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16話

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 ヴァルプールへの派兵は簡単に決まったらしく、後は簡単な準備が終われば良いだけ見たい。
 なんでこんなに早いのかと思ったけど、常に他国に攻め込む・攻め込まれる事を想定して軍備を整えている……らしい。
 そ、そんなものなのかな?

「アトリア、今回お前は動くな」

「どうして? セルジュ」

 出撃の準備を整えていると聞いて、なにか手助けが出来ないかと見に来ていた。
 なのに、セルジュはそれさえもするなという。

「今回の件は軍部による決定だ。聖女がうろつくと、お前がヴァルプールを滅ぼしたがっていると思われてしまう」

「え? なんで私がヴァルプールを滅ぼしたいなんて話になるの?」

「ヴァルプールはお前の恨みを買っている。あの時の発言と今回の軍事行動は、あまりにも関係性が強く映ってしまう。そう、まるで聖女が戦争を望んでいるように、な」

 そっか、ハロルド王太子・マーテリー王太子妃の結婚式の時の発言、アレと直結して考えられても不思議がない程のインパクトがあったと思う。
 聖女としては……動かない方が良いみたい。

「でも、兵士や騎士達の加護を強化したり、祝福するのは構わないよね?」

「それは思う存分やってくれ。むしろしないと怪しすぎる」

 よかった。争いにはならないってアルバート神官長が言ってたけど、それでも万が一って事があるし、それで兵達が安心できるならその方が良い。


「ところでアトリア、アルのやつ張り切っていたが、何か言ったのか?」

「ううん。あ、でもヴァルプールの民を救いたいって言ったかな」

「それでか。あの妙な気迫は」
(おのれアル、俺を出し抜こうとしてやがるな)

「どうしたの? 独り言?」

「何でもない。今回お前は何もできないが、俺は全軍の指揮を取る。だから無事にヴァルプールを支配したら、俺とデートしてくれ」

「デート? ん~、最近は忙しかったから、ゆっくりしたいんだけど……」

「決まりだ。ではノンビリ出来る所でデートだ」

「せ、セルジュさん?」

「はーっはっはー、楽しみに待っていろ! 最高にノンビリ出来る場所に連れて行ってやるぞ!」

 ノンビリする場所を選ぶのに張り切ってる。
 相変わらず面白い人だな。





 数日後には軍が出発し、ヴァルプールにメジェンヌ軍が足を踏み入れた。
 軍は順調に進軍たらしいけど、一つだけ問題が発生したらしい。
 他国の軍が退かないのだ。
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