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【本編】

欲求不満?[※R18]

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「あら、今度はどうしたの。
 そんな欲求不満みたいな顔して。
 行方不明になってた彼氏、無事に見つかったんでしょう?」

会社のお昼休みに一人でお弁当を食べていると、
伊藤さんがからかうような表情で私に話しかけてきた。
手には、外で買って来たであろうコンビニの袋を持っている。

「……え、そんな顔してます? 私」

思わず私は、自分の頬に手を当てた。

「してるしてる。
 ……ってのは、冗談で、彼氏が戻って来たって聞いた割には、浮かない顔してるから」

伊藤さんは、私の向かいの席に腰を下ろすと、
コンビニの袋から取り出したサンドイッチを食べ始めた。

「何、喧嘩でもした?」

「喧嘩……は、してない、と思うんですけど…………」

私は、大きなため息を零して、持っていた箸を置いた。
コウヤが家に戻って来て、前と同じ平穏な日常が戻って来ていた。
でも、未だに私は、コウヤに自分の気持ちを伝えられていない。
その所為かどうかは分からないが、何故かコウヤの態度が今までと違う。
よそよそしいというか、私から少し距離を置いているように感じるのだ。

というのも、夜、いつものように私とコウヤは、一緒のベッドで眠っているのだが、
コウヤは、私を優しく服の上から抱擁するだけで、それ以上の行為を求めてこない。
時折、そっと私の額や頬に口付けることはあっても、己の熱情をぶつけるような激しい口付けや、身体の芯が熱くなるような愛撫もない。
だからと言って、私から求めるのも恥ずかしくて、結局、何も言えないままでいる。

(これじゃあ、本当に私が欲求不満みたいじゃない……)

伊藤さんは、私がまだ何も説明していないのに、何かを悟ったような顔でにやりと笑った。

「……ははぁん、倦怠期ってやつね。
 たまには違う体位やプレイでもして楽しんでみたら?」

「ぷ、プレイって……! そういう話では……」

「いい?
 性の不一致はね、離婚する立派な理由になるのよ」

「いや、私たち、結婚してないですけど……」

「だからよ。
 今のうちに、お互いの趣味嗜好が合っているのか、しっかり確かめなきゃ。
 結婚してから、やっぱり何か違ってたわ……なんてなったら遅いのよ。
 愛さえあればプラトニックでもいい、なんてのは幻想よ。少女漫画じゃないんだから。
 愛とSEXは、表裏一体。コミュニケーションツールの1つでもあるのよ。
 女からそういう話をするのが恥ずかしいって気持ちは分かるけど、だからって自分の幸せを諦めても良いの? いいえ、よくないわ。
 女にだってSEXを求める権利があるんだから! 諦めちゃダメよ!!」

「いえ、だから、そういう話ではないんですけど……」

私がいくら否定しても、どうやら伊藤さんは、私が恥ずかしがっているだけだと思っているようだった。
そのあと、お昼休みが終わるまで私は、伊藤さんから延々とSEX談義を語られることになった。
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