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5.初めての依頼 四苦八苦

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 新しい仲間と共に、野犬退治へと向かいました。
 狼とは違い大人しめですが、それでも鋭い牙で噛まれたら大怪我をしてしまいます。
 しっかりと役目を果たさなくてはいけません。

「それではわたくしは、後方より魔法攻撃を行わせていただきます」

「ああ、俺とロビーで野犬を倒すからさ、ケイも回復と支援を頼むぜ」

「分かったわ!」

 残念ながら皆さんは馬をお持ちでないので、サンダルフォンは荷馬として使っています。
 日帰りで終わる依頼ですが、念のためにキャンプ道具も持って参りました。
 リズ様曰く『簡単な依頼でも何が起こるか分からん。最初の内は念には念を入れて行動しろ』とおっしゃっていました。

 街近くの平原を進むと、何やら遠くで動くモノが見えます。
 あれが野犬……でしょうか。

「いた! よし走るぞ!」

 マットさんが剣を抜いて走り出しました。私も置いて行かれないように付いて行きましょう!
 
 しかし走れど走れど野犬には追いつけず、体力を消耗しただけでした。
 原っぱに座り込んで休憩ですわね。

「バカマット、野犬を真っ直ぐに追いかけてどうするんだよ! 勝てるわけないだろ!」

「だ、だってよ、依頼の獲物がいるんだぜ? 走るだろ!」

 息切れをしながら喧嘩が始まりました。確かに犬を追いかけても、足の速さで勝てるはずがございません。
 何か足止めする物があればよいのですが、ここは平原、何も見当たりません。

「ねぇどうすんの? このままじゃ依頼失敗しちゃうよ?」

「ぐ……なぁフランチェスカさん、魔法で足止め出来ねーか?」

わたくしも考えておりましたが、あの距離では魔法の射程外です。撃っても当たらないでしょう」

「う~んそっか~」

「じゃあ二手に分かれよう。一匹か二匹を挟み込んで、逃げ道を塞ぎながら動けばどうかな」

「よっしそれだ!」

 再挑戦です。お三方はわたくしよりもお若いのに、体力があって羨ましい限りです。
 いえ、決してわたくしが歳をとっている訳ではございません、ええ。

 一日中走り回り、やっと依頼の数3匹を狩り終わりました。
 もう日が沈み、皆さんヘトヘトです。
 これだけ苦労したのです、きっと報酬がいいはずですわね。

「お疲れ様です! 野犬3匹ですね、銀貨6枚です。はい、どうぞ」

 木製の小さなトレイに入れて渡された給金はキレイに並べられ、重なる事のない枚数であることが虚しい気持ちを呼び起こします。
 一般常識をマスターした今ならば分かります。やっと一人分の宿代が払える金額です。

 最低3匹からなので、熟練者ならば遥に多い数を狩れるのでしょう。

「マジか……こんなに疲れたのに」

「明日はもっと考えて動かないとね」

「疲れたよぅ、お腹空いたよぅ」

 3人もわたくし同じ宿の様なので、食事を取って明日も挑戦する事となりました。

 2日目、3匹。

 3日目、4匹。

 あまりかんばしくありません。
 このままでは冒険者とし名を上げる事は難しいでしょう。
 何かいい方法は無いでしょうか……。

 4日目。
「皆さん、今日は作戦を考えてまいりましたので、一度試して頂けないでしょうか」

「作戦? 正面からダーって行って、トーって倒すんじゃないのか?」

「だからそれは何度も失敗してるだろ?」

「作戦があるならやってみたいな」

「ありがとうございます。それでは……」

 今回は草原ではなく森の中で野犬を狩ります。
 そもそも草原で4足動物と足で勝負するのが無理なのです。
 木の多い森ならば、犬の足を少しでも鈍らせることが出来ますので、かなり有効です。

 目の前を走る犬は6匹。
 その犬を2手に分かれて追い立てます。
 その際は大きな音を立てながらやると、更に効き目が上がるようです。

「ロビー! もう少し前に出ろ!」

「うるさい! お前が少し下がれ!」

 こんな時でも言い争いが止まりません。
 しかし騒音を立てるという意味では間違ってはおりませんね。

 そして言い争いが功を奏したのか、6匹ともつるに足を取られて宙に浮いています。

「わーやったぁ! フランチェスカさんの罠、大成功だね!」

「お、お~、こんな簡単に捕まえられるのかよ」

「罠は有効……か」

 木のツルを使い、輪っかに足を入れたら吊り上げられるという、初歩の罠です。
 カモフラージュしてありますが、少しでも気取られないように音を立てて誤魔化しました。

「上手くいってホッとしております。この分なら、まだ数回は使えそうですわね」

「よーっし! どんどんわなるぞ!」

 4日目は順調に行き、最終的に11匹もの野犬を捕える事に成功しました。
 給金も小金貨2枚と銀貨2枚。これならば4人分の宿代がでます。

「カンパーイ!」

 この日は皆さんと楽しく夕食を頂けました。
 わたくしも大変うれしく思います。
 初めて黒字になるというのは、気分の良いものですね。

 5日目からは盛んに意見を言い合い、罠の数、配置、追い込み方など色々な改良を加え、19匹も捕らえる事が出来ました。

 8日目が終わり、問題が発生しました。

「俺、全然剣を使ってねぇ」

「犬を仕留めるのに使ってるだろ?」

「バッカそうじゃねーよ。剣で戦いたいんだよ俺は」

「え~、でも今日なんて28匹だよ? 順調じゃない?」

「そうなんだけどな、なんてーか、あきた」

 9日目。
 新しい依頼を受けるべく、ギルドの掲示板を見ています。

「わぁ、コレいいかも」

 ケイが手に取った依頼書は……お花摘みでした。
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