【R18】拾ったワンコは獣人でした。~イケメン獣人に求愛されて困っています。~

風雅ありす

文字の大きさ
28 / 63
【本編】

嵐の前触れ

しおりを挟む
嵐の前触れは、意外と早くにやってきた。

コウヤと暮らすようになってから、早くも二週間が経とうとしていた。
仕事は、それなりに忙しかったけど、私は、前ほど残業をしないようになっていた。
というのも、私の帰りが遅いと、コウヤが私を迎えに会社までやって来るからだ。
場所を教えていたわけでもないのに、どうやって分かったの、と驚く私に、
コウヤは、恥ずかしげもなく、”ファムの匂いならどこに居ても分かる”と自慢げに胸を張った。

会社の人たちにからかわれるのも嫌なので、それ以来、なるべく早く家へ帰るようにしている。
それに、コウヤが夕食を用意して私の帰りを待っていてくれると思うと、自然と気持ちが家へ向かうのだ。

その日も、早めに仕事を切り上げて会社を出たところで、私のスマホに、百合からメッセージが届いた。

『先輩、この間は、久しぶりに会えて嬉しかったです♡
 良かったら、今晩、一緒にご飯食べに行きません?
 美味しいイタリアンのお店を見つけたんですよぉ~♪
 先輩の彼氏さんの話も聞きたいですし♡
 それと……実は、ちょっと先輩にお願いしたいことがありまして……』

私は、なんだか嫌な予感がした。
仕事で遅くなるから難しい、と返信しようとしたら、私の返信を待たずに次のメッセージが届く。

『実は今、先輩の家の近くに来てるんです!
 駅で待ってますので、着いたら教えてください~♡』

先手を打たれてしまっては、後に引けない。
仕事だと返せば、駅で待っている百合と鉢合わせをする可能性がある。
多少強引な気はするが、何か困っていることがあるのかもしれない、と思うと無下にも出来ない。
仕方なく私は、了承の意と、駅に到着する時間を百合に返信した。

最寄り駅を出ると、百合が私に向かって手を振っていた。
相変わらず、可愛らしい格好にメイクもバッチリ決まっている。
私は、仕事帰りとは言え、地味目なビジネスカジュアルの服装に、ナチュラルメイクだ。
彼女の隣を並んで歩くことに、何となく気後れを感じてしまう。

そもそも、百合は、私の元彼の彼女なのだ。
気まづくないわけが無い。
しかし、私と純也が付き合っていたことを知らない百合は、そんな私の心中など知る由もない。
当然とは言え、親しみを込めた笑顔を向けられると胸が痛む。

(とにかく、さっさと話を聞いて早く切り上げよう)

今朝、コウヤに帰りはそんなに遅くならない、と伝えているので、あまり遅くなるとコウヤが私を迎えに来てしまう。
私は、何となく百合にコウヤを合わせたくないと思うと同時に、何故そう思うのかが分からなかった。

百合に連れて行かれたお店は、こぢんまりとしたお洒落なイタリアン料理店だった。
既に席を予約してあったようで、店員に案内された席に向かい合って座る。
素敵なお店ね、と私が褒めると、百合は、嬉しそうにはにかむような笑みを見せた。

「前に、純也が連れて来てくれたんです」

(じゃあ、純也と来ればいいじゃない!)

と思ったが、笑顔で聞き流すことにした。
私たちは、メニューを注文すると、食事が運ばれてくるまで当たり障りのない話をした。

純也の怪我がどうなったのか気になっていたが、
百合の目的が分からない以上、不用意に純也の話題を私から振るのは躊躇われた。
しかし、食事が運ばれて来ても、百合は、始終屈託のない笑顔で、大学の噂話や最近ハマっているテレビドラマの話などをして、なかなか核心に触れて来ない。

時間はどんどん過ぎていき、私は、グラスワインの2杯目を半分程飲んだ頃、痺れを切らして自分から話を切り出した。

「で、私にお願いしたいことって……何?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

処理中です...