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抑え込み
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95 抑え込み
ギルドを出て公衆浴場へ。
フェルに今日はゆっくりお湯に浸かりたいと言って、待ち合わせの時間をいつもより遅くしてもらった。
油の匂いがする体を念入りに洗い、湯船に入って腕や足をマッサージする。
一度湯船から上がったら体を冷ましてもう一度入る。
それを何度か繰り返して今日の疲れを抜いた。
家に帰ったらすぐ寝ちゃいそうだよ。
明日はフェル何時に出るんだろ。
前と同じかな?
風呂から上がって入り口に行くとちょうどフェルも上がって来たところだった。
洗濯をしつつ、フェルの髪を乾かす。
「明日はフェルは何時に出るの?」
「それが、明日は早いのだ。7時にギルド集合だからな」
「だったら朝ごはん食べてる暇ないかもね。なんか作るから途中で食べて」
「それだとケイが大変ではないか?休みの日だからゆっくり寝てても良いのだぞ」
「今日はもう帰ったらすぐ寝ちゃおうと思ってるから、それに多分いつもの習慣で目が覚めちゃう。朝は一緒に走りには行けないと思うから、ラウルさんのところでタマゴを買って来て明日は6個でいいよ」
「タマゴ6個だな。承知した。マジックバッグは今回必要ないからな。黒狼が持っているから、私はあのカバンだけでいい」
「わかった。でもポーションは忘れず持っていってね。割れてもいいからカバンに入れて多めに持っていってよ」
心配する僕の顔を見て、フェルは優しく笑った。
「わかった。まあ心配することはない。あの者たちはかなりの実力者だからな」
オイゲンさんはAランクだし、黒狼の人たちも僕なんか比べ物にならないくらい強い。よっぽどのことがない限り大丈夫だろう。そのよっぽどのことになることさえも少ない気がする。
フェルは少し素振りをしてから寝ると言って、テントのそばで素振りを始めた。
なんか前にもこんなことあったよな。外壁の前で野宿してた時だっけ。
その素振りの音を聞いていたらいつの間にか眠っていた。
朝、何かいい香りがすると思いながら目を覚ますと僕はフェルの胸に抱かれていた。フェルはまだ寝ているようだ。何があった?
少しずつ体を動かしてフェルから距離を取ろうとするけれど。ぎゅっとフェルに押さえつけられて身動きが取れなくなる。
抑え込みか。
そりゃそうだよな。僕の筋力でフェルに勝てるわけがないんだもの。
左手の行き場所がない。腕を浮かせているのにも疲れて来て優しくフェルの背中を抱いた。フェルのしなやかな髪の毛が少し指先に触れる。その感触が気持ちいい。
このままもう一度眠ってしまいたいと思うけど、これではダメだとフェルを起こす。
「フェル、そろそろ起きないと。集合時間に間に合わなくなっちゃう」
フェルの腕にさらに力が入って僕の顔はフェルの胸に埋まってしまう。
やばい。気持ち良すぎる。
息が苦しくなって顔を左右に動かすと、フェルの肩がピクッと動いてフェルが目を覚ました。
ようやく腕の力が抜けて、よじ登るように枕の方に体を動かす。
「お、おはよう。ケイ」
「おはよう。フェル。フェルはゆっくりしてていいけど、僕はもう朝ごはんを作らないと。お弁当もちゃんと用意するからね」
暖房の魔道具をつけて着替えをする。僕の顔も赤かったけど、フェルの顔も赤かった。
まだ外はうす暗いけどご飯を炊き始めた。
朝の空気が肌を指す。
外套を羽織って朝ごはんの準備を始める。
昨日残ったホーンラビットの肉を全部唐揚げにしてしまう。朝ごはんにみんなで食べればいいだろう。それだけじゃ寂しいかと思い、野菜の浅漬けを添えた。
お弁当箱に入りきらない唐揚げはおにぎりの包み紙に包んだ。
フェルがタマゴを買いに市場に向かった。フェルが好きなケチャップを添えてオムレツを作ってあげよう。
どうか無事に帰って来ますように。
残った油でじゃがいもを素揚げして塩を振る。フライドポテトだ。野菜を弁当箱に仕切りを作るように詰めて、デザートはオレンジを入れた。
果実水を作って水筒に入れる。水筒の中身は凍るギリギリまで冷やしておいた。
きっと昼までは冷たいままだろう。
朝ごはん用にシャケおにぎりを大量に握る。
フェルの昼ごはんの分は梅と、ふりかけ、それから焼きおにぎり。そのおにぎりを包み紙で包んだ頃にフェルが戻って来た。
フェルがこの間絶賛していた具入りのオムレツを作って、ケチャップでハートマークを書いた。
書いたら急に恥ずかしくなってきたので慌ててケチャップを重ねて塗ってそれを消した。
フェルが装備を整えて出てくる。
僕のショルダーバッグに朝ごはんを入れて、フェルの昼のお弁当と水筒はフェルに直接渡す。フェルはそれを大切そうにカバンにしまった。
この前作った中級ポーションを3本、フェルのカバンに入れさせて、朝食が入ったショルダーバッグを渡す。
装備をきちんとつけたフェルは朝の光でとても凛々しく綺麗に見えた。
「行ってくる」
そう言ってフェルがギルドに走っていった。
間に合った。
一緒にお茶を飲む時間もなかったよ。
大きめの保冷庫があればもっと食材を保存しておいていけるんだけどな。
午前中は保存食でも作ろうかな。作り置きの副菜とか。ああ、でも先に市場に行かないとね。
ギルドを出て公衆浴場へ。
フェルに今日はゆっくりお湯に浸かりたいと言って、待ち合わせの時間をいつもより遅くしてもらった。
油の匂いがする体を念入りに洗い、湯船に入って腕や足をマッサージする。
一度湯船から上がったら体を冷ましてもう一度入る。
それを何度か繰り返して今日の疲れを抜いた。
家に帰ったらすぐ寝ちゃいそうだよ。
明日はフェル何時に出るんだろ。
前と同じかな?
風呂から上がって入り口に行くとちょうどフェルも上がって来たところだった。
洗濯をしつつ、フェルの髪を乾かす。
「明日はフェルは何時に出るの?」
「それが、明日は早いのだ。7時にギルド集合だからな」
「だったら朝ごはん食べてる暇ないかもね。なんか作るから途中で食べて」
「それだとケイが大変ではないか?休みの日だからゆっくり寝てても良いのだぞ」
「今日はもう帰ったらすぐ寝ちゃおうと思ってるから、それに多分いつもの習慣で目が覚めちゃう。朝は一緒に走りには行けないと思うから、ラウルさんのところでタマゴを買って来て明日は6個でいいよ」
「タマゴ6個だな。承知した。マジックバッグは今回必要ないからな。黒狼が持っているから、私はあのカバンだけでいい」
「わかった。でもポーションは忘れず持っていってね。割れてもいいからカバンに入れて多めに持っていってよ」
心配する僕の顔を見て、フェルは優しく笑った。
「わかった。まあ心配することはない。あの者たちはかなりの実力者だからな」
オイゲンさんはAランクだし、黒狼の人たちも僕なんか比べ物にならないくらい強い。よっぽどのことがない限り大丈夫だろう。そのよっぽどのことになることさえも少ない気がする。
フェルは少し素振りをしてから寝ると言って、テントのそばで素振りを始めた。
なんか前にもこんなことあったよな。外壁の前で野宿してた時だっけ。
その素振りの音を聞いていたらいつの間にか眠っていた。
朝、何かいい香りがすると思いながら目を覚ますと僕はフェルの胸に抱かれていた。フェルはまだ寝ているようだ。何があった?
少しずつ体を動かしてフェルから距離を取ろうとするけれど。ぎゅっとフェルに押さえつけられて身動きが取れなくなる。
抑え込みか。
そりゃそうだよな。僕の筋力でフェルに勝てるわけがないんだもの。
左手の行き場所がない。腕を浮かせているのにも疲れて来て優しくフェルの背中を抱いた。フェルのしなやかな髪の毛が少し指先に触れる。その感触が気持ちいい。
このままもう一度眠ってしまいたいと思うけど、これではダメだとフェルを起こす。
「フェル、そろそろ起きないと。集合時間に間に合わなくなっちゃう」
フェルの腕にさらに力が入って僕の顔はフェルの胸に埋まってしまう。
やばい。気持ち良すぎる。
息が苦しくなって顔を左右に動かすと、フェルの肩がピクッと動いてフェルが目を覚ました。
ようやく腕の力が抜けて、よじ登るように枕の方に体を動かす。
「お、おはよう。ケイ」
「おはよう。フェル。フェルはゆっくりしてていいけど、僕はもう朝ごはんを作らないと。お弁当もちゃんと用意するからね」
暖房の魔道具をつけて着替えをする。僕の顔も赤かったけど、フェルの顔も赤かった。
まだ外はうす暗いけどご飯を炊き始めた。
朝の空気が肌を指す。
外套を羽織って朝ごはんの準備を始める。
昨日残ったホーンラビットの肉を全部唐揚げにしてしまう。朝ごはんにみんなで食べればいいだろう。それだけじゃ寂しいかと思い、野菜の浅漬けを添えた。
お弁当箱に入りきらない唐揚げはおにぎりの包み紙に包んだ。
フェルがタマゴを買いに市場に向かった。フェルが好きなケチャップを添えてオムレツを作ってあげよう。
どうか無事に帰って来ますように。
残った油でじゃがいもを素揚げして塩を振る。フライドポテトだ。野菜を弁当箱に仕切りを作るように詰めて、デザートはオレンジを入れた。
果実水を作って水筒に入れる。水筒の中身は凍るギリギリまで冷やしておいた。
きっと昼までは冷たいままだろう。
朝ごはん用にシャケおにぎりを大量に握る。
フェルの昼ごはんの分は梅と、ふりかけ、それから焼きおにぎり。そのおにぎりを包み紙で包んだ頃にフェルが戻って来た。
フェルがこの間絶賛していた具入りのオムレツを作って、ケチャップでハートマークを書いた。
書いたら急に恥ずかしくなってきたので慌ててケチャップを重ねて塗ってそれを消した。
フェルが装備を整えて出てくる。
僕のショルダーバッグに朝ごはんを入れて、フェルの昼のお弁当と水筒はフェルに直接渡す。フェルはそれを大切そうにカバンにしまった。
この前作った中級ポーションを3本、フェルのカバンに入れさせて、朝食が入ったショルダーバッグを渡す。
装備をきちんとつけたフェルは朝の光でとても凛々しく綺麗に見えた。
「行ってくる」
そう言ってフェルがギルドに走っていった。
間に合った。
一緒にお茶を飲む時間もなかったよ。
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