フリーター、ゴーレムになり異世界を闊歩する

てぃー☆ちゃー

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第九章 ゴーレム、体を張る

第七十九話 ゴーレムの元の世界

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 オレはゆっくりとした動作で前に歩いて蟻たちが向かってくる正面に立った。

「おい?あいつは大丈夫なのか?」

 騎士っぽい人たちのリーダーかな?なんか綺麗な金髪美人さんの声が聞こえてくる。

「大丈夫だ、シオの撃ち漏らしを片付けるぞ!」

 そうしてくれ。
 迷彩服の人たちは持っていた銃で遠距離から蟻の頭めがけて鉛玉をぶち込んでますね。

 オレは両手から炎を作り出すと、火炎放射の魔法を前面に向けて一気に放出する。

『フレアバーナー!』

 両手の炎を広げてまとめて蟻たちの集団に向かってぶちまける。
 なんかこういうゲームあったよね!
 サ・サンダー!的な。

「すごい!」

 すごいでしょー?

 オレの炎の範囲を抜けて、横から蟻が何匹か後ろに抜けそうになる。

『アースピラー』

 地面を隆起させて、大地から巨大な杭を地面から発生させて蟻のおなかを真下から串刺しに。

 お?蟻の上に人影が乗ってるな。
 二足歩行な人型の蟻で、腕が4本付いてる。顔は蟻だ。

 そいつが手を上げると、一斉にオレのところに蟻が向かってきた。
 有難い、蟻だけに。

『フレアバーナー』

 うーん、焼き蟻の出来上がり。ごめ、火力高くて原型は留めてないや。
 あの指揮取ってるっぽい奴倒したいなー。

 あ、倒れた。狙撃かな?

 しかし、どんどん出てくるな蟻。
 離れた一団には攻撃魔法か?ロケランか?とりあえず爆破系の何かがぶち込まれて蟻達がまとめて吹き飛ばされている。

 さっきの命令が有効なのか結構な数がオレのところに向かってくるけど、オレは両手から生み出した炎の魔法で敵を一掃。
 オレの前に空間が開く、そこに蟻が殺到。
 再度火炎放射。空間が開く。
 蟻が殺到。
 空間が開く。
 蟻が殺到。

 うん、楽だ。

 周りを見渡す余裕ができるな。ついでに探知で周りの状況を確認しよう。

 ゴート達は4人で固まって逸れてる蟻を1匹1匹丁寧に葬っていく。
 たまに集団の蟻にはゴートさんが爆発の魔法でまとめて敵を吹き飛ばして、文字通り虫の息になった蟻をアイと清蓮の二人がとどめを刺していってる。

 騎士の集団は弓矢で基本足止めをして、リーダーっぽい金髪の騎士さんが蟻を1匹づつ剣で討伐。

 迷彩服軍団は敵を狙い撃ってるね。銃だ
 近づけない様にしっかりと戦っている。

 敵の数は……すげえな。多い多い、地平線の先まで蟻が真っすぐ列になってこっちに歩いてきているな。こいつら何匹いるんだ?
 なんかこういう敵をまとめて倒せる方法ないかな?
 核的な?
 いやいや、ダメダメ。地形変わっちゃうよ!
 ……変えちゃダメ?

 要は街の人達が逃げ出す時間が稼げればいいわけか。
 どうするかなー。

 とか考えていると、蟻達が徐々に反転して帰っていった。
 お? あれか? オレに恐れをなして逃げに入るパターンか?

 こぼれた蟻を片付けて、念のため指揮を執っていたっぽい人型の蟻の死骸を掴んで持って帰ることに。

「お疲れ様でしたシオ様。流石に大活躍でしたね」

 ただいま清蓮。

「指揮を執っていた司令蟻か」
「死体を拾ってきたか、中々に知恵の周るゴーレムだな」

 ゴートさんと迷彩服の人達のリーダーっぽい人が並んでる。
 およ? その胸元のワッペンは……日本語?自衛官か。

「シオ様はこちらの方をご存知なのですか?」

 その人は知らないけど、その自衛隊なら知ってるよ。

「すまない! 助かった!」

 最後に来たのは騎士っぽい人たちのリーダーっぽい金髪美人さんだ。

「いえ、当然の事をしたまでです」
「進行方向だから手伝ったまでだ」
「それでも助かりました。ありがとう。しかしすごい性能のゴーレムだな、あそこまでの火力をここまで維持出来るとは」

 えっへん! って喜んでもいいけどさ。あいつら帰ったけどもう平気なんてことは・・・。

「無いにゃ。兵隊蟻は夜目が効くにゃ、でも司令蟻は夜目が効かにゃいから帰っただけにゃ。今日撃退したからには明日にもっとすごい量で押し寄せて来るにゃ」

 そうなんだ?

「やはりそう思いますか……だとしたらこの街道の先の街や村は……」
「全滅してるはずにゃ。抵抗した者は殺されて食われるにゃ。抵抗しなかった者も連れ去られて巣で食われるにゃ。常識にゃ」

 テイツォの言葉に自衛官達が息を飲む。
 残酷な現実だな。

「なんとか助け出せれば……」
「アイ、無謀にゃ」
「くそっ、私の家族達はこの先の街にいるというのに」

 オレは歩を進めると、蟻の逃げ込んだ先に向かう事にする。

「シオ!どこへ行く気だ?」

 オレなら負けないからちょっと夜のうちに掃除してくるよ。

「一人で掃除を?シオ様!」
「ダメにゃ!危ないにゃ!」
「お前が行くならオレも!」
「……いい手かも知れんな」
「ゴートさん!」
「ただ敵が下手に散らばると不味い。夜襲をかけるならばしっかりとした準備が必要だ」
「私も行くぞ!連れてってくれ!」

 女騎士さん、そろそろ名乗って?

「えっと、貴女は?」
「失礼した。私はムルマー魔法兵団の教導騎士アイレインだ。後ろの連中は騎士見習い、彼らは置いていく」
「夜襲をしかけるのか?」
「どうするかな。あんた等は?」
「……ムルマーに滞在中の別の国の自警団だ。我々もあと二週間以内にムルマーに戻らなければならないが、蟻の群れか」

 自衛隊ね。

「ジエイタイ? にゃんにゃ?」
「・・・我々を知っているのか?」
「にゃあ、怖い顔にゃ」

 オレが話すよ。清蓮。通訳頼む。

「わかりました」

 オレはゴーレム、異世界人だ。あ、今は人じゃ無いです。

「こちらのゴーレムは異世界人で・・・え? シオ様!?」

 あ、そう言えば言ってなかったな。

「異世界人? 待て待て! 軍曹! 冨永軍曹! タブレット持って来い!」
「はっ!」

 出身は日本だよ。名前は瀬能志雄。
住所とか名前とか西暦とか答えた方がいいか?

「だから待てと! 日本人か!?」

 オレは地面に太い指で『はい』と書いた。

「よし、それでは質問をするから地面に書いてくれ。通訳をしてくれている女性を介さない方がこちらとしては都合がいい」

オレは再度地面に『はい』と書いて質問を待った。

「では、まず名前。それから生年月日と住所。性別に……」

 しゃがんだオレはその自衛官に言われるがままに質問の答えを地面に書く。
久しぶりに日本語を使った気がしたよ。

「民間人か。……瀬能君、この写真は君で間違いないかね?」

 自衛官がタブレットをこちらに向けて確認をしてくる。
正解!なんだ、オレの事探してたのか。自衛隊優秀じゃん?

「異世界に移行した人間の調査も我々の仕事だ。国で管理していない空間の歪みが発生して、そこに住んでいた一人の成年が行方蔚不明になっているとのデータが残っている。我々は飲み込まれたと仮定して捜索はしていたんだ。生きていたのか」

 生きてるかどうかで言えば怪しいけどな。体はもう死んでるし。


「シオ様、こちらの絵はまさか・・・・」

 オレが生きていた頃の絵だよ。

「ください! 欲しいです!」
「見たいにゃ!」
「興味あるな」
「はっはっはっ、セルジア様がいないのが残念だ」

 お前ら勝手に盛り上がるなよ! てか盗るな!
 お前も簡単に渡すんじゃねえ!
 ぐあ! 清蓮通訳してねえし! コラお前ら!

「シオ様、人のお姿も素敵です」

 そりゃどうも!てかタブレットから手を離せ!

「こちらは頂いても宜しいですよね!」
「や、それは無理だ」
「いいですよね! ほら! 本人も良いっておっしゃってますし!」

 言ってねえよ!断れ自衛官!

「ふむ、本人が良いと言っているのであれば問題ないな。基地に戻ったら印刷するか?」

 言ってねえ!てかこいつふざけた性格してやがる!ニヤニヤこっち見るんじゃねえ!

「シオ様、昔のお話をもっとして欲しいです」

 それは今度な!

「あー、その。済まない瀬能君、なるべくなら我々の世界の事は伏せて欲しい。あまり別の世界から来ている人間というのを広めたくないんだ。君たちも宜しいか?」
「はあ」
「確かに、私もムルマーで働いていて奇妙な集団の話は聞いているが……異世界人とは聞いていなかったな」
「そういう事だ、極力伏せている。お互いの世界の為にな」
「お互いの?」
「見知らぬ国家が突然顔を合わせると、高確率で起きる物があるだろう?」
「なるほど、戦か」

 さすがゴートさん、理解が早いね。全然ピンと来なかった。
 他のメンバーも首を傾げている。

「しかもお互いに未知の進化を遂げた人種だ、我々には科学兵器がありこの世界には魔法がある。あまり接近しすぎるのも良くないだろ」

 んー、じゃあなんであんたらはこっちに来てるんだ?

「君のようにこちらに飛ばされた一般人の保護や、我々の世界では発展し得ない技術の獲得が主な任務だな。上層部の意向でこちらの物資や人材は向こう側の世界に入れないようにしているからあくまでも技術交換という意味合いだ」
「ではなぜムルマーに?」
「ムルマーの都市を統べる領主が元日本人なんだよ」

 マジか!

「元々日本人だが、記憶を持ったままこちらの世界に生まれ変わった男でな。色々不便だからとムルマーを発展させたんだ」
「ではムルマーが魔法都市と呼ばれるようになったのは・・・」
「彼の功績だろう。彼はエルフに転生して長きに渡りムルマーを守り発展させて独自の自治区に作り変えた。我々の世界の発想を元に様々な魔法具を作り出して人々の生活を豊かにしつつ、その都市を守っている男だよ」

 そんな奴がいるのか。こっちの世界で人間とかエルフなだけで羨ましいじゃないか!こちとらゴーレムだぞ!

「まあまあシオ様。お陰で私と出会えたのですから」
「私達の間違いだにゃ」
「シオの故郷の話を聞きたいな」

 お前ら楽しそうだな。
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