【R18】拾ったワンコは獣人でした。~イケメン獣人に求愛されて困っています。~

風雅ありす

文字の大きさ
42 / 63
【本編】

告白

しおりを挟む
土日をずっと寝て過ごしたお陰で、月曜日の朝には、私の熱は下がっていた。
頭痛もなくなっていたので、いつも通りに電車に乗って会社へ行く。
会社へ着くと、同僚たちに挨拶をして、自分の席に座り、パソコンを立ち上げた。
コウヤが居なくなっても、私の日常生活は、さほど変わらない。
変わったとしたら、ここ最近また残業が増えてきたことだろうか。

「ため息なんかついて……大丈夫?
 まだ彼氏と連絡付かないの?」

伊藤さんが心配そうな口調で声を掛けてくれた。
どうやら無意識にため息をついていたらしい。

「……あ、はい……でも、大丈夫です」

「大丈夫って顔じゃないわよ。
 ……そうだ!
 今日は、他の人たちも誘ってさ、ぱーっと飲みに行きましょ!
 男連中も誘ってさ、合コン気分で、どう?」

伊藤さんが私を気遣う気持ちが痛いほど伝わってきて、嬉しい気持ちよりも、彼女を心配させてしまっていることに申し訳ない気持ちになる。

「……すみません。
 気持ちは嬉しいんですが、今日は、人と約束があって……また今度誘ってください」

人と会う約束がある、というのは本当だ。
今朝、純也から私の体調を心配する文面のメッセージが送られてきた。
私がもう大丈夫だと答えると、食事でもどうかと誘われた。
正直、あまり気が進まないのだが、看病してもらったお礼も兼ねて、とりあえず承諾したのだ。

「……あら。もしかして、新しい彼氏?
 それで悩んでたの??」

「いえ、違います!
 昔の古い……友人とです」

(本当は、元彼なんだけど)

「男? 男なのね??
 そういう昔からの知り合いってのが一番のダークホースだったりするのよ!
 お互いのことをよく知ってる仲だから、色々と許せるってのもあるしねぇ」

伊藤さんは、やけにしみじみとした口調で話している。
もしかしたら、自分の経験談なのかもしれない。

「あはは、心に留めておきます。
 でも、本当にそういうのじゃないので」

例え、純也とやり直す未来があるとしても、今の私には考えられそうにない。


私が仕事を終えて純也との待ち合わせ場所に着くと、既に純也がそこに居た。
純也が私に気付いて手を上げる。
付き合っていた頃のことを思い出して、少し胸がきゅっと鳴った。

あの頃は、大学の知り合いに純也と一緒にいるところを見られたくなくて、大学から離れた駅で待ち合わせをした。
同じ大学の門を別々のタイミングで素知らぬ顔をして通り過ぎ、電車に乗る。
あの時は、誰かに見つからないだろうかと、胸をドキドキさせていたものだ。

純也が店を予約していると言うので、少し身構えたが、行ってみると、普通の大衆居酒屋だった。
駅前のためか、人でごった返している。
これなら純也も、私に妙なことをすることはないだろう。

「この前は、ありがとう。
 薬とか食べ物とか……今日は、私が奢るわ」

「いや、別にいいよ。
 あれくらい、付き合ってた頃に、お前にも同じことしてもらったこと、あったし。
 それより、俺の方こそ……この前は、あんなことして悪かった。
 俺、あいつにお前を取られると思ったら、ついカッとなって……」

公園で、無理やり純也にキスをされ、迫られた時のことを思い出す。
今でも不快に思うけれど、面と向かって謝られては、責める気にはなれない。
少なくとも、付き合っていた頃は、キスやその先まで関係を持っていた相手なのだ。

「……そうね。到底、紳士な態度とは思えないわね。
 だったらここは、あなたに奢らせてあげるべきかしら。
 それなら、犬に噛まれたとでも思って、忘れてあげてもいいけど」

そう言って、私がビールを飲むと、純也が喉の奥でくっくと笑った。

「……お前らしいな。
 いいよ、ここは俺が犬になるよ。
 まあ、本当に犬に噛まれたのは、俺の方だけどな」

純也がふざけた口調で口にした最後の言葉に、私の心臓がズキリと音を立てて痛む。

(そうだった……コウヤが純也に噛み付いて、怪我を負わせたんだったわ)

「……その、怪我の方は、何ともないの?
 病院へは行った?」

「ああ。一応、検査も受けたけど、問題ないよ。
 犬に噛まれるくらい、よくあることだろ」

お前もよく知ってるだろう、と言うように純也が眉をしかめた。
純也が言っているのは、私たちが入っていたサークル活動のことだ。
人に慣れていない犬を相手にすることも多かったので、噛まれることなんて珍しくもない。

私たちは、なんだかおかしくなって、互いの顔を見合わせて笑った。
こうしていると、なんだか昔に戻ったような気になる。

「それにしても、あの犬は……いや、まあいい。
 俺が言いたいことは、前と変わらない。
 お前と、もう一度やり直したいと思ってる」

真面目な顔で純也が私を見る。
その目を見ていると、なんだかとても懐かしい気持ちになって、胸が切なくなる。

「俺、西野のことが好きだ。
 俺とまた付き合ってくれないか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーレムです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

処理中です...