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15話

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「ア、アルバート神官長、派兵計画って一体……?」

「読んで字のごとく、ヴァルプール国を攻めるのです」

「どうして!? どうしてメジェンヌがヴァルプールを攻めるんですか!」

「落ち着いてください聖女様。少し説明をさせて下さい」

 テーブルの向かいに座り、神官長が説明を始めた。

「まず一つ。ヴァルプールにはすでに他国の軍が派兵されており、戦争の回避は不可能です」

「そんな……だからってメジェンヌも派兵したら、ヴァルプールが滅茶苦茶になってしまいます」

「そうならない為の派兵です」

「え?」

「メジェンヌが派兵したとなれば、他国は警戒し、進軍速度が遅くなります。あの小国に対して6万の兵を向かわせるのですから、正面からぶつかるのは避けるでしょう」

「では、ヴァルプールを攻めるのではなく、牽制のために向かわせるんですか?」

「いえ、攻めます」

「ですから!」

「聖女様、あの国はもう無理なのです。各国からも見放され、戦争が無くても、近いうちに政変クーデターが起こるでしょう。いえ、大衆による革命レボリューションの可能性もあります」

「そこまで……そこまで落ちてしまったの?」

「現在の王族に対する不満は限界、貴族はすでに王族を見放し、大衆は王侯貴族全てに絶望しています」

 そんなに酷い状態なんて……確かに自業自得だけど、それに一般大衆が巻き込まれるのは間違ってる。
 
「じゃあ何とか政変や革命を阻止して……」

「すでに申し上げましたが、限界なのです。聖女様が何かをしても、怒りの矛先が聖女様に向くだけです。そのような事は断じて許されません」

 う……確かに今の私に何かあれば、みんなに迷惑をかけてしまう。
 私を重宝してくれるこの国に、恩を仇で帰すようなことは出来ない。

「でも、攻めるなんて……」

「ご安心を。どうせ戦争にはなりません」

 ……? 兵を他国に向かわせるのに、どうして戦争にならないの?

「何か手を打ってあるんですか?」

「いえ、兵を向かわせるだけでいいのです。ヴァルプール国には、それに対抗する手段など持ち合わせておりません。数少ない敵兵に一言いえば終わります。『抵抗しなければメジェンヌ国の兵として取り立てる』と」

「あ!」

 そうか、内政がボロボロで命令系統もまとまらない、そんな状態じゃあ兵の士気は上がらないし戦う意味も見いだせない。
 派兵するだけで、勝敗が決するんだ。

「ご理解いただけましたか?」

「分かりました、それでお願いします。でも、私のために戦争をさせてしまって、皆さんに申し訳ない気持ちでいっぱいです」

「それには及びません。実はどの国もヴァルプールが面倒だったのです。どこに付く訳でもないのに、沢山の国に囲まれているために中継地点として経済が回る。本音では面白くなかったのです」
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