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【本編】
帰路
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動物愛護センターから自宅へ帰る途中、コウヤが私に教えてくれた。
東城先生には、想い合っていた相手がいたが、想いを告げる前に、相手が亡くなってしまったそうだ。
だから、私に向かってあんなキツイ口調で責めるような言い方をしたのだろう。
私と自分を重ねて見ていたのかもしれない。
「……ごめん。
ファムには、関係ないのに、俺がもっとしっかり彼女を止めておけば良かったんだ」
「コウヤは、関係ないでしょ。
それとも何、やっぱりあの先生と親密な間柄だった?」
「違うっ、そんなんじゃ……!」
「……わかってる。
ごめん、ちょっと意地悪言ってみた」
コウヤは、同じ異世界から来た同族として彼女の失礼な態度を私に詫びているのだろう。
でも、コウヤと彼女との間に、目に見えない絆があるような気がして、私は嫌な気持ちがしたのだ。
「それより、どうして彼女と賭けなんてしたの?
私、実は結構怒ってるんですけど」
「ごめん!
俺、最初は、そんな賭けなんかしないって突っぱねたんだけど、先生が……」
『あら、なぁに?
自分が彼女から愛されてるって自信がないの?
そんなの、ただ遊ばれてるだけじゃない。
まさかその程度の関係で、生涯の番を決める気じゃないでしょうね。
そんな相手に時間を費やすなんて無意味よ。
さっさと諦めて、次を探すのね。
……そう、私なんてどうかしら?』
「……って言われて……俺、ファムとは強い絆で結ばれてるんだって証明するためにも、断れなかったんだ」
「要するに、あの女に良いように言いくるめられたってわけね」
「うっ…………それもある、けど。
実は俺も、ファムの気持ちを知りたかったっていうのも、ちょっとある。
でも、こんなやり方卑怯だよな。
本当にごめん」
しゅんと項垂れたコウヤがまるで捨てられた子犬みたいで、私は、怒っていたのも忘れて思わず胸がきゅんとする。
「…………まぁ、私もあなたとの関係を曖昧なままにしてて、ちゃんと自分の気持ちを伝えなかったのも悪かったし……」
「じゃあ、許してくれる?」
ぱっと顔を上げて、期待に瞳を輝かせながら私を見つめるコウヤに、私は、即答しそうな気持ちをぐっと堪えた。
「……それとこれとは話が別。
あなたに何かあったんじゃないかって、本当に心配したんだから」
「俺のこと、そんなに心配だった?」
コウヤの瞳が嬉々として輝く。
今、尻尾があれば、激しく左右に振っていそうだ。
「そんな嬉しそうに言わないでよっ」
「ごめん、つい……でも」
隣を歩いていたコウヤが突然、足を止めると、
感極まった表情で私を抱き締める。
「ファムに会えて、本当に嬉しい。
ずっと会いたかった……!」
「ちょ、ちょっと、人に見られちゃうわよ」
周囲に人気はなかったものの、住宅街なのでいつ人に見られるか分からない。
それでも私の抵抗も虚しく、コウヤがキツく私を抱き締める。
その温もりとコウヤの匂いに包まれて、私は、ふぅと安堵のため息を漏らした。
(まぁ、いいか。
コウヤが無事にこうして帰ってきてくれたんだから)
「…………おかえり、コウヤ」
私は、そっとコウヤの背中に腕を回した。
東城先生には、想い合っていた相手がいたが、想いを告げる前に、相手が亡くなってしまったそうだ。
だから、私に向かってあんなキツイ口調で責めるような言い方をしたのだろう。
私と自分を重ねて見ていたのかもしれない。
「……ごめん。
ファムには、関係ないのに、俺がもっとしっかり彼女を止めておけば良かったんだ」
「コウヤは、関係ないでしょ。
それとも何、やっぱりあの先生と親密な間柄だった?」
「違うっ、そんなんじゃ……!」
「……わかってる。
ごめん、ちょっと意地悪言ってみた」
コウヤは、同じ異世界から来た同族として彼女の失礼な態度を私に詫びているのだろう。
でも、コウヤと彼女との間に、目に見えない絆があるような気がして、私は嫌な気持ちがしたのだ。
「それより、どうして彼女と賭けなんてしたの?
私、実は結構怒ってるんですけど」
「ごめん!
俺、最初は、そんな賭けなんかしないって突っぱねたんだけど、先生が……」
『あら、なぁに?
自分が彼女から愛されてるって自信がないの?
そんなの、ただ遊ばれてるだけじゃない。
まさかその程度の関係で、生涯の番を決める気じゃないでしょうね。
そんな相手に時間を費やすなんて無意味よ。
さっさと諦めて、次を探すのね。
……そう、私なんてどうかしら?』
「……って言われて……俺、ファムとは強い絆で結ばれてるんだって証明するためにも、断れなかったんだ」
「要するに、あの女に良いように言いくるめられたってわけね」
「うっ…………それもある、けど。
実は俺も、ファムの気持ちを知りたかったっていうのも、ちょっとある。
でも、こんなやり方卑怯だよな。
本当にごめん」
しゅんと項垂れたコウヤがまるで捨てられた子犬みたいで、私は、怒っていたのも忘れて思わず胸がきゅんとする。
「…………まぁ、私もあなたとの関係を曖昧なままにしてて、ちゃんと自分の気持ちを伝えなかったのも悪かったし……」
「じゃあ、許してくれる?」
ぱっと顔を上げて、期待に瞳を輝かせながら私を見つめるコウヤに、私は、即答しそうな気持ちをぐっと堪えた。
「……それとこれとは話が別。
あなたに何かあったんじゃないかって、本当に心配したんだから」
「俺のこと、そんなに心配だった?」
コウヤの瞳が嬉々として輝く。
今、尻尾があれば、激しく左右に振っていそうだ。
「そんな嬉しそうに言わないでよっ」
「ごめん、つい……でも」
隣を歩いていたコウヤが突然、足を止めると、
感極まった表情で私を抱き締める。
「ファムに会えて、本当に嬉しい。
ずっと会いたかった……!」
「ちょ、ちょっと、人に見られちゃうわよ」
周囲に人気はなかったものの、住宅街なのでいつ人に見られるか分からない。
それでも私の抵抗も虚しく、コウヤがキツく私を抱き締める。
その温もりとコウヤの匂いに包まれて、私は、ふぅと安堵のため息を漏らした。
(まぁ、いいか。
コウヤが無事にこうして帰ってきてくれたんだから)
「…………おかえり、コウヤ」
私は、そっとコウヤの背中に腕を回した。
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