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5話

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 昔の夢を見たわ。
 あれは私が小さな頃、顔のあざが嫌でフードを深くかぶって街を歩いていた時の事だ。
 前髪を伸ばして右半分を隠していたわね。

 お店に入る勇気は無かったから、お店の外から中を見てるだけだったけど、それでも知らない物ばかりでとても楽しかった。
 でもそんな時、私のすぐ後ろで大きな声が聞えた。

「あれ! あれが欲しい!」

 私よりも少し小さな男の子が、豪華な馬車から身を乗り出している。
 なにが欲しいんだろう、私は男の子が指差す先を見た。
 真っ黒い大きな鎧と、少し不気味な兜だった。

 ええ……男の子の趣味って分からない。
 私だったら隣にある、羽根がいっぱいついたきれいな方がいいな。

「ああ! 坊っちゃん!!!」

 女の人の悲鳴が聞こえた。
 慌てて振り向くと、男の子は身を乗り出しすぎて馬車から落ちようとしていた。

 あ、あぶない!

 とっさに体が動いた。
 男の子が落ちる下に走って、何とか私がクッションに……ゴチン!

「い、いたい……」

「あははははは! 落っこちちゃった!」

 男の子の頭と私の頭がぶつかった。
 何がおかしいの? 男の子って本当に分からない。

「あ! お前……カッコイイな!」

 男の子が私に顔を近づけてマジマジと見ている。
 え? え? なに? あ!
 気が付くとフードはめくれ、髪が横にずれてアザが丸見えになっていた。

 み、見られちゃった……気持ち悪がられて……?

「お前、女なのにカッコイイな!」

 カッコイイよりも、カワイイがいいです。

「坊っちゃん!」

 女の人が男の子を抱き上げて、慌てて馬車に戻っていく。
 馬車は急いでどこかに行ったけど、馬に乗った騎士さんがお礼を言ってくれた。
 騎士さんは……カッコイイな。




「久しぶりに昔の夢を見たわ」

「アシュリーってば、昔はおてんばだったもんね~」

 学園での昼食時間。
 私はナンシーと一緒に芝生に座ってお弁当を食べていた。
 
 私が婚約破棄をされて数日がたって、そろそろ噂は一周して落ち着き始めていた。
 まだよそよそしい人も多いけどね。

「それにしても、最近はアレンとローランはどうしたのかしら」

「ホントホント、用事があるからって、全然おしゃべりしなくなったよね~」

 学園では大体4人で過ごしていたけど、最近はナンシーと2人きりだ。
 あの2人も、そろそろ彼女でもできたのかしら。

 でもその原因は、もっと身近な事だった。

 ある日の朝、私は学園でナンシーとおしゃべりしていると、アレンとローランが現れた。

「あらおはよう、アレン、ローラン。今日はお昼はご一緒できそう?」

「残念だぜ、アシュリー」

「君がそんな女性だとは思っていなかったよ」

 え? え? なになに? なんの事?
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