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リアン

リアンのターン

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知ってた。ルークが。

ジェットもそんな手紙を遺していたなんて、それもギールと一緒になれという。

ジェットが、俺の恋人だったことをルークは気づいていたんだ。
それなのに、何故俺をファザコンだと言って…。

ジェットは脳梗塞だった。いつ爆発するかわからない頭の血栓を抱えて陸に降りた。
そのまま船にいても、自分の判断を間違ってしまうと船員みんなの命にもかかわるし、迷惑をかけてしまうと危惧した上での決断だった。

若い頃から海で生きていたジェットには陸に上がるなんて辛すぎただろう。一番近くにいた俺はジェットが一人で部屋で荒れるのを知っていたんだ。俺は彼の力になりたかった。

10年以上、俺の父親として育ててはくれたけれど、ジェットが俺を拾ったのは自分の船を持ち、船長になりたての20歳過ぎくらいの時だ。結婚してないし子供もいないジェットの子育ては、スキンシップばりばりの溺愛だった。でも性的なことは全くなかった。抱き締めたり、髪を撫でたりするくらい。
その境界線を越えたのは俺が思春期を終えた頃。船から降りる夜、俺は海から離れることを泣いたジェットに体を開いた。
それまでジェットに尊敬と淡い恋心を抱いていた俺は決して報われないと思っていたから幸せだった。

陸に上がったジェットは自分の弱さを埋めるように俺を求めた。俺の体を抱くことで若さと健康を共有したかったのかもしれない。俺は構わないし、わかっていた。それに、俺は誰にもジェットを渡したくない、俺だけが世界で一番大切な存在になりたかったんだ。

ジェットは船長の座を信頼している右腕ギールに譲って、誰も知らない、まだ行ったことのないこの国で新しい生活を始めることに決めて、俺は迷わずジェットといる生活を選んだ。

ジェットとの生活は楽しくて、誰にも気兼ねせず、朝から晩まで転がって愛し合う日もあったんだ。誰にも邪魔されない、二人だけの毎日だった。ジェットに俺の全てをかけて甘えて頼って笑わせた。人生の楽しくて明るい部分だけを見せてあげたかった。

でも、いきなり別れはやってきた。別れの言葉もなかった。
買い出しに出掛けていた俺が帰宅したら既にジェットは冷たくなっていた。

その後、俺はしばらく灰のような生活を送って死のうかとも思ったけれど、俺の引き出しから見つけたジェットの遺書には
「もし後追いしたらガチで怒る。生きろ忘れろ。」
…俺は死ぬことを許してもらえなかった。
忘れることはできないけど、生きることはできる。と思って過ごしてきたんだ。

ルークを好きになるまでは、ジェットが恋しくて仕方なかった。
今も正直、恋しくないわけじゃない。

だけど俺は先に進みたい。
ルークと一緒に。

「ルーク。ごめん。」

俺はルークにぽそっと詫びた。 

「…何を…謝る?」

ルークが俺に尋ねた。

「俺は夢でいつも彼が恋しくて泣いてたんだと思う。
…ごめんね。俺は…。ごめん…。」

「…謝ることはないだろう?リアン。」

ルークが俺の目をまっすぐ見て凛とした声で言った。

え?

俺は目を見開いて驚いてルークを見た。


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