女泣村の夜・女王蜂の妖しく揺れる淫ら腰

糺ノ杜 胡瓜堂

文字の大きさ
42 / 55

第四十ニ話 嵐の予感、突然の女中交代 ~幸介の前から姿を消した菊~

しおりを挟む
   



 「おはようございます、幸介様・・・わたくし小夜さよ・・・飯島 小夜と申します、今日からわたくしが幸介様の身の回りのお世話をさせて頂くことになりました、どうぞよろしくお願いいたします」

 今朝、幸介を起こしに来たのは、いつも見慣れた菊ではなかった。

 歳は二十七くらいだろうか、幸介の「夜のお勤め」・・・つまり「オス蜂」として、順に村の女を抱いて彼女達にオスの「命の素」を注ぐ任務の際にも一度も会ったことはなかった初対面の女中である。

 小夜と名乗ったその女中も細面の美しい女だったが、あまりに突然のことに幸介は面食らった。

 ・・・自分の世話係の女中の突然の交代!

 昨晩菊は、そのことについて湯殿でも何も幸介には話さなかった。
 まさに寝耳に水の出来事である。

 「あっ?えっ、ええっ・・・よ、よろしくお願いします・・・あ、あの、菊さんは?菊さんはどうされたんでしょうか?どこか体の具合でも悪いのですか?」

 幸介は菊の代わりだという女中の小夜に食って掛かる勢いで問いかける。


 「えっ?わ、私は存じ上げません・・・た、ただ今朝、急に奥様に言われただけで・・・詳しいことは・・・」

 「ああ、そうですよね、申し訳ございません・・・それで、今朝は菊さんは見かけましたか?」

 「い、いえ・・・私は菊さんの姿は見ておりませんが・・・あ、あの、私ではお気に召しませんでしょうか・・・」

 明らかに失望の表情を浮かべている幸介を見て、小夜という女中は今にも泣きそうな顔をする。

 「い、いやっ・・・決してそんな訳ではっ、ス、スミマセン小夜さん、不快な思いをさせてしまって・・・ただ、昨晩、菊さんと話した時も、そんな話は全くでなかったものですから・・・僕も驚いてしまって」

 「・・・ええ、私も今朝、奥様に急に言われましたの・・・菊さん、一体どうしたのでしょうね?昨晩は女中部屋にいたのは見ておりますが・・・・」

 幸介は小夜にもっと菊の消息を聞きたかったが、出勤の時間が迫ってきたので、仕方なくダイニングに行き朝食を食い、役場へと出勤した。


 その日、幸介は一日仕事も手につかず、ボーッと菊の事を考えていた。

 ・・・菊さん、一体どうしたんだろう?僕の世話係りを交代したとしても、菊さんなら事前に僕に挨拶くらいはするだろうし、あの小夜さんも今朝になって、志津さんから言われたと言っていたな、とすると急病か何かなんだろうか・・・心配だな、いずれにしても仕事が終わって帰ったら志津さんに聞いてみよう。

 幸介は、午後五時の終業のベルが鳴ると、村の西の端にある役場からほとんど駆け足で丘を下り、東の山の中腹にそびえ立つ蜂ヶ谷家へと向かった。


 「・・・あら、お帰りなさいまし、幸介さん、今日は随分とお早いのねぇ」

 玄関でなにか女中に指示を与えていた女中頭の浜川セツが、幸介に気づいて丁寧に頭を下げる。

 「ハアッ、ハアッ、ああセツさん!いい所で会った・・・あの、菊さんは・・・菊さんはいますか?」

 「・・・はあ、菊でございますか・・・」

 「ええ、そうです!ずっと僕の世話をしてくれていた菊さんです、今朝から急に別の方に交代になったそうで・・・菊さんに何かあったのでしょうか?急病とか・・・・」

 セツはほんの一瞬驚いたような表情をみせたが、すぐにいつもの柔らかい笑みを浮かべて静かに答える。

 「・・・いえ、病気ではございませんわ、実は、菊は少し用を言いつけられまして・・・今朝から町の方に出ておりますの・・・」

 「町の方に・・・ですか?随分と突然のようですが、それは一体どんな用なんでしょう?若い女中さんが行かなきゃならない用なんて・・・」

 「そ、それはわたくしも存じ上げませんわ、奥様直々に決められたことですので・・・あ、あの、幸介さん、菊と交代した小夜はお気に召しませんでしたか?よく気が利く良い娘ですわよ」

 「いえ・・・小夜さんがどうとか、そういうわけではないのですが・・・」

 努めてにこやかに対応しているらしいセツであったが、勘のいい幸介は彼女が何か自分に隠し事をしているのだと直感した。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

処理中です...