【完結】婚約破棄された令嬢が冒険者になったら超レア職業:聖女でした!勧誘されまくって困っています

如月ぐるぐる

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6.緊急呼び出し 冒険中断

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「ヤダよ俺! なんで花なんだよ!」

「え~、だってこのお花キレイだもん」

「だからって、せめて薬草にしろってば!」

 確かに場所的には近いので、薬草採集も一緒に受ければいいかもしれませんね。
 しかし、何故花摘みが依頼に? そう思って依頼書を見ると、ああなるほど、本のしおりとして押し花をを沢山作るのですね。

 嫌がるマットを納得させるために、一緒に薬草採集も受け、森の中へと向かいます。
 今までの野犬狩りとは違い、森と言ってもあまり深くない手前の方なので、気分はまるでハイキングです。
 指定された花を摘み、ついでに薬草も摘み、順調に集められていますが……どうもマットの性に合わない様で、さっきから小動物を追いかけて遊んでいます。

「腹減った。そろそろ昼にしようぜー」

 気が付けばお天道様は天辺に来ておりました。
 開けた場所を見つけたので、そちらにシートを敷きます。
 ロビーとケイとわたくしは並んで座り、マットは暴れたりないのか、パンを手にして走っています。

「ねぇねぇ、フランチェスカさんの事、フランさんって呼んでいい?」

「ええ、もちろん構いません。いっそ、さんも必要ありません」

「じゃぁ……フラン?」

「ええ、ケイ」

「ぼ、僕もいい? フラン」

「はい、ロビー」

「なんだよなんだよ! 俺も俺も! な、フラン!」

「マット、座って食べないとお行儀が悪いですよ」

「ふえ~い」

 最近は毎日一緒にいるので、すっかり仲が良くなりました。
 しかし楽しいひと時を遮るように、わたくし達を探す人が現れました。

「はぁ、はぁ、あ、あの! フランチェスカさんはこちらに?」

 息を切らしながら現れた男性は、どうやらわたくしを探しているようです。

「フランチェスカはわたくしです。何か御用でしょうか?」

「今すぐギルドへお戻りください! ギルドマスターがあなたを探しています!」

 ギルドマスター、はて、聞き覚えの無い言葉ですが、それも一般常識なのでしょうか。

「フラン、ギルドマスターっていうのはね、ダラムの冒険者ギルドで一番偉い人だよ」

「その様な御方が、なぜわたくしなどを?」

「あ! まさかギルドマスターは、俺達からフランを取り上げるつもりか!」

「落ち着けマット。一介の冒険者にそんな事するはずないだろう」

 しかし心当たりはあります。
 国を跨いだので安心しておりましたが、デイヴィット王太子がわたくしを指名手配し、手配書がこちらまで回ってきたのかもしれません。

 それならば……3人に迷惑をかける訳にいけませんね。

「かしこまりました。マット、ロビー、ケイ、申し訳ありませんが、わたくしは一足先に戻っております。皆さんはこのまま―――」

「私も行く! 依頼された数は揃ってるし、そんな不安そうな顔したフランを一人で行かせられない!」

「俺もだ! ウチのメンバーに酷い事したらタダじゃおかねぇ!」

「僕も行くよ。大丈夫だよフラン、僕らが守ってあげる」

「皆さん……ありがとうございます」

 わたくし、そんな不安そうな顔をしておりましたか。
 皆さんに心配をさせるとは、わたくしは、もっとしっかりしなくてはいけないのに。



 ギルドに戻ると、男性に付いてギルドハウスの3階、その一部屋に案内されました。

「マスター、フランチェスカさんをお連れしました」

 そう言って扉が開かれると、正面の机には隻眼の男性が椅子に座っていました。
 左手を使って立ち上がり、左手を使ってソファーに座るように促されます。

「突然の呼び出しに応じて頂き、感謝します。私はブルース。して、フランチェスカさんはどなたでしょう」

 4人でソファーに腰かけた所で、ブルースさんが正面に座りました。

「はい、わたくしがフランチェスカです」

 右手を小さく上げて名乗ります。
 するとブルースさんは身を乗り出し、わたくしの顔を真剣な顔で眺めると、一息ついて背もたれによしかかります。

「失礼、この水晶に手をかざしていただけますか?」

 ソファーの横に置いたあった水晶、これは特性を判別する水晶です。
 なぜ? わたくしを呼び出してまでする事なのでしょうか。

 怪訝そうな顔をしている私を見て、ブルースさんが話を続けます。

「受付嬢から聞きました。最初は青で、白が出たかと思ったら様々な色が出てきた、と。その現象に心当たりがあるので、一度確認をしたいのです」

 なるほど、そういう事でしたか。
 それならばわたくしとしても知りたい所です。

「理解しました。それでは」

 一度うなずいてから、両手を水晶にかざします。

「ああ、あまり集中し過ぎないでください。落ち着いて、気楽にお願いします」

 ? 以前は集中するように言われましたが、今回は違うのですね。
 しかし言われたのであれば、その指示に従いましょう。

 両手を水晶にかざし、肩の力を抜いて少しだけ水晶を意識します。

 青い光が現れ、そして白く光る。そして様々な色が浮かんでは消えてを繰り返します。
 以前と同じですわね。
 この良く分からない現象をご存じだそうですが……!? ブルースさんの体が震えています。

「こ……これは間違いない! セイント・アクション・カラーだ!!」

「「「「セイント・アクション・カラー?」」」」
 
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