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【本編】
コウヤの死
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「そんな……嘘、ですよね。
悪い冗談…………」
冗談だと言いながらも、私の声は、震えている。
東城先生は、それに気付いていて尚、真剣な表情で答えた。
「冗談なんかじゃないわ。
申し訳ないけど、私、生き物に関してはシビアなの。
人間に危害を加えた動物がどういう末路を辿るか……ボランティアで関わっていたあなたなら解るでしょう?
例え、どんなに可哀想だと思っても、所詮この世界では、人間が第一なの。
私の一任では、どうしようもない……だから、諦めてちょうだい」
「…………それなら、犬ではなくて、人間の男の人、ならご存知ではないですか?
私、見たんです。
この前、ここで同じように待っていた時に、東条先生が男性と歩いているところを。
彼は、私がよく知っている人でした」
「どうだったかしら。
ずいぶん前のことで、もう覚えていないわね。
第一、私が一緒に歩いていたという男と、あなたは一体どういう関係なのかしら?」
「それは……」
私は、言葉に詰まった。
〝恋人〟? ……いや、違う。
コウヤが一方的に愛情を向けてくれていただけで、私は一度だって彼の気持ちに答えたことなどないのだから。
「……答えられないのね。
所詮、その程度の関係だというのに、何故今更あなたは、ここへ来たの?」
何となく含みのある言い方に、私は、はっと気付いた。
「やっぱり、彼を知っているんですね。
彼は……コウヤは、今どこに居るんですか?
教えてください!」
「例え知っていたとしても、私が貴方に教える義理はないわ。
とにかく、もう彼のことは忘れるのね。
きっとその程度の関係だったのよ」
その言葉を聞いた途端、私の中で何かがぷつりと音を立てて切れた。
「……あなたに………あなたに何が解るって言うんですか」
私の手が震えている。
不安や恐怖からではない。
強い怒りの感情が私の中に湧き上がっていく。
「わかるわ。
その証拠に、あなたは、すぐに私を訪ねて来なかった。……2週間もね。
本当に大事に想う相手なら、迷わず後を追うんじゃないかしら?
少なくとも、私ならそうするわ。
大事な人が目の前から姿を消したら、居てもたってもいられない。
心配でじっとなんてしていられない。
何がなんでも探し出して、見つけて、今度は絶対に離さない…………絶対に」
東条先生の強い眼差しが私を射抜く。
怒っているような、悲しんでいるような瞳だ。
私は、確信した。
この人は、やっぱりコウヤの居場所を知っている。
知っていて、わざと私を挑発しようとしているのだ。
でも、何故そんな態度をとるのかが解らない。
「……わかりません。
何故、そんな言い方をするんですか?
あなたは、まるでコウヤのことを知っているような口ぶりですよね。
あなたの方こそ、コウヤとは、一体どういう関係なんですか?」
口にしてからしまったと思ったが、もう遅い。
私は、次の瞬間、耳を塞ぎたくなるような言葉を告げられる。
「私は…………私は、彼の【運命の女神】よ」
悪い冗談…………」
冗談だと言いながらも、私の声は、震えている。
東城先生は、それに気付いていて尚、真剣な表情で答えた。
「冗談なんかじゃないわ。
申し訳ないけど、私、生き物に関してはシビアなの。
人間に危害を加えた動物がどういう末路を辿るか……ボランティアで関わっていたあなたなら解るでしょう?
例え、どんなに可哀想だと思っても、所詮この世界では、人間が第一なの。
私の一任では、どうしようもない……だから、諦めてちょうだい」
「…………それなら、犬ではなくて、人間の男の人、ならご存知ではないですか?
私、見たんです。
この前、ここで同じように待っていた時に、東条先生が男性と歩いているところを。
彼は、私がよく知っている人でした」
「どうだったかしら。
ずいぶん前のことで、もう覚えていないわね。
第一、私が一緒に歩いていたという男と、あなたは一体どういう関係なのかしら?」
「それは……」
私は、言葉に詰まった。
〝恋人〟? ……いや、違う。
コウヤが一方的に愛情を向けてくれていただけで、私は一度だって彼の気持ちに答えたことなどないのだから。
「……答えられないのね。
所詮、その程度の関係だというのに、何故今更あなたは、ここへ来たの?」
何となく含みのある言い方に、私は、はっと気付いた。
「やっぱり、彼を知っているんですね。
彼は……コウヤは、今どこに居るんですか?
教えてください!」
「例え知っていたとしても、私が貴方に教える義理はないわ。
とにかく、もう彼のことは忘れるのね。
きっとその程度の関係だったのよ」
その言葉を聞いた途端、私の中で何かがぷつりと音を立てて切れた。
「……あなたに………あなたに何が解るって言うんですか」
私の手が震えている。
不安や恐怖からではない。
強い怒りの感情が私の中に湧き上がっていく。
「わかるわ。
その証拠に、あなたは、すぐに私を訪ねて来なかった。……2週間もね。
本当に大事に想う相手なら、迷わず後を追うんじゃないかしら?
少なくとも、私ならそうするわ。
大事な人が目の前から姿を消したら、居てもたってもいられない。
心配でじっとなんてしていられない。
何がなんでも探し出して、見つけて、今度は絶対に離さない…………絶対に」
東条先生の強い眼差しが私を射抜く。
怒っているような、悲しんでいるような瞳だ。
私は、確信した。
この人は、やっぱりコウヤの居場所を知っている。
知っていて、わざと私を挑発しようとしているのだ。
でも、何故そんな態度をとるのかが解らない。
「……わかりません。
何故、そんな言い方をするんですか?
あなたは、まるでコウヤのことを知っているような口ぶりですよね。
あなたの方こそ、コウヤとは、一体どういう関係なんですか?」
口にしてからしまったと思ったが、もう遅い。
私は、次の瞬間、耳を塞ぎたくなるような言葉を告げられる。
「私は…………私は、彼の【運命の女神】よ」
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