女泣村の夜・女王蜂の妖しく揺れる淫ら腰

糺ノ杜 胡瓜堂

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第二十四話 オス蜂の決心、相反する二つの価値観 ~進歩的な都会の若者の戸惑いと期待~

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 「ああっ、嬉しいわ!幸介さんっ・・・明日からはくじ引きで決まった順番で、代わる代わる村の女達が夜這いに来ると思うけど、娘の凛子を真っ先に孕ませてちょうだいねっ!絶対よ!・・・この蜂ヶ谷家を継ぐのは私の血筋・・・・きっとよ?幸介さん」


 志津との衝撃的な一夜を過ごした翌朝、幸介はいつも通りに菊に起こされ、身支度を済ませて食堂へ足を運んだが、何の変哲もない食堂の景色さえ彼にはなにか別世界のように見えた。

 目の前で澄ました顔で給仕をしている二十代の綺麗な女中や、三十代とおぼしきまだ艶っぽさを残したお尻の大きな飯炊き女も、もしかしたら今夜コッソリと自分の寝床に忍んで来るのかと思うと、彼の心臓は早鐘のように高鳴り、陰茎にジンワリと血液が集中してくる・・・。

 幸介に対しても普段通りに接してくれる彼女達も一皮剥いたその中身は、火照った柔肌を自らまさぐり、男のペ〇スを欲して夜毎自慰に耽っているのだと想像すると、彼の心は千々ちぢに乱れるのだった。


 幸介は努めて彼女たちの方を見ないようにして慌てて飯をかき込む。

 ・・・ふと食卓を見ると、いつもの良い香りを漂わせる緑茶の隣に、小さな湯飲み茶碗に何かの煎じ薬のようなものが淹れて置かれていた。

 そのほんのりと薬臭い香りはおそらく漢方・・・それも強精作用のある漢方薬かもしれないと幸介は想像する。
 彼は思い切って給仕の若い娘に聞いてみた。

 「あの・・・これは?・・・なにか煎じ薬のようですけど・・・」

 「えっ、ああ・・それは奥様から幸介さんに召し上がっていただくようにと・・・なんでも最近、小田切様もお疲れのようなので滋養のお薬とかで・・・」

 幸介はすぐにその意味を察した・・・これは今夜から「オス蜂」になる自分を「元気」にするために、志津が用意した強壮剤に違いない。

 「・・・ああ、わざわざ気を使っていただいて・・・あとで志津さんにお礼を言っておいてください」

 幸介は昨晩彼女に言われた「オス蜂」の役目を思い出し、複雑な気持ちになった。

 たとえそれが数百年続いていた村の「掟」だとしても、村の女達と次々と関係を結ぶ・・・そんな不道徳な事をしてよいものだろうか。
 村の女達はそれを心から受け入れているのだろうか・・・都会に生まれ、進歩的な価値観を持っていると自負していた彼自身も、いざとなると「貞操」という古い観念にとらわれ躊躇してしまう。

 ・・・そんな自分をやや自嘲気味に分析する幸介。


 その日一日をボンヤリとした頭のまま過ごし、役場の勤めを終えた幸介が蜂ヶ谷の屋敷に帰ると、そこにはいつもと変わらない風景が広がっていた。
 にこやかに出迎えてくれる女中頭の浜川セツ、明るくお喋りをしながらテキパキと給仕しをしてくれるダイニングの女中達。
 そして部屋の掃除から身の回りの世話までを甲斐甲斐しくこなしてくれる可憐な菊の姿・・・。


 幸介が夕食を食べ終わり、湯殿で湯船に浸かってウトウトとしていると、いつものように引き戸の向こうで菊の声がする。

 「幸介さん・・・お背中を流しますね・・・」

 「あっ、菊さんっ?・・・えっ、ええ・・・」

 ・・・ガラリッ・・・

 湯殿の引き戸が開き姿を現したのは、いつもの菊だった。
 小ぶりな乳首がツンと可愛らしく上を向いた形の良い乳房、雪のように白い肌、見事な蜂腰に巻かれたなんの変哲もない白い湯文字も、今の幸介には素晴らしく妖艶に見える。

 無言で幸介の背中を流してゆく菊に、幸介が声をかける。

 「・・・菊さん・・・志津さんから話は聞きました・・・」

 幸介にそう言われた菊はハッとしたように息を呑んだが、聞き取れないような小さな声で答える。

 「・・・幸介さん・・・ごめんなさい・・・・」

 彼女は志津に命ぜられて幸介の「試験」をしたことを後ろめたく思っているようであった。

 「いっ、いや・・・・菊さんは何も悪くないんです・・・何も・・・」

 「・・・でっ、でも・・・」

 「菊さんは志津さんに命ぜられてしただけでしょう・・・かえって僕の方こそ謝らないといけない・・・」

 「・・・幸介さん、そんなことっ・・・」

 「いくら主人の命令だからって好きでもない男と関係するなんて・・・昔ならいざ知らず、昭和のこの世の中では許されるはずがない、そうでしょう?それを僕は欲望に負けて・・・」

 しかし、菊の答えは意外なものだった。

 「幸介さん、本当に有難うございます・・・でも・・・でも、菊もこの「女泣村」の女ですから・・・幸介さん?この村はみんなで一つの家みたいなもの、昔から・・・そう、蜂の巣みたいに・・・・そ、それに菊は幸介さんのことをっ・・・」

 幸介は思わず振り返って、自分の背中にかかっている菊の手を握る!

 「・・・き、菊さんっ!・・・僕は・・・」

 「・・・ごっ、ごめんなさいっ・・・それでは私はこれで、お布団を敷いておきますねっ!」

 菊はハッとして幸介に握られた手を慌てて引っ込めると、逃げるように湯殿から飛び出していった。

 



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