異世界に転生したら竜騎士たちに愛されました

あいえだ

文字の大きさ
45 / 113
竜騎士になったよ

モンスター襲来

しおりを挟む
何?国王陛下が俺をベンと重ねるって?

俺はエリアスを見上げた。エリアスは俺の頬を撫でて額にキスをする。そのままエリアスの唇が鼻筋をなぞって俺の唇にたどり着いた。

「誰にも渡したくない…」

唇の上で囁くようにエリアスが呟く。

その時、幕の外で誰かの気配がして、呼び掛ける声がした。

「エリアス、大変だ。モンスターがこちらに向かっているらしいと」

来たのはフィリックスだった。

「なんだと?今までこんなところまで来たことはなかったのに…アンディのところへ行くぞ、シン来い!」

フィリックスとエリアスに本部の幕へと連れていかれる。アンディと数人のいかつい騎士団員が難しい表情をしていた。

「目撃情報によると、モンスターの出現地が王都に近いらしい。数は10匹ほどがこちらに向かっているようだ、こちらは陛下と観衆を守るのを優先する、竜騎士団は迎撃してほしい。演習は続ける、というか無理に移動するより騎士団全員がいるこの演習場のほうが安全だ」

アンディがエリアスにそう告げた。

「10匹…、すぐに出る…」
「騎士団のドラゴン隊をつけるか?モンスターの座標は…」
「どっちもいらん、邪魔だ。座標もカイザー号が探知する。アンディお前竜騎士だったろ?そんなことも忘れたか」
「ああ…そうだったな…悪い。頼む」

アンディが目を伏せた。

俺は二人に離れないように促されラース達のいる場所へと向かう。10匹ものモンスターを竜騎士5人で戦うということだよね…。
それってかなりの数じゃない?こないだ2人で3匹のモンスター相手に、ギリギリどころかフィリックスの応援で凌いだっていうのに!

歩きながらフィリックスが俺の右手を、エリアスが俺の左手をきゅっと握ってきた。二人に不安な顔をしていたのがバレたのかな。

「しっかり…頼んだぞ」

エリアスがそう言い、フィリックスも頷く。
今日は大丈夫だからとか、守るとかは言わないんだな。
前は守りたいと言ってくれてたのに、俺はもう、竜騎士として頼れる存在だと証明してくれてるのかな。

それって、めちゃくちゃ嬉しい!俺は不安が薄らいでいくのを感じた。あたたかくて大きな2人の手のひらを俺は握り返した。

すでにハムザとトゥルキは待機していて、いつでも出られる状態だった。俺たちもドラゴンに乗る。ラースは少しだけ緊張してるように見えるけど思ったより落ち着いていた。

「先に行くぞ、どうせお前らに追い抜かれるし」

ハムザとトゥルキはそう言って飛び去っていく。カイザー号が黒い翼を広げると、オリオン号、ヘラクレス号が離陸体勢に入る。ラースはヘラクレス号にまた乗ってきた。隣の空き地に待機していた俺達はそのまま静かに浮き上がり、3匹は演習場に降りる。これから出るついでにあのジェット離陸を陛下に見せるつもりなのか。

そしてやっぱり、ヘラクレス号に乗るラースは観衆に笑われた。ドラゴンに乗るドラゴンなんて見たこともないからだろうな。

すると、ヘラクレス号が振り返って首を伸ばし、ラースに顔をすりつけて頬にキスをしたように見えた。
観衆がそれを見て、キャー!と声が上がる。ほのぼのした光景。
えっと、ヘラクレス号さん?今は緊張感あるときなんだけど!観客サービス?

ラースはけろっとした表情でされるがままだ。
お前らほんと大物だな!チキンは俺だけですか?

「カイザー?」
「オリオン号…?」

エリアスとフィリックスが乗っている2匹の様子に気づいて声をかけている。

張りつめた雰囲気と陽炎のような空気の揺らぎがドラゴンエース2匹の周りを覆い、ゴゴゴ、と音が轟いた。それは前世に映画で見た、戦闘機がエンジンをかけて離陸するようなのに似ている。

「カイザー号…敵の多さに滾るか…?武者震いしてるぞ、抑えられない闘争心に火がついたか…」

エリアスが口角を上げてカイザー号の首を軽く叩く。カイザー号の体から蒸気が出ていた。

「オリオン号…お前も燃えてるな…これから来る敵の多さにやる気が出たか?」

フィリックスも不敵な笑みを浮かべている。


俺は知ってる。それ、絶対違うから。

くわあっ!と2匹がヘラクレス号睨んでるもん!その視線に何故竜騎士2人は気づいてないの?!怖い怖い怖い!

俺のドラゴンになった以上、ラースとヘラクレス号の距離が縮まるというのは仕方ないとして許してよ~!

試しに俺はラースとシンクロしてみた。すると。

「調子に乗るな!ヘラクレス号…お前はシンのドラゴンになったに過ぎない。ラースはお前には渡さん!」

カイザー号がヘラクレス号にそう言ったのが聞こえてきた。エリアース、今すぐシンクロしてくださーい!あなたのドラゴン嫉妬に激おこ!

「ヘラクレス号、ラースにそれ以上手を出すな!カイザー号、今夜はモンスターを一番多く倒した者がラースと2匹で眠るというのはどうだ?」

オリオン号が声をかけた。

「ほお、そいつはいい…モンスターを倒したくてウズウズしてきた。滾るぜ…ヘラクレス号、それでいいな?」

カイザー号がヘラクレス号にそう言う。

「俺は構わない。まあ、せいぜい頑張るといい。俺に敵うならばな。」

ヘラクレス号が2匹を挑発する。
怖すぎる3匹のチートドラゴン。

俺は振り返ってラースを見ると…全くこやつは!
大きな蒼い瞳を何度か瞬きをしながら無言のままだ。

ラースお前…。もう、存在が罪だな…。

「いくぜドラゴンども!」

エリアスの掛け声でカイザー号がジェット噴射MAXになり、オリオン号、ヘラクレス号も離陸体勢に入る。

ドドドン!

轟音を響かせ、助走なしで3匹が砂煙を上げて一斉に高速で飛び立つ。

演習場は大歓声に包まれた。




































しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない

北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。 ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。 四歳である今はまだ従者ではない。 死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった?? 十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。 こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう! そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!? クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。

お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!

MEIKO
BL
 本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。  僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!  「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」  知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!  だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?  ※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

さいはて旅行社
BL
双子の姉が失踪した。 そのせいで、弟である俺が騎士学校を休学して、姉の通っている貴族学校に姉として通うことになってしまった。 姉は男子の制服を着ていたため、服装に違和感はない。 だが、姉は男装の麗人として女子生徒に恐ろしいほど大人気だった。 その女子生徒たちは今、何も知らずに俺を囲んでいる。 女性に囲まれて嬉しい、わけもなく、彼女たちの理想の王子様像を演技しなければならない上に、男性が女子寮の部屋に一歩入っただけでも騒ぎになる貴族学校。 もしこの事実がバレたら退学ぐらいで済むわけがない。。。 周辺国家の情勢がキナ臭くなっていくなかで、俺は双子の姉が戻って来るまで、協力してくれる仲間たちに笑われながらでも、無事にバレずに女子生徒たちの理想の王子様像を演じ切れるのか? 侯爵家の命令でそんなことまでやらないといけない自分を救ってくれるヒロインでもヒーローでも現れるのか?

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

処理中です...