皇海翔

文字の大きさ
上 下
1 / 3

2

しおりを挟む
   本郷図書館のカウンターへいき
「CDで星をテーマにしたものはありますか?」と司書に訊くと、彼女はパソコンを操作して
「これなんかいかがでしょう」と言ってディスプレイを見せてくれた。そこには、
グスターヴ・ホルスト『惑星』とあった。コンテンツは
1: 火星 戦争をもたらす者
2: 金星 平和をもたらす者
3: 水星 翼のある使者
4: 木星 快楽をもたらす者
5: 土星 老いをもたらす者
6: 天王星 魔術師
7: 海王星 神秘主義者
 解説には「ホルストが作曲。時に傾倒していたという,〈占星術〉、というより天体の動きによって導かれる人間の精神の動きと人間の内面のつながりを通して感じられる宇宙と人間の心の交流といえるような世界を、音楽を通して表現したというところにある。それだけに、ある種難解な部分、内側に隠された〈何か〉をホルストの音楽は持っている」とある。私はさっそく聞いてみることにした。
 第一楽章では軽快なテンポにのって威風堂々と存在を際立たせる惑星の出現がよく表れている。火星は戦争をもたらす者だ。惑星の立ち位置が明快な音階で表現されている。
 静かな曲調のあと誰でも一度は耳にしたことがあるようななじみ深い旋律が流れ出した。なるほど惑星というのはいかにもこうした神秘的なものであるな、という感じが伝わってくる。木星の快楽をもたらす者だ。女性コーラスが入るとやはり宇宙空間に漂う孤立感がひときわ浮かび上がってくる。モーツァルトもそうだがジュピターが主題の旋律がどうして我々の印象としてよく刻まれるのか。きっとこの7主題のテーマの楽曲中、最もよく惑星を表しているのがこのメロディなのだろう。このメロディを聴くと「生きていてよかった・・・」としみじみ思う。ほかにこれほど如実に惑星を表現したアートはない。
 後日、クラシックの名曲集を借りると、思った通り「木星」が収録されていた。

 日本経済新聞に、
「冬に星がよく見えるのはなぜ?」
「チリが小さく、空が澄んでいるからだよ」という記事があった。
 星の色は表面の温度によって変わる。セ氏一万度以上だと青白く輝き、4000度以下だとオレンジや赤に見える。
 光はチリと衝突すると、吸収されたり散乱されたりして進めなくなる。湿度が高くてチリが大きいと星の光がチリにぶつかりやすくなるので、地上にいる私たちに届きにくい。逆に空気が乾燥していると、空気中のちりが小さいので星の光がよく見える。
 満月の日には月明かりで星が見えづらいが、こうした自然現象とは別に、とくに都市部における街灯りやビルの照明、投光器などのせいで夜空が明るくなり、人間の生活リズムや動植物に影響を与えたり、天文観測を阻害することがある。これを「光害(ひかりがい)」と呼ぶ。
 光害のない、美しい星の見える土地に住んでみたい。
 新聞の最後の紙面に「私の履歴書」というコラムがあり、今は登山家今井通子が担当しているので毎日読んでいる。

 「国立天文台三鷹 オンライン観望会」
 50センチ公開望遠鏡をトラペジウムヘ。解説員が説明を始めた。
「木星のガリレオ衛星が見えていて、左からガニメデ、木星、イオ、エウロパ、カリストです。白雲があるので木星に雲がかかっています。おそらく、画面を横切っていく光の点は人工衛星です。木星がゆらゆらうごめいているのは大気の影響です。でも、この見えたり見えなかったりというのがリアル感があって僕は好きです。では最後にきれいなトラペジゥムをもう一度見てみましょう」  

 国立天文台ホームページ「東京の星空・カレンダー・惑星(2020年8月)」
 暗くなって間もない空を、南北に淡い雲のような天の川が横切っています。こと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブが作る「夏の大三角」が頭の真上付近に見え、夏本番を感じさせます。ペルセウス座の流星群は、12日前後に最も多くの流星を見せてくれるでしょう。下弦前後の月がずっと夜空にあり、暗い流星までは見ることができませんが、月がそれほど明るくないため、まずまずの数の流星を見ることができそうです。

 「すべてを忘れて宇宙の大きさを体感する旅に出ましょう」(ゆうらんツアー)
 NASA太陽観測衛星SDOによる撮影
 水星では昼88日間、夜88日間ある。天王星は昼42年間、夜42年間続く。火星は酸化鉄(サビ)の影響で赤く見える。太陽から木星までは飛行機で99年かかる。太陽系は天の川銀河を回っているが一周するのに2億5万年かかる。
 大マゼランからは16万年前の地球が見える。大マゼラン人は地球上のアウストラロピテクスを見ていることになる。

 「地球そして生命の誕生と進化」
 45億6000万年前に原始地球は誕生した。生命の起源は間欠泉の地下で始まった。生命構成単位は41億年前、原始生命が誕生した。生命とはたゆみない電子の流れである。
 人類につながる霊長類の誕生は、コシドワナ大陸のリフト帯で起こった。
 人と他の霊長類を分けたのは、HARと呼ばれるDNAの中の遺伝子領域だ。これによって人は脳を巨大化させて言語能力を手に入れ、思考・意識・記憶・創造性などを会得していった。
 約20万年前に脱アフリ成功したした成功した人類を『ミトコンドリアイブ』と呼ぶ。
 人類は2050年の100億人をピークに、2100年までに50億人にまで減少すると予測されている。
 4億年後、アジアを中心にすべての大陸が集まり超大陸アメイジアが形成される。地球は現在の金星のように表面温度が500°Cに達するようになる。
 45億年後、我々のいる天の川銀河とアンドロメダ銀河が衝突。80億年後、地球は消失する。しかし我々は形を変えてほかの銀河に進出しているだろう。

 イーロンマスク氏は「出生率が死亡率を越えない限り、日本はいづれ消滅するだろう。それは世界にとって手痛い損失となる」と言っている。

 文教ふるさと歴史館の令和5年度収蔵品展「ぶんきょうの空模様 はれ あめ くもり」に来た。
展示場の入り口に説明版がある。
    晴嵐/晴嵐とは、晴れた日の霞や晴れた日に吹く山風などを表す言葉です
    太陽/「日の出の勢い」という言葉もあるように、太陽にはめでたいイメージがあり、画像「袱紗(ふくさ)
                    や「掛け紙」などでも使われています。
 私は以下の画が印象に残った。
 「湯島天神」高橋松亭/画、「袱紗」、「神田川夕景」小林清親/画、「春雨」川瀬巴水/画、「関口の月」高橋松  
亭/画
 今の味気ない神田川の風景を思い浮かべて、「昔の人はこういう美しい風景の中で暮らしていたんだな」と、「神田川夕景」を見て思う。
 目にも鮮やかな絵画を鑑賞し私の身内にもエネルギーがわいてきた。       

   警察から電話があった。出ると、
「私がどうして電話したのかわかりますか?」と言う。私は身に覚えがないので
「さあ?」と言った。すると相手は、
「去年の九月に白山上のレストランで無銭飲食したでしょう」と言う。
「ああ――」思い出した。レストランで食事をした後レジへ行き、会計をしようと思って店員呼び出しボタンを押したのだが誰も出てこない。二度押し、待っていたが15分待っていても誰もレジに出てこない。料理は軽快なメロディを鳴らすロボットが給仕していた。会計をすることができないので仕方なく帰宅したのだ。
 警察からの電話のあとすぐにレストランに行き、店長を呼んでもらって未払い分の代金を支払い謝罪した。ただしその時、
「呼び出しボタンを押して待ってたんですが、誰も出てこなかったんですよ。今もそうでした、レジを常時扱う店員を一人置いておいた方がいいんじゃないですか?」と私は言った。
 この件はこれで済んだと思っているとまた警察から電話があり、
「被害届が出ているので25日に駒込警察に来るように」と言われた。 
 警察署に出向くこと(刑事は出頭と言った)は憂鬱だったが、その憂さを晴らすため「贖罪に行くのだ」「罪の浄化に行くのだ」と思うようにし、銭湯に行くのと同様、「洗礼を受けに行くのだ」と考え、カレンダーの刑事が指定した日付に「洗礼日」と記した。昨年退職し連日何をしても自由な私は、時折何をしたらいいのかわからなくなる。こうした呼び出し、規制は私には新規でかえって楽しみだった。
 指定日に警察に行くと刑事課に通された。対応する刑事は私の家とレストランはどのくらい離れているか、店へ来て一番初めにしたことは何か、どうやって料理を注文したかなどをぽつぽつと尋ねた。ぽつぽつ、というのは私が一つ答えると刑事はパソコンに何事かを入力し、答えるたびにパチパチキーを叩いているのだが、それが5分、10分と続く。質問がなくなるとまた10分以上刑事はキーを叩き続ける。
「すみません上司の方呼んでいただけませんか」馬鹿らしくなったのでもう帰ろうと思った。
 上司の人はすぐに来て、まったく横柄な態度、命令口調で
「店の体制が悪かったというのか。金を払わなかったのはお前の方じゃないか」と私を叱責した。私は時間の無駄だと思ったので、
「これ以上拘束されるのは我慢できません」と言った。すると私を取り調べていた刑事が
「今取り調べ調書を印刷します」と言い、その紙に署名捺印させた。電話では「朝9時から午後3時ごろまで」と言っていたが取り調べはものの30分で終わった。こうした誇大な威圧をかけるのも警察の懲らしめのつもりなのだろう。
「支払う意思があり、レジに行って店員呼び出しボタンを二回押したが、15分待っていても誰も出てこず支払いができなかったので、無銭飲食だとは思っていない」これでいいですね? と担当の巡査が私に言い、供述調書を取った後、ようやく解放されることになった。ああすべてが終わったとホッとしていると、取調室を出た私の前で、上司の刑事が
「被疑者通ります」と大声で言った。

 駒込警察を出るとその足で元富士警察に向かう。今日のメインはむしろこちらの方だった。
 去年退職した私は収入がなくなった。かといって小説を書くためこれまで30以上の職を転々したので、何時までに定められた場所へ行き、何時までにこれだけの仕事をするといった状況に耐えられなくなった。自宅でできる簡単な仕事はないだろうかとWebで副業を検索してみた。すると何社もの掲載がある。それらの一つに登録した。ラインでメールが来たので読んでみると、【お仕事内容】「さびしさを抱える高所得者会員様と雑談メールでさびしさを埋めてあげることで、毎週、報酬が受け取れるメールでのお仕事になってます!」とある。【報酬】1日2~3通のメールをするだけで、メール開始より7日後に報酬が受け取れます。現在の平均月収82万(2023年度)とある。やがてマッチング相手さまのご紹介、お名前[結衣]様というメールが来た。
 後日、結衣さんからline経由でメールがあり、日々2、3通のメールが来た。彼女は飲食店を何店舗か経営している経営者という内容だった。今日こんなことがあった、明日はこんなことをする予定です、など多岐にわたる内容を毎日送りつけてきた。私にとっては仕事でもあるのですべてのメールに誠実に対応していった。私も調理師なんですよ、とメールで送ると、こうして出会えたことに運命を感じます、そのうちどこかでお会いしましょう、というメールが返信されてきた。
 やがてメールの中に、事務所の報酬アドバイザーという人のメールが混じるようになった。結衣さんとのメールを始めて3、4日たったころ、この人から「報酬の集計」というメールが来て、現在の口座残高[418万6200円]と打ってある。私は仰天した。やがてこのアドバイザーから指定口座に振り込むための送金手数料である「送金プレミアムサービス」への登録が義務付けられているのでAppleギフトカードで1万円のメダル購入をするように、と言ってきた。次のメールでは「保証機能パスポートであります「永久パスポートプラス」への加入が必須となっております」と言ってきて、また5万円のAppieギフトカードを購入してくださいと言ってきた。これに対して私は
「これって詐欺じゃないですか? 前に一万入金した時、決済終了って言ってたじゃないですか!」と返信した。すると、
「詐欺ではないからこそ、12年も運営してきたのです。云々・・・」のメールが来て、「追加でのお支払いは一切なく完了となり、報酬は必ず受け取れます」とあった。
 報酬の受取日、アドバイザーからメールがあり、そこに「報酬の受け取り方」とある。そこには、会員専用の全額送金をするためのデバイス「全額パッケージデバイス」の契約が必須となっております、とあり、契約費用17
万円のメダル購入とある。それに対し私は、
「ふざけんな。今日警察に訴える」と返信した。以降、結衣さんからのメールは来ていない。
 アドバイザーから17万入金しろと言われたその日、私は元富士署へいき、事情を話して被害届を提出した。サイバー対策課の刑事さんは、携帯電話解析装置と書かれたパソコンに私のスマートフォンを接続して、結衣さん、アドバイザーと交わしたメールをすべて取り込んでいった。
「Fノートでスクリーンショットしようと思います」と言っていた。私が、
「この結衣さんという人も、事務局側とつながっていたんですかね?」と訊くと刑事さんは表情を緩め、
「そりゃそうですよ。事務所と結託してます。まあ被害が6万で済んでよかったですよ」と言った。結衣さんのメールにあった下着姿の写真も、「どっかから持ってきたもの」なのだそうだ。そうして最後にこう言った。
「この、結衣ってのも男ですよ」
 元富士警察から帰宅すると、駒込警察署で私に横柄な口調で叱責した刑事を思い出し、
「部下でもない私におめえはどうして命令口調で物を言うのか」と言ってやればよかったと悔しくなった。

 その日の夕方、ショウと散歩に出るとビル群の合間に見えるライトアップされたスカイツリーの美しい照明を目にした時、いつになくそれが神々しく、清新に感じられた。また町中のビル街も、一つ一つに存在意義をなんとなく感じる。世界がいつになく浄化されているように感じる。
 考えてみると、今日警察署に行くまで私はそのことがやはり気がかりで、懸念していたし、悪いのは私か相手か考えたりして気の休まる暇がなかった。今日取り調べを受けた後、すっかり身がきれいになったように思うので、世界がいつになく清新に見えるのだろう。逆に言えば身に気がかりなことがあると世界が濁り、薄汚れて見えるんだな、と思った。

                     「おひつじ座」
 3月21日ころは春分の日にあたり祝日となる。この日に太陽は、黄道が天の赤道を南から北へ横切って北上していく春分点にやってきて、昼と夜の長さを等しく分けることになる。かつて春分点はおひつじ座にあった。
       「ぎょしゃ座」
 古い星座絵には、五角形に重ねて温厚そうな老羊飼いが、母山羊と2匹の子山羊を抱く姿として描かれている。それはこの星座がギリシアよりはるかに古いバビロニアの時代から知られており、この五角形が牝山羊を抱く老人の姿と見られていてその姿がそのまま残されたためとされている。1等星カペラは北海道北部では周極星となり、一年中いつでも見ることができる。
       「オリオン座」
 ギリシアの詩人ホメロスは、その叙事詩の中で「背の高いこの上ない美しい男の子」とオリオン座の見事さをたたえている。赤みがかったオレンジ色の1等星ベテルギウスの温かみのある輝き、青白いリゲルの冷たく刺すような鋭い輝き、斜め一列に整然と並んだ三ツ星と縦一列の小三ツ星のぼんやりした光芒・・・。古くはオリオン座全体の形から浦島太郎伝説の亀姫、つまり竜宮城の乙姫様の姿と見立てられていた。
 オリオン座大星雲の散光星雲M42は、星の誕生現場として現代天文学でいま最も注目されている。幾重にも重なるヴェールのようなガス星雲の美しさには息をのむ思いをさせられる。
       「おおいぬ座」
 冬の真南の空を見上げて、目の前で青白くギラギラ輝く星を見つけたら、それはおおいぬ座のシリウスと思って間違いない。シリウスという名は、「焼き焦がす者」という意味のギリシア語「セイリオス」からきている。シリウスは5億年くらいで自分の手持ちの水素の燃料を使い果たしてしまうだろうとみられている。
 
 2月17日の夕刊トップに次のような記事が出た。
「H3打ち上げ成功 新型基幹ロケット30年ぶり JAXA」
  宇宙航空研究開発機構(JAXA)は17日、次世代基幹ロケット「H3」2号機を打ち上げ、JAXA
目標の軌道に投入し、計画通り飛行を終えたと発表した。H3の打ち上げ成功は初となる。安全保障や防災、通信などで宇宙利用の重要性が増す中、日本の宇宙開発をけん引するロケットとして安定運用を目指す。
「軌道投入 衛星を分離」
  H3は17日9時22分、種子島宇宙センターから打ち上げられた。5分後には初号機で失敗した2段目のエンジンの
 作動に成功した。その後、目標の軌道まで上昇し、起小型の人工衛星2機を投入した。
  JAXAの山川宏理事長は17日開いた記者会見で「日本が宇宙活動の自立性や国際競争力を確保することに向けて  
 大きく前進した」と話した。
 2月18日の朝刊の一面トップには、
「H3打ち上げ再挑戦で成功 宇宙開発競争に弾み」
  宇宙航空研究開発機構(JAXA)は17日、新型の基幹ロケット「H3」の打ち上げに初めて成功した。安全保障や防  
 災、通信などで宇宙利用の重要性が増す中、自前の輸送手段を確保し、米国や中国が火花を散らす国際競争に復帰
 する。H3で打ち上げコストを下げて、今後の宇宙開発に弾みをつける。
「海外受注へ能力示す」
  H3の2号機は17日9時22分、種子島宇宙センターから打ち上げられた。目標の軌道まで上昇し、超小型の人工衛
 星2基を投入した。岸田文雄首相はXに「月面着陸成功に続いて、素晴らしい成果が得られ大変喜ばしい」と投稿
 した。
  H3は初号機の打ち上げに失敗しており、日本は宇宙への輸送手段を自国で確保できなくなる懸念もあった。自
 前のロケットの必要性はロシアのウクライナ侵攻でも浮き彫りになった。
 JAXAと三菱重工業は安くて使いやすいH3開発を進めてきた。
  その後、国際協力では国際宇宙ステーション(ISS)に物資を運ぶ新型無人補給船や日印共同の月探査機打ち上げ
 も予定している。米国と協力する月面の有人探査計画への貢献も期待される。

 この新聞の最後のページに、登山家今井通子の「私の履歴書」が連載されている。
タイトルは「結婚式」だった。
  1971年7月、私と現夫は欧州三大北壁の一つ、グランドジョラスの山頂で結婚式を挙げた。ウエディングドレス
 も立派な会場も、豪華なごちそうもない。
  披露宴は雪洞で。夫と私、そしてともに登った仲間三人がギリギリ座れるくらいの広さしかない。入り口に張っ
 たツエルト一枚を隔てて、外は雪が降っている。
 「おめでとう」「やったぜ」。仲間の一人が、お赤飯の缶詰を用意してくれていた。

 私は小説を書くために人生のほとんどを費やしてきたので独身だ。結婚については次のように考えていた。「毎日の生活すらおぼつかない、カツカツの状態の極貧なのに、大金のかかる結婚費用など工面できるはずがない」
 しかし彼女のエッセイに、式場は雪洞、料理はお赤飯の缶詰とあるのを見て、「これでいいのか」と衝撃を受けた。さすが登山家だと思った。

 「シエルブルー勉強会」に来た。
 ポスターに、「きらめく星座宇宙をオイルパステルで描きます」とあったからだ。チラシには、゛シエル・ブルーは70歳くらいまでの方で認知機能の低下などに心配や不安のあるかたやその家族、支援者が集い、情報交換や楽しいひと時を過ごす場です。是非お気軽にご参加ください゛とある。
[内容]臨床美術の体験(創作活動を通して認知症の予防や改善、心の開放や意欲の向上を促すことを目的とします
[講師]吉田晶子氏(心のケアのための芸術協会代表
「そうか星空に接すると、心が解放されるのか」と思った。
 講師は初めに「この黒い台紙に白のパステルで点を描いてください」と言った。会場の講師の後ろにホワイトボードがあり、そこに銀河系、天の川、星空の写真が貼ってあったので、私は銀河を描こうと思い、円盤とドーム型の形象に点で描いていく。
「このパステルは横向きにすると線や色が描けます。あとは思い通りの星空を描いていってください」と講師は言った。
 15人の人々が思い思いに台紙に向かい星空を描いていく。三十分ほどもすると絵を完成させた人がぽつぽつと出始め、私も絵を完成させた。全員が描き終わると講師はすべての画をホワイトボードに提示した。それから一枚一枚について批評(すべてほめ言葉)してゆき、作者に描いた感想はどうだったか聞いていく。私の番になると講師は、
「芸術的ですね・・・ほかの方は皆さん星空を描いていますが、この方のはひとつのまとまった形で銀河を描いています」といい、私のサインを見て、
「Sky Showさんっていうお名前も星空を思わせますね」そう言ってほほ笑んだ。私は「今かかっているCDはタイトルが星空とおっしゃっていましたがなんという作家ですか?」と訊くと、
「いえ、これはWebで『リラックス音楽を聴きながらプラネタリウム』で検索したものです。たぶん、星空・リラックス・プラネタリウムで検索できると思います」と言った。
 星空を選んだ人が多かったのは参加者のほとんどが女性だったからだろう。参加者の多くの人が、
「絵を描いたのなんか小学生以来久しぶりだったのでうれしかった」と言っていた。私もまたいい体験をしたと思った。ところで講師は認知症のにの字も口にしなかったが、これでいいのだろうか?


 国立天文台NAOJホームページより
      「いっかくじゅう座」
  近づいてきたバラ星雲に気を取られていると、逆の窓側からキラ☆キラとさざめくような光が飛び込んできた。
 これは前に見た龍灯なのだろうか。
 「クリスマスツリー星団、NGC2264だなあ」
  少年が叫んだ。「ユニコーン、露を降らせ」
  たくさんの豆電球がまるで千のホタルでも集ったようについていた。では今夜はユニコーン祭りなのだろうか。
  そもそも賢二の設定した銀河鉄道の夜は、物語の設定前後に亡くなった人たちが乗り合わせるものだった。い   
 ま、目の前に繰り広げられている景色に唖然とした。やはりあらゆる時空を超えている。この列車は、数々の実在
 する天体のハイライトを、まるで遊園地のアトラクションのように見せてくれる。
      「おおいぬ座」
  ライトエコーが広がっている様子を撮影したハッブル宇宙望遠鏡の画像を用いて、チリの雲が広がっている範囲
 を求めよ、という大学院入試問題を作ったことがある。
  ライトエコーに見とれているうち、その向こうにひときわ明るい三角標があるのに気付いた。近づいてくるにつ
 れ、その三角標の光る部分は青白い球になっていてなんだかふらついているようだった。
 「シリウスだ」靖君がつぶやく。
  靖君は天文学的に大事なシリウスの伴星、白色矮星について話を始めた。
  オリジナルではアルピレオの観測所で、目も覚めるような青宝玉(サファイア)と黄玉(トパーズ)の大きな透き通
 った球が、輪になって静かにくるくるとまわっているくだりがあった。
      「銀河鉄道の夜空へ」
  「銀河鉄道の夜」は、賢二最愛の妹だった宮沢トシ(1898~1922)の名があげられる。享年24歳。
  鉄道好きの賢二さんがトシの魂の交信を求めて北限への旅を決意したのは、北辰信仰と深いつながりがあったからかもしれません。(北辰妙見信仰)。北辰は北極星のことで、それを
 宇宙の中心として祀る信仰です。それはジョバンニとカムパネラを乗せて幻想四次の軌道を疾走する銀河鉄道のダ
 イヤグラムと密接にシンクロしていく。
      「アルゴ区」
  前方に現れたのは大きな帆船だった。きらきらと輝く天の川の水面に浮かんでいる。星座神話はギリシアで神々
 の物語と結びついている。
      「東京の星空・カレンダー・惑星(2024年2月)」 
 日の入り後に空が十分暗くなったころ、真っ先に目につくのは群を抜いて明るい木星です。南の空には冬の星座が見えています。明け方には金星が見えており、朝焼けの中で細い月と近づく7日頃は見栄えが良いでしょう。
 直径10万光年、数千億の星、圧倒的なスケールを持つ天の川銀河
 JASMIN/天の川銀河の精緻な地図を描く
      「宇宙が物語る物質の起源」
  宇宙で起こる星の爆発や合体が様々な元素を作り出す。元素の種「原子核」の存在世界へ。
  オリビアニュートンジョンは量子物理学者マックス・ボルンの子孫である。原子核は10兆分の1cmである。
 500年前、Democritusは世界は何からできているのかと問うた。大宇宙の果てと、ミクロの世界はある法則で結
 びついている。
  私たちは星くず(元素)から作られた。
  ニュートリノ質量発見。太陽ビッグバン宇宙は巨大な核融合炉。
  自然界におけるニュートリノ源/宇宙ニュートリノ、太陽ニュートリノ、地球ニュートリノ、原子炉ニュートリ
 ノ、超新星ニュートリノ
      「ぼくらは星のかけら」マーカス・チャウン
  生命を形作る元素のほとんどを超新星が作り出す。星の大爆発がなかったら、私たちは存在していない。ミクロ
    (元素)とマクロ(宇宙)の不思議な結びつき。
      「宇宙の観測が解き明かす元素合成」
  超大型望遠鏡TMT(30メートル望遠鏡)
  元素組成を調べる方法/スペクトル(分光)観測
      「元素合成のカギを握る不安定原子核(理研)」
  原子核は陽子と中性子からできている。中性子と要旨は同じ歩調である。
  宇宙誕生100秒後の宇宙/水素、ヘリウム、リチウム。輝く星の中心/鉄より軽い元素

 NHK「ヒューマン×スポーツ」より
 クライミング界に現れたスーパールーキー、安楽宙人、高校2年生。小学2年でクライミングを始める。
 競技はボルダーとリードの二種目。12m以上の壁を登りきることの持久力が問われる。「手の長さに関してはほかの日本人選手より有利だな」と思う。安楽は、練習場でクリアできなくとも、うれしそうな表情を浮かべていた。
 安楽はボルダーワールドカップで世界優勝した。ついたあだ名は「脱力系クライマー」。アジア予選大会でただ一人リードを完登しボルダーでtopに立つ。
 より高みを目指して登っていく17歳。パリオリンピックの優勝をめざす。

  「生命の星の条件を探る」より
  「惑星の巨大衝突」
  太陽系の惑星は形成の最終段階に、惑星同士の巨大衝突「ジャイアントインパクト」を繰り返していた。衝突の
 衝撃で地表はすべて荒れ狂うマグマの海と化した。
  太陽と地球の距離は約1億5000万キロメートル。この距離を「1天文単位(AU)」と呼ぶ。太陽系の内側
 に位置する水星、金星、地球、火星の4つを一括して「地球型惑星」と呼ぶ。宇宙は約137億年前、ビッグバン
 によって誕生した。  
  「大気と水の保持」
  微惑星が衝突を繰り返して成長し、月くらいの大きさの原始惑星になると、重力によって周囲にある水素やヘリ
 ウムのガスが引き寄せられていき、それが原始惑星の大気となる。海王星や天王星はその質量や半径から、成分の
 60~70%がH2Oだと推測されている。惑星の大部分がH2Oでできているという意味からいえば、「真の水
 惑星」は地球でなく海王星のような惑星だということになる。
  太陽系外に巨大な地球型惑星「スーパーアース」の発見が相次いでいる。
  「軌道と自転と他惑星」
  木星は太陽系最大の惑星で、質量は地球の300倍です。太陽系を遠くから観測すれば、太陽の周りを木星だけ
 がまわっているように見えるはずです。その大きな引力は、遠くから落ちてくる水星の軌道を弾き飛ばしてしまう
 ほどです。おかげで地球も、たくさんの彗星の衝突から守られています。
  「恒星」
  恒星の数は、太陽系が所属する「天の川銀河」だけでおよそ1000億個あると考えられている。








































しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

灰かぶりの魔女シャルロット~シャルロットは今日もファイアボールを撃つ~

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:8

手放せない夜に

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

奇跡の広場:炭酸水を流す少女の物語

O.K
児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

あのね、

現代文学 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

サンタに捧ぐ贈り物

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

ファンタジーなら刀一本で斬り伏せる。〜斬れぬ斬れぬもわしが斬る!〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

よつばの呟き

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:412pt お気に入り:1

処理中です...