・・聞いてねえけど。

「存じて無かったので?」
「そういえば、海都の一件やらで3年近く帰ってないや・・・」
「元々往復で1年近く掛かりますし仕方ないかと。しかし3年ですか?ずいぶん寄り道なされましたな。奥方様方はなんと言うか」
『いけませんね、雷鯨様。妊娠中の女性はナイーブですから』

 マジかー、シオの終わったら速攻帰らないと行けなくなったな。
 もうちょっと遊んでたかったんだけどなー。
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