能力者主義の世界で俺は無能なチート能力者

高桐AyuMe

文字の大きさ
33 / 55
本編

根源の男

しおりを挟む
「う、あ……」
 顔に当たった光によって目が覚めた私は、寝起き早々そんな声を漏らす。
 目に映ったのは真っ白な天井。少なくとも私の部屋じゃないのは確実だ。
 ゆっくりと上半身を起こすが、まだ身体の所々に感じた痛みに顔をしかめる。
 時刻を見ると午後5時。試合が始まったのは10時頃だったから、かなりの間眠っていたらしい。
 備え付けられた窓から外を見れば、強烈な西日が部屋に差し込んでいた。
 そして肝心の試合といえば、
「舞原さん、起きていましたか。体のほうはどうですか」
 何とかして試合の記憶を取り戻そうとしていると、見回りに来た救護担当の女性に話しかけられる。
「えっと、まだ痛みはありますけど、大丈夫そうです」
「そうですか。もう自分の部屋に戻っても平気ですよ。何か手伝いが必要でしたらいつでも声をかけてください」
「はい。あ、それなら一ついいですか?」
 立去ろうとするその女性を私は呼び止める。
「どうかなされました?」
「あの、西園寺との試合はどうなったか、ご存知ですか?」
「え、そうですね……」
 私の質問に少し考えると、
「ああ、あれですね。大丈夫ですよ、あなたたちのチームが勝利しました」
「え、そうなんですか……?」
 想像とは違う返答に少々困惑する。今思い出した記憶が正しければ、私は西園寺の一撃によって倒れてしまったはずだ。同様にミサも巻き込まれていた。つまり、残っていたのはあの男、ただ一人。その結果が勝利ですって?
「ただよかったです。もう1日近く眠っていたので。治療が失敗したのかと……」
「一日……、眠ってた?」
「ええ、その試合というのは昨日のことですよ」
「そんな……っ!」
 それを聞いた瞬間、私はベットを飛び出し会場へと駆け出した。
「あまり無理をなさらぬように」
 女性の言葉を背に受けてとにかく会場へ急ぐ。
 私が丸一日寝ていたですって……?
 だとしたら私のチームは、彼はどうなったっていうの?
 今の私がこんな状態だ。身体はまだ完全に回復しきってない。それなら、ミサはきっと私よりも目覚めたとは考えにくい。
 だとしたら、このチームは彼一人で戦っていたということ?
 ならば、恐らく連勝は止まってしまっている。何とかして西園寺からもぎ取った一勝だけど、その後が続かなければ意味はない。
 彼がどんなに強くても、いくら無能力者の中で随一の実力を誇っていても、能力というアドバンデージを持っている相手を三人もだなんてできっこない。もしかしたらもう一位を目指すのは難しいかもしれない。
 そんなネガティブ、いや、夢だと思いたい暗い現状を予想して会場のフロント、順位が記された電子版を見る。
 そして私は、大きく目を見開き衝撃の事実を目の当たりにした。
 
 ドンドン、とある部屋の扉をたたく。先ほどからやってはいるものの、この部屋で寝泊まりしているはずの人物からの返事はない。
 かれこれ一時間近く。連絡を入れようにも私は連絡先を知らない。
 今のこの現状を作り出したその人物に一刻でも早く事情を聞きたいのに……。
「千歳……?」
 ドアの前でどうするべきか、と頭を悩ませていると私を呼ぶ声が聞こえた。
 そちらに振り向くと、電動車椅子に乗ったミサが不思議な顔をして私を見ていた。
「ミサ? 目覚めたの?」
「うん、さっきね。千歳はもっと早かったみたいだけど」
「よかった……!」
 私は思わずミサを抱きしめた。
 本当に良かった。私でもここまで重症だったからミサにとっては死ぬほど酷かっただろう。けど、今や無事で……。
「でもミサ、その車椅子は……?」
 私はミサが乗っている車いすに目を向ける。
「あはは……、これね。結構ダメージがやばかったらしくて、まだ千歳みたいにはできないみたい」
「え……」
「だから、ごめん。これ以降の試合には参加できない……」
「そう、なの……」
 これ以降の試合への不参加。仕方がないことだけど、かなりきつい状況だ。
 それに私を完全に治ったわけじゃない。残り一日の試合を二人で乗り切らなければならない。
「そうだ、試合経過。ミサはもう確認した?」
「ん? ええ、ここに来る前にね。どうやら私たち含めてこの学校全員驚いているだろうね。ああ、だからここにいたのか」
「ええ、事情を聞こうと思って。でも部屋にはいないみたい。連絡先も知らないし」
「なんか、彼氏を追いかける彼女みたいね」
「へ?」
 妙なことを言うミサに私は思わず素っ頓狂な声を上げる。
 私があいつの彼女? そんなことがあるわけない。……ないのかな?
 いや、ない! そんな未来はないに決まってる。
「いやよ、あんな失礼がなってない奴なんか……」
「失礼? え、なんかあいつにされたの?」
「いや、別に、何も……」
 いつぞやの御姫様抱っこの件やらが頭をよぎるが、表情には出さずに返答する。
「え、何。マジでなんかされたの?」
「だから何もないって!」
 そんな他愛もないことを言いあっていると。
「お前ら、俺の部屋の前で何やってんだ?」
「!?」
 後ろからの声。私はとっさに振り向くと、そこには彼がビニール袋を持って立っていた。
 私は冷静に、声が上ずらないように気を付けて、その男に問い質す。
「ちょうどよかった。貴方に聞きたいことがあってここに来たのよ」
「何だ?」
 彼も同じく表情を変えずに返答する。そんなすました態度に少しばかりの苛立ちを感じながら、その一言を彼にぶつけた。
「一体、どんな奇跡を起こしたのかしら? ねえ、貴方は本当に無能力者なの?」
 目の前の男。無能力という不利な状態から3対1という人数不利を加えた絶望的状況を何度も覆して、強烈な数字をたたき出し、いまだ一位をキープし続けている根源の正体、椿零という最弱さいきょうに……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】 魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。 ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。 グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、 「・・・知ったからには黙っていられないよな」 と何とかしようと行動を開始する。 そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。 他の投稿サイトでも掲載してます。 ※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

処理中です...