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第四十六話 「鬼女出没」 ~鎌倉大パニック~

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 松浦静山著「甲子夜話」

 巻五十一、一五「農夫の妻人を喰ふ」より


 房州(今の千葉県房総半島)の農夫の妻がある時、鬼となった。

 ふと夫を食い殺して逃走し、相州(今の神奈川県)に渡って、小坪の光明寺(鎌倉)辺りで人々を恐怖に陥れて、その後は墓地に行って墓を暴いて死者を三人ほど喰ったという。

 それから鎌倉の雪ノ下(地名)へと逃げて行ったので、大蔵、大町、小町、荏柄、二階堂、宅間、小袋谷(いずれも地名)、建長寺前の十二の寺も残らず門を固く閉めて、つづみかねを打ち鳴らしたり、拍子木の音が響き渡るなど大騒ぎとなったという。

 町々は、昔の新田義貞の鎌倉攻めの時ように由比ヶ浜ゆいがはまに敵が上陸したのかと、大変な騒乱状態となった。
 しかし恐ろしさのあまり、誰一人として、かの鬼女を退治しようと言い出すものはなかったという。

 鬼女は、夕方から明け方の間にどこかへ行ってしまって、跡形もなく消え失せてしまったということだ。

 これは七月初旬に、大山詣り(神奈川県伊勢原市の大山を参詣すること)に行った者が、鎌倉に寄った時に聞いた話であるという。

 珍しい話である。


 ・・・・久々に怪談めいた話でした。

 鎌倉大パニックです、ホントの話かどうかは分かりませんが地名が出てくるあたり妙なリアリティがあります。
 私も鎌倉に行ったことがありますが、海と山に囲まれ、歴史を感じさせる大変素晴らしいところでした。

 お店で飲んだ甘酒が美味しかったです・・・・。



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