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5年ぶりの約束を
道の途中で(奏視点)
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はるにオルゴールを渡し、車に乗り込む。
運転をしてくれている私の付き人は、なにもいわずにすぐに車をだしてくれた。彼女は5年もの間、私の付き人をしてくれた心の許せる人の1人だった。
「大丈夫ですか?」
「…あぁ。予定通り国際空港へ向かってくれ。」
彼女の言葉に精一杯の冷静を装い、床だけを見つめる。はるに会いに行くまでの気持ちはもうどこにもなかった。
心に穴が空いてしまったようだった。心のどこかで期待していたのかもしれない。もしかしたら、記憶が消えても私のことをずっと待ってくれているんじゃないか。そんなわけないことはわかっていたのに、心のどこかで信じてしまっていた。5年。すごく長い時間だった。だからはるが誰かと幸せになっていてもおかしくはない。はるが幸せなら私はそれでいい。それでいい、はずだった。
「…っ。」
こぼれそうになる涙を必死に押し殺す。ずっと願っていたことなのに、はるの幸せだけを願っていたはずなのに。はるの隣に自分の居場所がないことがどうしようもなく辛かった。
はると一緒に歩いていた綺麗な女の人が、羨ましくて仕方がなかった。男勝りでかっこつけな自分とは正反対の女性らしい美しい人。自分が彼女のような女性だったら、そう思わずにはいられなかった。
「…降ろしてくれ。」
「…え?」
「ここでいい。」
戸惑いながら、彼女は車を路肩にとめる。私はかばんをもって車を降りた。
「ありがとう。乗せてくれて。」
「ここまできたなら、最後まで送りますよ?」
心配性な彼女は優しく私を気遣ってくれた。
「いいんだ。少し歩きたい。」
「でも…、ここから空港までは少し距離が…。」
「1人になりたいんだ。悪いな。」
彼女はそれをきくと、悲しそうな顔をして黙り込んだ。はると私の再会を心から喜んでくれた彼女も、きっと今悲しみにひたっているのだろう。
「そう暗い顔をしないでくれ。これは私の願った幸せなんだ。」
いつものような強がりと今出来る精一杯のぎこちない笑顔をつくる。でも彼女には私の気持ちがすべてバレてしまっているのかもしれない。でもそうだとしても、私は1人になりたかった。
「わかりました。なにかあったらよんでくださいね。」
彼女がゆっくりと去っていく。いつの間にか外は真っ暗でもう日が暮れかけていた。前々からこの再会ではるに大切な人がいたら、海外へ行き幸村グループの海外支店のほうを手伝おうと思っていた。まさか本当にすることになるとは、あまり考えていなかったが。小さく息をはき、国際空港への道を歩き出した。その直後だった。
「かなっ…!!」
突然響いた叫び声に後ろを振り返ると、ここにはいるはずのない人が私をみていた。
「…っ!?は、はる、?!な、なんで!?」
驚きすぎて声が裏返る。
だが、そんなことも気にならないくらい頭の中がはてなマークでいっぱいになった。なんで、どうして、ここにいるわけがないのに。もう二度と、会えないはずなのに、会わないはずなのに。
はるがゆったりと私に笑いかける。
はるの笑顔は5年前と変わらない、太陽のような笑顔だった。
あぁ、まぶしいな…。
やっぱりはるは、私の太陽だよ…。
真っ黒な空にぽつりと浮かぶ孤独な月を太陽は壊れぬように優しく優しく包み込んだ。
溢れ出した涙はもう止めることすらできなかった。
運転をしてくれている私の付き人は、なにもいわずにすぐに車をだしてくれた。彼女は5年もの間、私の付き人をしてくれた心の許せる人の1人だった。
「大丈夫ですか?」
「…あぁ。予定通り国際空港へ向かってくれ。」
彼女の言葉に精一杯の冷静を装い、床だけを見つめる。はるに会いに行くまでの気持ちはもうどこにもなかった。
心に穴が空いてしまったようだった。心のどこかで期待していたのかもしれない。もしかしたら、記憶が消えても私のことをずっと待ってくれているんじゃないか。そんなわけないことはわかっていたのに、心のどこかで信じてしまっていた。5年。すごく長い時間だった。だからはるが誰かと幸せになっていてもおかしくはない。はるが幸せなら私はそれでいい。それでいい、はずだった。
「…っ。」
こぼれそうになる涙を必死に押し殺す。ずっと願っていたことなのに、はるの幸せだけを願っていたはずなのに。はるの隣に自分の居場所がないことがどうしようもなく辛かった。
はると一緒に歩いていた綺麗な女の人が、羨ましくて仕方がなかった。男勝りでかっこつけな自分とは正反対の女性らしい美しい人。自分が彼女のような女性だったら、そう思わずにはいられなかった。
「…降ろしてくれ。」
「…え?」
「ここでいい。」
戸惑いながら、彼女は車を路肩にとめる。私はかばんをもって車を降りた。
「ありがとう。乗せてくれて。」
「ここまできたなら、最後まで送りますよ?」
心配性な彼女は優しく私を気遣ってくれた。
「いいんだ。少し歩きたい。」
「でも…、ここから空港までは少し距離が…。」
「1人になりたいんだ。悪いな。」
彼女はそれをきくと、悲しそうな顔をして黙り込んだ。はると私の再会を心から喜んでくれた彼女も、きっと今悲しみにひたっているのだろう。
「そう暗い顔をしないでくれ。これは私の願った幸せなんだ。」
いつものような強がりと今出来る精一杯のぎこちない笑顔をつくる。でも彼女には私の気持ちがすべてバレてしまっているのかもしれない。でもそうだとしても、私は1人になりたかった。
「わかりました。なにかあったらよんでくださいね。」
彼女がゆっくりと去っていく。いつの間にか外は真っ暗でもう日が暮れかけていた。前々からこの再会ではるに大切な人がいたら、海外へ行き幸村グループの海外支店のほうを手伝おうと思っていた。まさか本当にすることになるとは、あまり考えていなかったが。小さく息をはき、国際空港への道を歩き出した。その直後だった。
「かなっ…!!」
突然響いた叫び声に後ろを振り返ると、ここにはいるはずのない人が私をみていた。
「…っ!?は、はる、?!な、なんで!?」
驚きすぎて声が裏返る。
だが、そんなことも気にならないくらい頭の中がはてなマークでいっぱいになった。なんで、どうして、ここにいるわけがないのに。もう二度と、会えないはずなのに、会わないはずなのに。
はるがゆったりと私に笑いかける。
はるの笑顔は5年前と変わらない、太陽のような笑顔だった。
あぁ、まぶしいな…。
やっぱりはるは、私の太陽だよ…。
真っ黒な空にぽつりと浮かぶ孤独な月を太陽は壊れぬように優しく優しく包み込んだ。
溢れ出した涙はもう止めることすらできなかった。
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