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第二十八話 「田沼時代と言えば賄賂」 ~その趣向を凝らし過ぎた贈答品合戦~
しおりを挟む松浦静山著「甲子夜話」
巻六「ニ八」「二九」
田沼(意次)氏の隆盛の頃は、諸家の贈答品は様々な趣向を凝らした。
中秋のお祝いに、島台、軽台等の進物を乗せる台などにも負けじ劣らじと各家が趣向を凝らす中に、ある家からの進物は小さな青竹籃に、活きのいい鱚が七、八尾ばかり、彩りに少しの菜をあしらい青柚一つが載せてあった。
その青柚は家彫萩薄の小刀で刺してあった。
この家彫りは実は、名匠後藤氏の彫った名品で、その値は数十金に当たるものなのだ。
また、ある家からの進物は、大変に大きな籠に鮪が二尾載せてあった。
この二つは、数ある進物の中でも類ないものとして面白がられたという。
田沼家に賄賂を贈ろうとする家の使いの者が、田沼氏は最近何がお好みか聞いたところ「最近は菖盆(鉢植え)を枕元に置いて鑑賞されています」と用人が答えると、ニ三日の間に、諸家から石菖(植物)の鉢が大小となく持ち込まれ、広い座敷に二間ほども隙間も無く並ぶほどになって、その扱いにも困ったという。
賄賂が横行した当時の風潮が思いやられる。
この時代は、勘定奉行の松平伊豆守、赤井越前守などという輩も、互いに進物の豪華さを競った。
「京人形一箱」の贈答品などは、京から美しい芸妓を一人買い取って、豪華な着物を着せ、それを大きな箱に入れて上書きを「人形」として送ったものだという。
また、松平伊豆守などは、夏は蚊を防ぐ蚊帳を廊下から、左右の小部屋まで幾間も切れ目なく張り巡らして、部屋ごとに妾を寝かせて、夜中にどの部屋に行っても蚊がいないようにしたという。
また、息子の中に非常に神経質な者がいて、雨の音さえ嫌うので、家の屋上に架を設けて、そこに天幕を張って雨の音を防いだという。
その贅沢ぶりを想像してみて欲しい。
十代将軍徳川家治の側用人から老中となり、当時財政がひっ迫していた幕府の経済政策を重商主義へと転換した田沼意次と言えば、その代名詞は「賄賂政治」ということになります。
まあ、田沼時代以前も以後も、その当時は政治に賄賂は付き物だったのですが、それが行き過ぎた・・・ということでしょう。
その風潮や贅沢志向が、幕府の要職たるお奉行様にも及んでいたのが分ります。
「京人形」と書かれたデッカイ箱を開けたら、中身は生身の美女だった・・・などはちょっとスゴ過ぎます。
これ賄賂を贈る側もウッキウキで新趣向を考えてませんかねぇ。
「これ絶対ウケるって!」みたいなノリで・・・・。
芸妓さんも「ええっ、この箱の中に入るんどすか?うちイヤどすわぁ」とか言ってそう。
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