【完結】小国の王太子に捨てられたけど、大国の王太子に溺愛されています。え?私って聖女なの?

如月ぐるぐる

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56話

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 視点変更:アトリア

「あ、あれ? 私……あ、ああっ!!」

 私……私はなんて事を!
 この感覚は知っている。初めてだけど知っている。
 ツバルアンナの薬を飲まされた時の症状だ!

「いつ? 一体いつ飲まされたの!?」

「やっと元に戻ったか。ニガイ紅茶を飲んだのは、ハロルド王太子と2人で話していた時だろう。お前の様子もその時から変わってしまったからな」

「セルジュ……ごめんなさい。私……私、酷いこと言っちゃって……」

 顔が青ざめて行くのが自分でもわかる。
 そして自分のしてしまった事に、目の前が暗くなり、ベッドに座り込んだ。

「聖女様、落ち着いてください。解毒剤のお陰で戻ったのですから、もう気にする事はありません」

 アルバート神官長が隣に座り、肩に手を当ててくれた。

「でも私は聖女。聖女はみんなを守らなきゃいけないのに、よりによってツバルアンナの薬で操られるなんて」

「アトリア聖女様は、聖女になられて半年ほどしか経っておりません。聖女の自覚を持て、というのも無理な話」

 流れ出た涙を、片膝をついたロナウド副団長が指でぬぐってくれた。

「私はまた、みんなを巻き込んでしまいました。やっと終わったと思ったツバルアンナの薬騒動に、最悪の形で……!」

「そう思うのなら腹心を持て。聖女の務めは多岐にわたり、ツバルアンナでは無いにせよ、様々な薬を使った事件は起きている。信頼できる仲間を、部下を持て」

 腹心……信頼できる仲間がいれば、私の不用意な行動を、たしなめてくれるかもしれない。
 分からない事でも、アドバイスをくれるかもしれない。
 危険な目にあったら、助けてくれるかもしれない。

 ……あれ? それって。

「みんなの事? セルジュは私に注意してくれるし、アルバート神官長はアドバイスしてくれるし、ロナウド副団長は危険から守ってくれる」

 3人が目を大きく開いたかと思うと、顔を合わせて笑ってる。
 えっと、何か変な事言ったかな? 
 あ、仲間ならまだしも、部下ってダメよね。王太子と神官長と騎士団副団長だもん。

「ごめんなさい、部下なんて失礼よね。私の方が部下みたいなのに」

「いえ聖女様、聖女とはある意味国王よりも上なのです。だから王太子だろうが神官長だろうが、まして騎士団などは間違いなく部下ですよ」

「え? そ、そうなの?」

「父上も普段から聖女″様”と言っているだろう?」

「私はすでに、アトリア聖女様に身を捧げております」

「えと、じゃあ笑ってたのは、私が勘違いしていたから?」

「「「さあ?」」」

「なんで? 教えてよー」
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