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【本編】
獣医師の女
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次の日、私は、もう一度、動物愛護センターへ向かった。
コウヤがまだそこに居るのかどうかは、分からない。
でも、他にコウヤの居場所を知る方法がない。
少なくとも、あの時に見た、白衣を着た綺麗な獣医師の女は、きっと何か知っているだろう。
私は、逸る気持ちと不安な気持ちを抱えながら、電車に乗った。
コウヤは、私を見たら、どんな顔をするだろう?
驚くだろうか。
もし、迷惑そうな顔をしたら、どうしよう?
いや、むしろハッキリと別れを告げられた方が気持ちの整理もつく。
頭は、どんどん悪い方へとばかり考えがいって止まらない。
でも、どうしてもコウヤが私を無下にする姿が想像つかなかった。
そんなことを考えていると、思ったよりも早く動物愛護センターに着いた。
前にここへ来た時は、もっと時間が掛かったような気がする。
あの時は、コウヤを救おうと気が焦っていたからかもしれない。
受付へ行っても門前払いされることは想像できたので、今度は直接動物舎へと向かった。
柵に囲まれた運動場で犬たちが遊んでいるのが見えた。
そこに、以前にも見掛けた女性職員の姿を見つけ、近寄って声を掛けた。
「ああ、あなたは、確か……この前もいらしてた方ですよね?」
その女性職員は、私のことを覚えてくれていたようで、私が声を掛けるとすぐに警戒を解いた顔で笑顔を見せてくれた。
「東城先生なら、今診療室にいますよ。
呼んで来ましょうか?」
私がお願いします、と答えると、その女性職員は、嫌な顔1つせず、獣舎の中へと入って行った。
しばらくそこで待っていると、女性職員が再び戻って来た。
後ろから白衣を着た髪の長い女性が歩いて出てくる。
私は、緊張から逃げ出したくなる気持ちをぐっと堪えて、白衣の女性に向き合った。
「あなたが……えっと、西野さん……だったかしら?」
〝東城〟と書かれた名札を白衣の胸元に付けたその女性は、長い髪をかきあげながら、切れ長の目が私を見る。
スラッとした細身の長身に日焼けしていない肌が眩しく、近くで見ると尚のこと美人であることが分かる。
「私に何か用かしら?」
私は、ごくりと唾を飲み込むと、ここまで来る間に考えたセリフを口にした。
「……あの、2週間前くらいに、ここへ大型犬が連れて来られたと思うのですが……黒と白の毛に茶色の斑模様が入り交じった……先生が診察を担当されたと伺っています。
ご記憶にありますでしょうか?」
東城先生は、少し考える様な素振りを見せた後、何かを思い出したように表情を曇らせて答えた。
「……ああ、あの……人に怪我をさせたと言ってた犬のことかしら。
あの犬には、可哀想なことをしたわ……」
私の心臓がどくんと不穏な音を立てる。
「えっ、それって、どういう意味ですか?」
言い渋る様子の東城先生を見て、私の悪い予感が早馬に乗って押し寄せてくるようだ。
まさかコウヤの身に何かあったのだろうか。
(……私ったら、どうして、そんなことすら考えなかったんだろう。
もしかしたら、何かの事情があって、私の所へ帰って来られなかったのかもしれない……。
コウヤにもしものことがあったら……)
私がじっと答えを待っているのを見て、東城先生は、ふぅと息を吐いて口を開いた。
「あの犬なら、死んだわ。
人に危害を加えたんだもの、当然よ」
コウヤがまだそこに居るのかどうかは、分からない。
でも、他にコウヤの居場所を知る方法がない。
少なくとも、あの時に見た、白衣を着た綺麗な獣医師の女は、きっと何か知っているだろう。
私は、逸る気持ちと不安な気持ちを抱えながら、電車に乗った。
コウヤは、私を見たら、どんな顔をするだろう?
驚くだろうか。
もし、迷惑そうな顔をしたら、どうしよう?
いや、むしろハッキリと別れを告げられた方が気持ちの整理もつく。
頭は、どんどん悪い方へとばかり考えがいって止まらない。
でも、どうしてもコウヤが私を無下にする姿が想像つかなかった。
そんなことを考えていると、思ったよりも早く動物愛護センターに着いた。
前にここへ来た時は、もっと時間が掛かったような気がする。
あの時は、コウヤを救おうと気が焦っていたからかもしれない。
受付へ行っても門前払いされることは想像できたので、今度は直接動物舎へと向かった。
柵に囲まれた運動場で犬たちが遊んでいるのが見えた。
そこに、以前にも見掛けた女性職員の姿を見つけ、近寄って声を掛けた。
「ああ、あなたは、確か……この前もいらしてた方ですよね?」
その女性職員は、私のことを覚えてくれていたようで、私が声を掛けるとすぐに警戒を解いた顔で笑顔を見せてくれた。
「東城先生なら、今診療室にいますよ。
呼んで来ましょうか?」
私がお願いします、と答えると、その女性職員は、嫌な顔1つせず、獣舎の中へと入って行った。
しばらくそこで待っていると、女性職員が再び戻って来た。
後ろから白衣を着た髪の長い女性が歩いて出てくる。
私は、緊張から逃げ出したくなる気持ちをぐっと堪えて、白衣の女性に向き合った。
「あなたが……えっと、西野さん……だったかしら?」
〝東城〟と書かれた名札を白衣の胸元に付けたその女性は、長い髪をかきあげながら、切れ長の目が私を見る。
スラッとした細身の長身に日焼けしていない肌が眩しく、近くで見ると尚のこと美人であることが分かる。
「私に何か用かしら?」
私は、ごくりと唾を飲み込むと、ここまで来る間に考えたセリフを口にした。
「……あの、2週間前くらいに、ここへ大型犬が連れて来られたと思うのですが……黒と白の毛に茶色の斑模様が入り交じった……先生が診察を担当されたと伺っています。
ご記憶にありますでしょうか?」
東城先生は、少し考える様な素振りを見せた後、何かを思い出したように表情を曇らせて答えた。
「……ああ、あの……人に怪我をさせたと言ってた犬のことかしら。
あの犬には、可哀想なことをしたわ……」
私の心臓がどくんと不穏な音を立てる。
「えっ、それって、どういう意味ですか?」
言い渋る様子の東城先生を見て、私の悪い予感が早馬に乗って押し寄せてくるようだ。
まさかコウヤの身に何かあったのだろうか。
(……私ったら、どうして、そんなことすら考えなかったんだろう。
もしかしたら、何かの事情があって、私の所へ帰って来られなかったのかもしれない……。
コウヤにもしものことがあったら……)
私がじっと答えを待っているのを見て、東城先生は、ふぅと息を吐いて口を開いた。
「あの犬なら、死んだわ。
人に危害を加えたんだもの、当然よ」
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