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竜騎士になったよ

フィリックスとの

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部屋中に香ばしい美味しそうな匂いがしている。

フィリックスが竜騎士の携帯食料を用意してくれた。特上の肉のシチュー、さすが王宮の竜騎士は持ってるものが違うのだな。

「美味そうだな」

フィリックスが俺の作ったポテトグラタンを見て感嘆の声を上げた。イモだけはふんだんにあるし、ヤギのミルクで作ったベシャメルソースも、とっておきのチーズもふんだんに使った。頑張っちゃったよ俺。

「明日からここでは料理できないし、オーブンもキッチンもしっかり使ってやりたかったんだ…」

長老やジジイと作った俺の城。あとでピカピカにしてやろうと思ってしんみりしていたら、

「後で一緒に片付けと掃除をしよう。俺はここの主を連れ去るんだ、この部屋への挨拶がわりにピカピカにしてやるよ」

まさしく今思っていた事をフィリックスが言ってくれて、俺の目の前が滲んだ。

「シン、早く食わせてくれよ、腹へった」
「ああ、そうだった」

俺は小さなテーブルにグラタンを置いて取り分ける。

「あ、先に食べといて」
「シン?」

俺は席を立つと寝室へ繋がるドアを開けた。両開きの大きなドアをわざと作ってある。

寝室の半分はある超特大のベッド。そこにはラースが横たわっていた。

「…ラース?何故、部屋に…?」

フィリックスが怪訝な表情になる。

「え?ラースと俺は一緒に寝てるんだよ。ラース、ごはんだよ」

俺はキッチンから大きな桶を持ってきた。中には野菜とマッシュしたポテト、もうひとつ作っておいた大きなグラタンが入っている。それをラースの前に置くと嬉しそうに食べる。

「いつもラースと一緒なのか?」
「うん。ずーっと24時間一緒だよ…変?」

フィリックスは俺達を見て、少し考え込んだ。

「変ではない…ただ、王宮でそれができるかどうかはわからないぞ…」
「え、やだ!ラースと一緒じゃないと無理!なあ、俺とラースを離さないで」

うーん、とフィリックスは腕を組んでため息をつく。

「一応、竜騎士団長に話をしてやるよ…だが百%通るかどうかはわからないからそれは承知してくれ」
「ありがと!」

3人で楽しく夕食を取り、風呂にも入って寝るだけとなる。フィリックスは料理が上手だってすっごく褒めてくれて嬉しくなる。

「ラース、いこう」
「シン?」

俺がラースを連れて外へ出ようとすると、フィリックスが不審げに尋ねる。

「俺は外でラースと寝るよ。フィリックスは俺のベッドで寝て」
「ちょっ…そんな事ができるわけないだろう!」
「え?お客様なんだからいいよ」

俺がそう言うと、フィリックスが俺の方へつかつかと近づいていきなり俺を抱き上げた。

「えっ!?えっ?」
「いいから!ラース、お前も来い」

フィリックスは俺を抱いたまま寝室へ入り、俺をベッドへ降ろすと自身も隣に寝転がった。

「こんなに広いベッドなんだから皆で寝ればいい、そもそもお前のだ。好意は有難いが俺がここに来た意味がないだろ?」

フィリックスが微笑みながらうつ伏せになって俺を見上げるようにシーツに頬をつけた。ラースも俺の横で寝転がって川の字になる。

「ここに来た意味…?」

俺は10センチ程の至近距離にいるフィリックスの顔を見て尋ねる。

フィリックスが少し頭を上げ、ゆっくり俺の鼻に近づいてきた。



そして。



俺の唇に、そっとフィリックスの唇が重なる。


「ーーーーー!…」

え、これってキ、ス?ええっ!男同士なのに!

柔らかいフィリックスの唇。なんかいい匂いもするし、あぁ、クラクラしてきた…。


ビックリして固まる俺に、キスをしたフィリックスはふっ、と微笑む。

「もっとシンと仲良くなりたいってこと」
「な…フィリ…!」

言いかけた俺の唇を優しく人差し指でなぞる。

「…シンが可愛いから仕方ないだろ」

そう囁いたあと、数秒見つめあって甘い時間が過ぎる。男同士なのに、ドキドキが止まらない。

ふと、フィリックスの眉間が険しくなった。俺の頭の辺りを微笑んだまま見て、固まっている。

「…え?なに?後ろがどうしーーー」

俺が後ろを振り向くと、そこには俺の肩越しに横になったゼロ距離のラースが瞬きもせず、大きな蒼い目でフィリックスをガン見していた。

「…………保護者怖ぇ…」

フィリックスが目を泳がせて言った。




明日はついに王宮へと出発する。

俺の新しい生活が始まるんだ。不安だけど、ラースが一緒だからきっと大丈夫。























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