【完結】小国の王太子に捨てられたけど、大国の王太子に溺愛されています。え?私って聖女なの?

如月ぐるぐる

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3話

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「偶然ですね、同じ馬車に乗っているとは。失礼、私はセルジュ。騎士ですが、武者修行のため1人で旅をしているのです」

 隣で素敵な笑顔向けてくれてるけど、怪しいったらない。
 でも私なんかにストーカーしても意味無いし……公爵令嬢じゃなくなったんだもん。

「本当に偶然ですね、私はアトリアと申します。訳あって1人旅をしています」

 自己紹介されたから、一応礼儀として名乗っておいた。
 次の街へ着けばさよならだし、しばらくは我慢しよう。
 
 と思っていたら、この男性、セルジュさんだっけ、馬車酔いをしてしまったようだ。

「うえっぷ……失礼……馬車は……慣れてなくて……おえ」

 仕方なく背中をさすっているけど、どうしよう、隣でキラキラを出されても困るし……仕方ないか。

「セルジュさん、少しじっとしていてください」

 セルジュさんの前に立って、ひたいに手をかざす。
 そして静かに祈りを捧げる。
 馬車酔いだったらすぐだと思う。10秒もかからず祈りを終えると、セルジュさんは不思議そうな顔をしてた。

「お、おお! 酔いが無くなりました! ありがとう、ありがとうアトリアさん!」

 ブンブンと握手をされたから、身長差もあって凄く体が揺れた。
 こ、今度はこっちが酔う!

「あ、失礼、嬉しくてつい」

 気遣いは出来る人みたいだけど、少し元気が有り余ってる人なのかな?
 それも次の街まで。気にしない気にしない。
 
 外はすっかり暗くなり、馬車は定刻より少し遅れて街に到着した。
 んん~……はぁ、流石に疲れた。背伸びをしたらゴキゴキいってたよ。
 さあ、泊まる宿を探しましょう。

 あ、ここのお店は良い匂いがする、今夜はここに泊まろう。
 金銭感覚がないもんだから、美味しそうな宿に泊まる事にした。
 だってそれしか分かんないんだもん!

 と、宿の横にある細い道、そこで何かが動くのが見えた。
 なんだろう、野良犬? 家の周りでは見た事ないけど、やっぱり街には野良犬がいるもんよね。
 あ……違った。小さな子供が2人、震えながらしゃがみ込んでいた。
 身なりを見ると親がいるとは思えず、居たとしても育児放棄されているのが分かる。

 私は慌ててその場を後にした。

「大丈夫? お父さんとお母さんは?」

 戻ってきた私は、2人にそう訊ねたけど、首を横に振るだけだ。
 やっぱりいないのかな。この街には孤児院がないの? この時間だと衛兵さんは詰め所かな。

「はいこれ、食べて」

 手に持ったパンとミルクを渡し、2人の体をよく見る。
 軽い怪我が数か所にある。よし。

「少しだけ動かないでね」

 2人同時に手をかざし、静かに祈りを捧げると、震えていた2人はキョトンとして、顔を見合わせる。
 そして一心不乱にパンを食べ始めた。
 これでしばらくは大丈夫かな。

 さて! 今度は私のお腹を満足させないとね!

 

 
 次の日の朝、初めての一人での外泊はチョット寂しかったけど、ベッドもチョット痛かったけど、それでも無事に迎えられた。
 よし! この先も何とかなる!

 意気揚々と宿をでると、なんと宿の前にはあの男性、セルジュさんが立っていた。

「アトリアさんお願いです、私と一緒に来てください!」

 頭を下げて手を差し出してる。
 えっと、これってどういう意味? まるで結婚してくださいって言ってるみたいに聞こえる。
 いやいや早まるな私、祖国で酷い振られ方をしたばっかりだぞ? ここは逃げの一手だ!

「えっと、申し訳ありません。私は当分は男性とのお付き合いをするつもりは無いので」

 うん、これならセルジュさんも傷つかないし、私も悪くは思われないはず! 良い答えだ私!

「え? どういう意味……あ、説明不足でした。アトリアさんの治癒の力を貸して欲しいのです!」

 あ~そういう意味か~うんうん、そうだよね、いきなりお付き合いなんて無いよね。
 恥ずかしい! 
 きっと誰かが怪我でもしたんだろう。

「そ、そういう事でしたら喜んで。それでどちらへ?」

「はい、メジェンヌ国です」

 あれ?
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