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15話 バート視点
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最近はよくアシュリーと遊ぶようになった。
やっとまともに顔を見れるようになったけど、不意に見せる笑顔を見ると照れ隠しでからかってしまう。
子供か俺は。
俺は昔、とにかくカッコいいものが好きだった。
真っ黒い騎士や厳ついもの、妙にゴテゴテした物など、中々他の者には理解されなかったが。
……馬車から落ちた事もあった。
確か真っ黒い鎧と禍々しい兜を見てテンションが上がり、身を乗り出して落ちてしまったのだ。
その時、女の子が身を挺して助けてくれた。
頭をぶつけて痛かったけど、それ以上にその子の顔に釘付けになった。
顔にカッコイイあざがあったのだ。
当時の俺はアザには隠された能力があり、いざという時に『目覚めよ、俺の右目!!!』とか妄想していたのを覚えている。
忘れたい過去だ。
きっと女の子はアザを嫌がっていたはずだ。
だから髪やフードで隠していたはずなのに、俺はズケズケとカッコイイなどと言ってしまった。
あの女の子はとても可愛かった……なのに失礼な事を言ってしまったうえ、助けてもらった礼すら言えていない。
あの事件以来、俺は街へは出してもらえなくなり、城の中で遊ぶしかなかった。
何とか城を出て女の子を探したかったが、騎士やメイドの目が厳し、とても子供の俺には無理だったな。
一応騎士が礼を言ったらしいが、直接礼を言いたかったんだ。
……いや違うな、あの子に会いたかったんだ。
俺が1人で城から出れるようになったのは数年前、兄上の王位継承が確定し、俺の必要性が薄まった時だ。
だから急いであの時の武具屋に行った。
居るはずがないと分かっていても、ひょっとしたら近所に住んでるかもしれない。
あの身なりなら平民のはずだから、そうそう引っ越しもしないはずだ。
武具屋は……無くなっていた。
10年ほども経っているんだから、無くなっていても不思議はない。
でも思い出が一つなくなった感じがして悲しかった。
それから毎日街に出ていたが、流石に王子が頻繁に街に出るのはどうなのか、ととがめられてしまう。
それもそうだ、継承権がほぼ無くなったと言っても王族、誘拐でもされたら大変だ。
でも俺は諦められなかった。
だから国のためになるからと条件を出した。
・住民の小さな声を拾い上げて、国民の不満を解消させる。
・王族を身近に感じてもらう事で、王族へ、ひいては国への忠誠心を上げる。
・文武に精通し、自分の身は自分で守り、国民にアドバイスをする事で税収を上げる。
今考えればかなり無茶苦茶だ。
でも俺は何をしてでもあの子に会いたかったんだ。
きっと幼い頃の恋心をずっと引きずっていたんだろう。
でも俺の思いは上っ面な物だった。
学園に通い始めると、俺は1人の女性に夢中になってしまった。
その名はアシュリー。
確かにアシュリーの雰囲気はあの子に似ている。
でもアザがない。
それに貴族ならば、あんな場所であんな姿で歩いているはずがない。
でもアシュリーから目が離せなかった。
だからと言って普通に話をしようとしても、緊張してからかってしまう。
子供か俺は。
いっそアシュリーがあの子だったらいいのに。
そんな事を願いもした。
しかしアシュリーには許嫁がいるそうだ。
マイヤー公爵家の息子らしく、同じ学園に通っているとか。
そうか、それもそうだ、アシュリーの様な女性なら婚約者なんていても当たり前だ。
ああよかった、これで諦められる。
俺はあの子を探しを続けた。
全く手掛かりが無かったが、住民と話をするのは楽しいし、子供達と遊ぶのも好きだ。
そんなある日、事件が起こった。
アシュリーが婚約破棄されたのだ。
やっとまともに顔を見れるようになったけど、不意に見せる笑顔を見ると照れ隠しでからかってしまう。
子供か俺は。
俺は昔、とにかくカッコいいものが好きだった。
真っ黒い騎士や厳ついもの、妙にゴテゴテした物など、中々他の者には理解されなかったが。
……馬車から落ちた事もあった。
確か真っ黒い鎧と禍々しい兜を見てテンションが上がり、身を乗り出して落ちてしまったのだ。
その時、女の子が身を挺して助けてくれた。
頭をぶつけて痛かったけど、それ以上にその子の顔に釘付けになった。
顔にカッコイイあざがあったのだ。
当時の俺はアザには隠された能力があり、いざという時に『目覚めよ、俺の右目!!!』とか妄想していたのを覚えている。
忘れたい過去だ。
きっと女の子はアザを嫌がっていたはずだ。
だから髪やフードで隠していたはずなのに、俺はズケズケとカッコイイなどと言ってしまった。
あの女の子はとても可愛かった……なのに失礼な事を言ってしまったうえ、助けてもらった礼すら言えていない。
あの事件以来、俺は街へは出してもらえなくなり、城の中で遊ぶしかなかった。
何とか城を出て女の子を探したかったが、騎士やメイドの目が厳し、とても子供の俺には無理だったな。
一応騎士が礼を言ったらしいが、直接礼を言いたかったんだ。
……いや違うな、あの子に会いたかったんだ。
俺が1人で城から出れるようになったのは数年前、兄上の王位継承が確定し、俺の必要性が薄まった時だ。
だから急いであの時の武具屋に行った。
居るはずがないと分かっていても、ひょっとしたら近所に住んでるかもしれない。
あの身なりなら平民のはずだから、そうそう引っ越しもしないはずだ。
武具屋は……無くなっていた。
10年ほども経っているんだから、無くなっていても不思議はない。
でも思い出が一つなくなった感じがして悲しかった。
それから毎日街に出ていたが、流石に王子が頻繁に街に出るのはどうなのか、ととがめられてしまう。
それもそうだ、継承権がほぼ無くなったと言っても王族、誘拐でもされたら大変だ。
でも俺は諦められなかった。
だから国のためになるからと条件を出した。
・住民の小さな声を拾い上げて、国民の不満を解消させる。
・王族を身近に感じてもらう事で、王族へ、ひいては国への忠誠心を上げる。
・文武に精通し、自分の身は自分で守り、国民にアドバイスをする事で税収を上げる。
今考えればかなり無茶苦茶だ。
でも俺は何をしてでもあの子に会いたかったんだ。
きっと幼い頃の恋心をずっと引きずっていたんだろう。
でも俺の思いは上っ面な物だった。
学園に通い始めると、俺は1人の女性に夢中になってしまった。
その名はアシュリー。
確かにアシュリーの雰囲気はあの子に似ている。
でもアザがない。
それに貴族ならば、あんな場所であんな姿で歩いているはずがない。
でもアシュリーから目が離せなかった。
だからと言って普通に話をしようとしても、緊張してからかってしまう。
子供か俺は。
いっそアシュリーがあの子だったらいいのに。
そんな事を願いもした。
しかしアシュリーには許嫁がいるそうだ。
マイヤー公爵家の息子らしく、同じ学園に通っているとか。
そうか、それもそうだ、アシュリーの様な女性なら婚約者なんていても当たり前だ。
ああよかった、これで諦められる。
俺はあの子を探しを続けた。
全く手掛かりが無かったが、住民と話をするのは楽しいし、子供達と遊ぶのも好きだ。
そんなある日、事件が起こった。
アシュリーが婚約破棄されたのだ。
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