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本編
終止符を打つとしよう
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一瞬の出来事に理解がいまだ及ばない頭を何とか活性化させつつ、この状況を整理する。
ただの誰も油断などしていなかった。全員の共通認識として、一気に引き上げられた最大レベルの警戒をしていた。それでも、今目の前で起こった事実に説明をつけるならば、
(それらすべてを凌駕して、一瞬にして舞原たちを倒した。ということか)
逆にそれでなければ説明がつかない。つまりあの静寂は西園寺にとって力をためるという選択肢の表れ。そして、今になってそれを解放して爆発的なパワーを生み出した、と。
(そんなの反応できるわけねえな……)
現に西園寺の動きを目で追うことが出来ず、今になって過去形として考えている。
だが、考えがまとまり諦めという結論を出したことによって、思考がクリアになっていく。
今やるべきことが、既に選択肢にはできないほどに定まった。
さて、そろそろこの長い戦いに終止符を打つとしよう。
「これで純粋な一対一だな、椿零」
「俺にとっちゃ負け同然な状況だ。それに一対一っていうのは同じくらいの実力者がやるもんなんだよ」
「まだ、謙遜するつもりか?」
「お前のほうが下に決まってんだろうに、寝言は寝て言うんだな」
「今のを見て、まだ戦意は薄れないか。無能力者かどうかの疑いがさらに深くなるな」
「戦意? そんなものは最初から持ち合わせてない」
「何?」
そもそも俺はこの試験への意欲は全くない。ここまで戦ってきたのは舞原の考えに合わせてきただけのこと。そこに戦意もクソもない。
それに、
「で、こんな関係ない話をしてまた同じことをするつもりだろう? そりゃあ、俺が反応できなかった攻撃方法だからな。当然のことだ」
わざと会話を挟んで先ほどと同じように力を溜めて一気に解放する。先ほどと同じだが、俺は反応できずに状況理解に終わった攻撃。有効打といえば有効打ではある。が、同じ手が二度も通じるとは限らない。当然、俺はそれを警戒するし、打開策だって既に考えられている。
果たしてそれが通じるかは別問題として、俺一人でやらなければ負けるのだ。
一度、深呼吸。今一度集中する。思考を止めて、視界すらもクリアに。敵を、前を見据える。
そして、一瞬視線をそらした。
刹那、西園寺は動く……!
恐らく、俺のような常人の動体視力ではとらえきれない速度。ならば、視界に頼らなきゃいい。目を閉じ、右腕を少しだけ撫でた。そこから流れるような動作で右拳を振りかぶると迷いなく打ち込んだ……。
……。先ほどとは打って変わってしんと静まり返る会場。そんな不気味な静寂の中、俺はやっと吸い込んだ息を吐き出し、その場に座り込んだ。
その一連の動作の後、止められた時が戻ったかのように歓声がわいた。
俺の近くには完全に伸びた西園寺があおむけで倒れている。
視界に頼らず、感覚だけで戦うというのは俺の一種の博打だった。
基本的には視界が失われれば、五感が得る情報というのは激減する。だが、その分、ほかの器官に集中しやすい。そして、決め手となったのは俺の本能による反応速度だ。この戦いも含めて、本能により考えるよりも先に身体が動いている。ということは少なくなかった。明らか西園寺の速度は、考えていたら反応は間に合わない。
その結果、博打としてその本能、反射にかけることにした。そして、それをより生かすためにわざと五感からの情報をシャットアウトし、集中力を高めつつ、フラットに構えた。
一撃で決めるという前提条件から放たれた渾身の一撃は西園寺の顔面へ突き刺さった。自身の速度と相まって爆発のような轟音が響き渡り、西園寺は倒れた。
まさかここまで追いやられるとは思っていなかったが、まあ結果が問われるこの世界では過程など些細な問題だろう。
何はともあれ、天王山となるこの戦い。恐らく、この試験において最大に激化したこの勝負は俺たちに軍配が上がった。
この激戦を勝ち抜き、目標として掲げるランキングトップへの道。全勝という結果を守り抜いたのだった。
「ハハハ、……冗談でしょ?」
勝負を終え、備え付けられた救護室にいた俺は、舞原とミサの現在の状態を聞き、思わずそう漏らした。
「外傷は少ないものの、骨折や内出血が多く見られます。私の能力で治すことはできますが、今日のところはリタイアという形をとらざるを得ないです」
「まだ試合、残ってんだけど……」
え、後2、3試合を俺一人で戦えと? いくら何でも俺に任せすぎでは? 俺も結構ボロボロですが?
「残念ながら、今日のところは面会も難しいです。ただ、明日には完璧に直しておくので、今日のところはお帰りください」
「はあ……。分かりました」
絶望的な事実を突き付けられ、俺は頭を抱える。
さて、どうしたものか……。
圧倒的に不利な状態で俺は会場へ向かった。
まあどうするかとか、もう選択肢なんて残ってないんだけどな……。
ただの誰も油断などしていなかった。全員の共通認識として、一気に引き上げられた最大レベルの警戒をしていた。それでも、今目の前で起こった事実に説明をつけるならば、
(それらすべてを凌駕して、一瞬にして舞原たちを倒した。ということか)
逆にそれでなければ説明がつかない。つまりあの静寂は西園寺にとって力をためるという選択肢の表れ。そして、今になってそれを解放して爆発的なパワーを生み出した、と。
(そんなの反応できるわけねえな……)
現に西園寺の動きを目で追うことが出来ず、今になって過去形として考えている。
だが、考えがまとまり諦めという結論を出したことによって、思考がクリアになっていく。
今やるべきことが、既に選択肢にはできないほどに定まった。
さて、そろそろこの長い戦いに終止符を打つとしよう。
「これで純粋な一対一だな、椿零」
「俺にとっちゃ負け同然な状況だ。それに一対一っていうのは同じくらいの実力者がやるもんなんだよ」
「まだ、謙遜するつもりか?」
「お前のほうが下に決まってんだろうに、寝言は寝て言うんだな」
「今のを見て、まだ戦意は薄れないか。無能力者かどうかの疑いがさらに深くなるな」
「戦意? そんなものは最初から持ち合わせてない」
「何?」
そもそも俺はこの試験への意欲は全くない。ここまで戦ってきたのは舞原の考えに合わせてきただけのこと。そこに戦意もクソもない。
それに、
「で、こんな関係ない話をしてまた同じことをするつもりだろう? そりゃあ、俺が反応できなかった攻撃方法だからな。当然のことだ」
わざと会話を挟んで先ほどと同じように力を溜めて一気に解放する。先ほどと同じだが、俺は反応できずに状況理解に終わった攻撃。有効打といえば有効打ではある。が、同じ手が二度も通じるとは限らない。当然、俺はそれを警戒するし、打開策だって既に考えられている。
果たしてそれが通じるかは別問題として、俺一人でやらなければ負けるのだ。
一度、深呼吸。今一度集中する。思考を止めて、視界すらもクリアに。敵を、前を見据える。
そして、一瞬視線をそらした。
刹那、西園寺は動く……!
恐らく、俺のような常人の動体視力ではとらえきれない速度。ならば、視界に頼らなきゃいい。目を閉じ、右腕を少しだけ撫でた。そこから流れるような動作で右拳を振りかぶると迷いなく打ち込んだ……。
……。先ほどとは打って変わってしんと静まり返る会場。そんな不気味な静寂の中、俺はやっと吸い込んだ息を吐き出し、その場に座り込んだ。
その一連の動作の後、止められた時が戻ったかのように歓声がわいた。
俺の近くには完全に伸びた西園寺があおむけで倒れている。
視界に頼らず、感覚だけで戦うというのは俺の一種の博打だった。
基本的には視界が失われれば、五感が得る情報というのは激減する。だが、その分、ほかの器官に集中しやすい。そして、決め手となったのは俺の本能による反応速度だ。この戦いも含めて、本能により考えるよりも先に身体が動いている。ということは少なくなかった。明らか西園寺の速度は、考えていたら反応は間に合わない。
その結果、博打としてその本能、反射にかけることにした。そして、それをより生かすためにわざと五感からの情報をシャットアウトし、集中力を高めつつ、フラットに構えた。
一撃で決めるという前提条件から放たれた渾身の一撃は西園寺の顔面へ突き刺さった。自身の速度と相まって爆発のような轟音が響き渡り、西園寺は倒れた。
まさかここまで追いやられるとは思っていなかったが、まあ結果が問われるこの世界では過程など些細な問題だろう。
何はともあれ、天王山となるこの戦い。恐らく、この試験において最大に激化したこの勝負は俺たちに軍配が上がった。
この激戦を勝ち抜き、目標として掲げるランキングトップへの道。全勝という結果を守り抜いたのだった。
「ハハハ、……冗談でしょ?」
勝負を終え、備え付けられた救護室にいた俺は、舞原とミサの現在の状態を聞き、思わずそう漏らした。
「外傷は少ないものの、骨折や内出血が多く見られます。私の能力で治すことはできますが、今日のところはリタイアという形をとらざるを得ないです」
「まだ試合、残ってんだけど……」
え、後2、3試合を俺一人で戦えと? いくら何でも俺に任せすぎでは? 俺も結構ボロボロですが?
「残念ながら、今日のところは面会も難しいです。ただ、明日には完璧に直しておくので、今日のところはお帰りください」
「はあ……。分かりました」
絶望的な事実を突き付けられ、俺は頭を抱える。
さて、どうしたものか……。
圧倒的に不利な状態で俺は会場へ向かった。
まあどうするかとか、もう選択肢なんて残ってないんだけどな……。
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