12 / 100
第十二話 「卒塔婆、化して人に食物を与ふる事」
しおりを挟む「片仮名本・因果物語」義雲・雲歩 編 寛文元(1661)年開板
「卒塔婆、化して人に食物を与ふる事」
上州(現在の群馬県)加久保村に内匠という人がいた。
武田勢と上杉勢が戦った碓氷の合戦に参加し、奮戦したものの体に多数の傷を負い倒れてしまう。
戦が終わると、深手を負って動けず口も聞けない内匠は、戦死者と間違われて捨て置かれてしまった。
彼の家では、父が戦死したものと思った息子たちが弔いも済ませた。
その一周忌の供養をしている最中に、どこからともなく若いお坊さんがやってきて、
「内匠という人は、戦場の大木の空(空洞となった部分)で生きておられます、迎えに行ってあげてください、確かに伝えましたぞ・・・・」
そう固く言い届けて去っていった。
息子たちが聞きつけてやってきたが、お坊さんは既にいなくなっていた。
そのような事があって、息子たちが戦場となった山中をあちこちと探すと、木の空の中に大怪我をしているもののまだ息がある父を発見した。
息子たちは死んだものと思っていた父が生きていたことに喜び、急いで焚火を起こし介抱をした。
ようやく喋れるようになった父が言うには、
「今まで、七人のお坊さんが毎日交代でやってきて、私に食物や湯水を運んでくれていたのだ、その内の一人のお坊さんは鼻が欠けていた」
という事だった。
息子たちが世にも不思議な事・・・と思い戦場の跡を見ると、合戦の戦死者を悼む七本の卒塔婆が建っていた。
その一本の卒塔婆は先端が欠けているものだった。
「今まで父を助けてくれた七人のお坊さんというのはこの七本の卒塔婆に間違いない、鼻の欠けたお坊さんというのは、この欠け目のある卒塔婆の事だろう」
と、追善供養をしたという。
これは、この内匠という人の孫が私に語ったことで間違いのないことである。
本当に卒塔婆などは丁寧に造るべきだ、殊に霊前に備える仏具等はよくよく注意して備えるべきものである。
・・・・合戦の死者を悼むために建てられた卒塔婆が、僧に化身してまだ生きている人を助けたというお話。
因果とは、原因と結果という意味で、善い行いも悪い行いも必ず自分に返ってくる、という仏教の教え。
因果物語は、そういう仏教の教えを分かり易く説くためのお話が多いです。
言葉は悪いですが「お説教」っぽい話も多いです。
その内容はけっこうパターン化しているものも多いのですが、このお話なんかはオリジナリティのあるちょっと変わったお話でした。
なんとなく「傘地蔵」の話を思い出しました・・・・・。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
新しい家族は保護犬きーちゃん
ゆきむらさり
エッセイ・ノンフィクション
〔あらすじ〕📝初めて🐶保護犬ちゃんを迎え入れる我が家。
過去の哀しい実情のせいで人間不信で怯える保護犬きーちゃん。
初日から試行錯誤の日々と保護犬きーちゃんがもたらす至福の日々。
◇
🔶保護犬ちゃん達の過去・現在の実情の記述もあります🐾
🔶日々の些細な出来事を綴っています。現在進行形のお話となります🐾
🔶🐶挿絵画像入りです。
🔶拙いエッセイにもかかわらず、HOTランキングに入れて頂き(2025.7.1、最高位31位)ありがとうございます🙇♀️
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる