元魔王令嬢と勇者一行の珍道中~めでたく勇者に倒されたので世界を旅して回ります!~

風雅ありす

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第二章 魔女の杖と魔獣

【閑話①】聖女と勇者の会話(in はじまりの森)

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「勇者さま、空気が気持ちいいですわね」

「え……ああ。そう言えば、そうだな」

「これも全て、勇者さまが魔王を倒したおかげですわ」

「そうなのかな?」

「そうですわよ! 瘴気の気配も感じませんし、魔物も姿を現しませんもの。魔王の存在自体が、瘴気を呼び、魔物を狂暴化させていたに違いありませんわ」

「そっか~……でも、マオは俺たちが復活させただろう。それなのに、その理屈は矛盾していないか?」

「それは私も心配しておりました。ですから、念のためマオさんの魔力を封印させていただいたのです。今のところ、その成果はあったようですわね。彼女の膨大な魔力が、瘴気の源と言えるのかもしれません」

「ということは、マオの封印を解いてしまったら、また魔物が増えるかもしれないってことか…………ラベンダーには可哀想だけど、彼女が魔力を取り戻すことは絶対に阻止しないとな」

「もちろんです! そのためにも、勇者さまと私がこうして彼女を見張っている必要があります」

「それなのに、魔法大学の話なんて伝えてしまって良かったのか? もし、彼女がそれで魔法を取り戻してしまったら大変なことになるんじゃ……」

「大丈夫ですわ。魔法大学なんて、誰も存在を確かめたことがない迷信のようなものですから。本当にそんなものが存在するのかすら疑わしいものです。見つかりっこありませんわ」

「それは……ラベンダーがちょっと可哀想だな。正直に教えてやったほうがいいんじゃないか」

「それはダメですわ! 人は目標がなければ生きらない生き物です。もし彼女が自分の魔法を取り戻せないと知った時、自暴自棄になる可能性もあります。今しばらくは、彼女がこれからの人生をどう生きていくのか、そっと傍で見守りましょう。それこそが、彼女を蘇らせてしまった私たちの責務でもありますから」

「そうか…………うん、そうだな。それにしても、復活と封印を同時にやってのけるとは、さすがイリーナだよ。俺のわがままを聞いてくれて、ありがとうな」

「いえ、そんな私は……っ! ゆ、勇者さまのためなら、どんなことでもいたしますわ♡ ……それで~……私たちの結婚式は、いつどこで挙げます? わ、私は、もういつでも勇者さまの妻となる心の準備はできております……きゃっ♡ え~……聖女である私としては、聖都で一番大きな教会で挙式を挙げられたらと……あ、でももし勇者さまのご希望があれば、私は別に……」

「……ん? あの木に何か貼られているな。〝WANTED〟と書かれているな。おたずね者か。どうやらこの変に、冒険者を狙った悪党が出るらしい。気を付けるよう、先頭を歩いているラベンダーに声をかけたほうがいいかな」

「ゆ、勇者さま? 私の話……聞いておりませんでしたわね……」


 こうして、「第20話 東の町のギルド」へつづく……。
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