【完結】小国の王太子に捨てられたけど、大国の王太子に溺愛されています。え?私って聖女なの?

如月ぐるぐる

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2話

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「まってー! その馬車乗りまーす!」

 朝一番の乗合馬車に乗り込み、やっと一息ついた。
 ふぅ疲れた。昨晩はお情けで家で寝れたけど、今日からは宿無し。手荷物も大きめのカバン1つ。
 さっさとこんな国とはオサラバしたいけど、小さい国とは言っても何日もかかる。
 ま、なんとかなるでしょ!

 馬車の中ではハロルド様の婚約破棄、そして新しい婚約者としてマーテリー嬢が選ばれた話でもちきりだ。
 フンッだ。
 馬車が最初の街に着いた。
 ここでしばらく休憩をして、次の街で1泊するみたい。
 お腹が空いたから何か買ってこよう。

 1人で買い物なんて久しぶりだな。昨日までは必ず護衛がいたし、城にいる時間が多かったから1人なんて新鮮。
 さーて、何を……ん? 元気な子供達が走り回ってる。あ、転んだ。

 あ~あ、勢いよく転んだから膝から血が出てる。
 他の子達は、転んで泣いてる子をなだめようとしてるけど、痛いのか泣き止まない。
 バイキンが入ったら大変。

「僕、痛い? 大丈夫だよ、お姉ちゃんがおまじないを掛けてあげるから」

「おねえちゃん……ぐす……いたいよぅ」

「待っててね」

 私はかがんで膝に手をかざし、簡単な祈りをする。
 スーっと血が止まり、すりむいた膝は何もなかったようにきれいになった。

「おねえちゃんスゴイ! ありがとー!」

「気をつけて遊んでねー」

「うん!」

 走っていく子供たちに手を振ってるけど、なんだかまた転びそう。
 この力は小さなころから使えるけど、小さな傷やカゼくらいしか治せない微々たるもの。
 だから誰にもいってない。

「失礼。いまの子に施した術は一体……?」

 後ろから声をかけられて、ビックリして振り向くと、そこにはスラリと背の高い、短いマントとフードをかぶった人が居た。
 だ、誰だろう。

「ああ申し訳ない。私は旅をしている者ですが、今の様な術は初めて見たもので」

 フードを外すと優しい目をした男の人だった。わぁ、カッコいい人だ。

「えっと今のは、おまじないみたいなモノで、大した事じゃないんです」

「大した事です。今の力は素晴らしいではありませんか」

 うわ~、イケメンに褒められると嬉しいけど、今はそういう気分じゃないんです!
 何とかこの場を切り抜けよう。

「出来ればもう一度見せていただけませんか?」

「あ、あー! もう馬車の時間だ! それでは失礼しますねー!」

 問答無用で走り去ってしまおう!
 公爵令嬢の時には考えられなかったスピードで走り去っていった。

「あー良かった、間に合った」

 時間はギリギリだったけど、何とか食事もとれたし、後は次の街まで一眠りして……あれ?

「お隣、失礼します」

 私の隣に背の高い人が座る。
 はて、このフードをかぶった人はどこかで……!? さっき声をかけてきた人だ!

「おや? あなたは先ほどの。偶然ですね、またお会いできるとは」

 それ、絶対にウソですよね?
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