上 下
21 / 45
第2章 ダンジョン編

第16話 

しおりを挟む
ゲオンが、真剣な表情になった。

「ベルティアさん!子供じゃあないなら、俺と付き合ってくれ!あなたの美しさと強さ、そして奥に内在する心の美しさに俺は、惚れた!ベルティアさん!俺、一生ベルティアさんを守るから、だから、真剣に付き合ってほしいっ!!」

「えっ!?……いきなり、何をっ!!?」

突然の告白に、ベルティアは、その美しいマリンブルーの目が飛び出さんばかりに驚いた。

ゲオンの表情は真剣そのものだ。
 
灰色の目の奥に、不安と緊張と、そして大きな汲みあげられぬほどの愛情が交錯している。  

ゲオンの心は、真剣そのものだった。
 
そんな、ガチな心からの言葉に、ベルティアの頬が、うっすらと赤くなる。

ゲオンは、ストレートだった。恥じるでもなく、真っ向から真っすぐに想いをぶつけてきた。

こんなに真剣に、真正面から想いをぶつけられたのは、初めてだった。

それに……「一生守る!」その言葉が、ベルティアの暗黒でしかなかった心に、暖かな光を灯す。

ベルティアの女心が、まるで海の中に生える海藻のように、激しくゆらゆらと揺れ動く。

海藻が揺れる上の水面みなもが光を放った。その暖かな光が彼女の心の奥底に眠る「死体」に流れ込む。その「何か」が生き返ったその瞬間、ベルティアは、悟った。

出会ってまだ間もないが、自分は女として、目の前にいるこの1人の男性を、愛してしまった。その変えられぬ事実を。

次の瞬間、ミリアの表情が浮かんだ。彼女のことは……。

まあ、彼女は、結婚していて、幸せだし。今生・・では、もう、いいかな。私は私で、幸せを見つけなきゃっ!

……正直、結婚とかは、難しい。しかし、自分は目の前にいるこの男が愛おしい。愛おしくて、たまらない。でも、…なら、せめて……。

「……じゃあ、お友達から……。」

ベルティアは、真っ赤な顔で下を向きながら、小さな声で恥ずかしそうに言葉を綴る。

「ありがとう、ベルティアさん!」

ベルティアの言葉が終わらぬうちに、ゲオンが、ベルティアの体を抱きしめた。

きちんと「お友達から」と言ったというのに、距離が近い!……何か、いまいち距離感が掴めぬ男だなぁ。

ベルティアはそう思いつつも、内側から湧き上がってくる愛と思える愛おしい感情を、静かに1人確認し、かみしめる。

「ゲオン!ベルティアさんじゃあなく、ベルティアでいいから。それから、離れてくれない?私、早く剣の所へ行きたいの!」

頬を染め、マリンブルーの瞳を泳がせつつ、ベルティアが言葉を綴る。

「そのことだけど、ベルティア。俺がベルティアを養ってあげるから、もうお金の心配はいらないよ。だから、危険を冒して呪われた剣を取りに行くことはやめないか?」

やっとベルティアから離れると、ゲオンが言った。

自分の稼ぎは、女の人1人養うほどの稼ぎはある。そう自覚しての言葉だった。しかし…。

「あなた、何勘違いしているの?お友達からとは言ったけど、私は、あなたと結婚するとは言ってないわよ。もっと距離を持って話してほしいわ。」

「お友達から」と先ほどはっきり伝えたが、いきなり「結婚宣言」だ。近い!距離が近すぎる!それに、さっきの言葉、聞いてなかったのかよっ!

ベルティアは、心の中で、ツッコミを入れる。

ベルティアは、半ば呆れた目でゲオンを見た。
 
ベルティアの態度は、素気ないように思われた。

が、その彼女の綺麗なマリンブルーの瞳の中に、愛おしさと喜びが宿っているのを、ゲオンは見逃さなかった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

可笑しなお菓子屋、灯屋(あかしや)

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:788pt お気に入り:1

戦利品のオメガ

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:329

異種族キャンプで全力スローライフを執行する……予定!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:3,500pt お気に入り:4,744

幸子ばあさんの異世界ご飯

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:234pt お気に入り:135

ポリネシアンってなんだよ?

BL / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:330

いつから魔力がないと錯覚していた!?

BL / 連載中 24h.ポイント:20,597pt お気に入り:10,507

【R18】ちょっと大人な体験談はこちらです

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:220pt お気に入り:35

処理中です...