お願いされて王太子と婚約しましたが、公爵令嬢と結婚するから側室になれと言われました

如月ぐるぐる

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9話 町を助けなければ!

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 この町も大変ですが、まだ何とかなるでしょう。
 なので朝早くに町を出て次の町へと向かいます。
 
「ああ、この町は前の町と同じような状況なのね」

 前の町よりも小規模ではありますが、宿やエールの価格は同じです。
 町一つ分ではそこまで差は出ないのでしょうか。

「お嬢様、よくご覧ください」

 メイドに言われて注意してみると……!

「一泊素泊まりで銀貨十五枚! 前の町なら朝夕の食事も付いていたわ! それにエールの価格は一緒だけど、よく見るとジョッキが小さいわ!」

 何てことなの、更に物価が上がっています。
 こんなのまともに生活できる範囲を超えています!

「生活は! 市民の生活は大丈夫なの!?」

 この街に到着したのは昼過ぎですが、よく見ると人通りがとても少なく活気がありません。
 こんな状態では町の経済は破綻していてもおかしくないでしょう。

「詳しい事は分かりませんが、餓死者が増えているとだけ」

「……ここの、ここの町は誰の領地?」

「ビッテンガム子爵です」

「今から行って、お会いできるかしら」

「恐らく屋敷におられるでしょうから、可能性はあるかと」

「では向かって」

 この状況を見て見ぬふりは出来ません。
 ハンスに会うのは遅れてしまいますが、何か協力できることは無いでしょうか。

「久しぶり、キレイになったねシオン。ちょっと立て込んでいてね、こんな状態ですまない」

 昔よく遊んでいただきましたが、とてもおおらかで少しふっくらとした方でした。
 ですが今は少しやつれて見えます。
 そして書類の山が机に置かれていますが、ああ、陳情書ですね。

「お久しぶりですビッテンガム子爵。突然の訪問にもかかわらず、お時間をいただき感謝します」

「それで、今日はどうしたんだい?」

「はい、失礼を承知でお伺いします。町の状況なのですが……」

 こんな不躾な質問に、ビッテンガム子爵はしっかりと答えてくれました。
 そして今この町、いいえ、王国全体にまで及ぶ状況を。

「そこまで、そこまで酷い事になっていたのですね」

「ああ、フランツ王太子もこれが最後のチャンスだったんだが、これでは無理だろうね」

「やはり陛下のあの言葉は、そういう意味なのですよね」

「誰もがそう理解している。当の本人は理解していない様だけどね」

 思った以上にストレートな言葉だったと思いますが、どうやら曲解してしまったようですね。
 しかしそうなると国はどうなってしまうのでしょう。
 陛下はまだお若いから、当分は陛下のままね。
 でも跡取りが居ないから、何とか更生してもらうしかないでしょう。

 陛下は子宝に恵まれず、子はフランツ王太子だけ。
 とても素晴らしい国王ですが、世継ぎだけが問題でした。

「ああいえ、今はその事よりも町の事です。私にお手伝いできることはありませんか?」

「ありがとう、助かるよ。色々と教えて欲しい事があるんだ」

 子爵と様々な話をして、何とか町の改善につながる手を考えました。
 一週間が経過し、完全ではないモノのある程度の改善策が見えてきましたが、コレをもう少し上に持って行きたいですね。
 さらに一週間が過ぎ、何とか改善案がまとまりました。
 これがあれば少しは状況が良くなるはずです。

「今はこれが精いっぱいでしょうか」

「ありがとう! これなら何とかなりそうだ」

「いえ、昔お世話になりましたから、少しでもご恩をお返しできたのなら」

「そういえば今更だけど、シオンはどうしてこの町に?」

「私はハンスの領地へ行く途中だったのです」

「ハンスの元に……!! そうか、遂にか! おめでとう、式には呼んでくれ」

「え? いえ結婚する訳ではなく、玉砕してすっぱりと気持ちを切り替えるために……」

「うんうん、昔から仲が良かったからねぇ」

 ビッテンガム子爵、あなたもそちら側でしたか。
 それにしても思わぬところで時間を食ってしまいました。
 しかし見逃せる状況でもありませんし、子爵のお役に立てたのなら良しとしましょう。

「それでは私はハンスの元へ行こうと思います。滞在させていただきありがとうございます」

「いやいや、礼を言うのはこちらだ。ハンスの元へ行くのを足止めした上に、町のために一生懸命考えてくれたんだからね」

「あ、その改善案ですが、他の町で使える部分は教えても構いませんか?」

「むしろ広めてくれ。私の方でもこの改善案をまとめて、他の町に伝えるつもりでいる」

「ふふふ、ありがとうございます。それでは」
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