【短編エッセイ】 紙魚の海

糺ノ杜 胡瓜堂

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第三話 「浅間山噴火の復興事業 ~生き残った93人を全て家族に」

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 我々日本人は昔から、地震や台風などの自然災害と隣り合わせに生きてきました。

 特に「火山列島」である日本は地震と火山の噴火等の災害は避けられない宿命と言えます。

 現在でも、東日本大震災の復興事業は続いていおり、意外と知られていないことですが我々が納める所得税にも東日本大震災の復興予算に充てる為の2.1%の「復興特別所得税」がプラスされています(法人税にもあります)。


 江戸時代、下級武士(町人という説も)から驚異の出世を遂げて、南町奉行まで昇り詰めた秀才、根岸鎮衛(ねぎしやすもり)が30年余にわたって書き記した随筆「耳嚢みみぶくろ」にも災害に関する記載があります。

 それは、天明三年(1783年)の浅間山大噴火。

 今でも、その時の溶岩流出の跡である群馬県吾妻郡嬬恋村の「鬼押出し」は有名ですね。
 私も昔行ったことがありますが、岩だらけの広大な土地が広がる光景は自然の脅威を感じさせるものでした。
 まさに「日本のポンペイ」といった感じでした・・・。


 その天明三年の浅間山の大噴火と、「耳嚢」の著者、根岸鎮衛は実は深い関係があります。

 鎮衛は、浅間山復興事業の検分使に任命され、噴火の二か月後に現地入りをして実際の被害の様子や復興事業の進捗状況をその目で見ているのです。

 現在と違い、昔は「地震保険」もないだろうし、自然災害が起きても誰も助けてくれないんだろうなぁ・・という印象がありますが、実は浅間山噴火では幕府や代官等が手厚い被災者救済、復興事業を行っていたりします。

 「耳嚢」巻之二「蒲原かんばら村異変之節奇特之取計致とりはからいいたし候者の事」にはこういう記述があります。

 上州吾妻群蒲原村は浅間山の麓の村で、ちょうど溶岩流が集中した場所でもあり、最も被害の大きかった村でした。
 人口300人余りの村人の中でかろうじて生き残った者、老人や子供も含めて93人!

 それ以外の村人は、溶岩流や土石流に飲み込まれたり押し流されたりして犠牲になったと言います。

 家も畑も全て埋まってしまい、着の身着のままで避難した93人は途方に暮れていたのですが、同郡の大笹村長左衛門、干俣村小兵衛、大戸村安左衛門という三人がリーダーとなって、この93人を保護しました。
 93人をそれぞれ自宅に引き取り、浅間山の噴火が収まってくると二棟の仮設住宅を作り、食料援助もしたとか・・・。

 幕府を通じて代官に指示があり「公的支援」も始まりました。

 その3人のリーダーが前代未聞の工夫をします。

 「平時には家柄や格式などもあっただろうが、このような大災害に遭って奇跡的に生き残った93人は本当に血の繋がった一族同様に思わなくてはならない」

 そうして、93人が親族契約をして、夫を失った女性には妻を流された男性、子を失った老人には親の無い者をそれぞれ世話をして、残らず「家族」としたそうです。

 根岸鎮衛も、「誠に変に遭ひての取り計ひは面白き事也」と感想を書いています。

 現在と違い「家族」が生きてゆく上での「最小ユニット」だったこと(特に地方では)を考えると、このユニークなアイディア、なかなかスゴい事だと思います・・・・・。

 余談ですが、この時の浅間山の大噴火は江戸でも地震が観測されて、火山灰が大量に降ったと言います。

 そんな時に「コンニャク」が体に入った灰を排出してくれる、という説が広まって買い求める人が殺到し、一気に品薄になったとか・・・・現在の「マスク」みたいですね。

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