能力者主義の世界で俺は無能なチート能力者

高桐AyuMe

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本編

謎のX

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 まるで俺を異質な生物を見るかのような視線を向けてくる二人。
 少しばかりシリアス空気が漂い始めたが、俺はそれらを無視する。
「二人とも目覚めたのか。まあ、命に別状なんかあるわけがないからな。そこの心配はしていないが」
 そこで俺はミサへ視線を向ける。
「ミサに至ってはどうした? まだ動けないのか?」
「ええ、あんたには悪いけど、この先の試合は参加できない」
 俺はあの救護室にいた女性のはなしを思い出しながら聞く。
「ああ、分かった。気やすめだとは思うが早く寝ろよ」
 さて、あの女にはあとで文句を言っておかないとな。
 そうして、部屋に戻ろうとしたのだが。
「待ちなさい」
 舞原に呼び止められてしまった。
「だからなんだ?」
「私の質問に答えなさい。一体、どうやって勝ち抜いたの? そもそも西園寺との戦いだってどうやって。それに貴方は本当に、無能力なの……?」
 一気にまくしたてる舞原に一度手で制しながら嘆息する。
「そんなにいっぺんに聞かれても困る。それに場所も悪い」
 俺はスマホを取り出し、時刻を確認する。
「すまないが、今日はもう部屋に戻れ。時間的にも遅い」
「まだ六時じゃない。十分話せる時間はあると思うけど? それとも何、私に言えないことでもあるわけ?」
「お前は浮気を確認する彼女か。今日はただ引き返せと言ってるんだ。明日ならいくらでも答えてやる。お前が疑問に抱えることすべてにな。だが、今日はやめてくれ、と言っているんだが分からないか?」
「一応、理由を聞いてもいいかしら?」
「お前ら二人分の戦力をを補っていたから疲れている。故に、早く寝たい。この理由じゃ不十分か?」
「……いえ、十分よ」
 舞原はおとなしく引き下がる。まあ、自分が戦線から一時的に離脱したという自分自身の非を引き合いに出されたら引き下がるしかないだろうな。それが舞原の性格ならなおさら、な。
「じゃあな、お前も早く治してくれよ。もう一人で戦うのはごめんだからな」
「……ええ、それじゃあ」
 うつむき気味にその場を去った舞原の背中を見届けて、俺は部屋に戻った。
 そして、首をコキコキと鳴らすと少しだけ口角を上げた。
「文句を言いに行かないとな……」

 俺は素早く夕飯を済ませると救護室へ向かった。
 ノックをせずに部屋に入り、目的の人物を探す。
 すると、一番奥の部屋から妙な音が絶え間なく響いている。
 俺はそのドアを開けて、その背中に語り掛けた。
「随分と熱心だな。そんなに人を刺したのは気持ちよかったか?」
 その言葉に人物は一度手を止めこちらに振り替える。
「どうしましたか? 椿零さん」
「無理に隠そうとしなくていい。もうお前の正体はわかっている」
 静かにそう言うと、そいつは笑顔を止め、真っ黒な瞳でこちらを見据える。
「正体、ですか……。まさかそこまで気づいているとは思いませんでしたが……。まあ、貴方様の駒が不自然に消えれば、それは違和感になるでしょうね」
「ああ、そうだな。で、そいつは今どこだ?」
「ええ、彼ならもうここにはいませんよ。というか、既にこの世にはいません」
「なら、今やっている作業はそれのカモフラのためか?」
「そうですね、流石に私といえど人殺しは犯罪ですので。しかし、考えたものです。とは……」
 次々とこいつの口から真実がばらされていく。人殺し、と捕らえた犯罪者。
 簡単に言えば、今までの俺の言動から分かる。
 先ず、俺がまだFクラスにいた時に起きた事件。表ざたには汗衫が解決したとされているそれの犯人は結果として能力者を収容する刑務所に送られた。
 だが、それは俺の手によって脱獄することになる。
 それも持ち掛けたのはこの試験開始の直前。俺が学校をさぼった日。俺の目的に一つにあの「体を金属化する能力」を持つ男に会いにいった。そこで俺は秘密裏に用意した脱獄ルートを手渡すことに成功し、奴は見事に脱獄。その結果、奴は俺の優秀な駒となった。
 そして、試験が始まる。
 最初のほうに西園寺が言っていたこと。
「この試験には組織規模の何かが関わっている」
 それは全くもって間違いではない。事実、その組織というのがこの目の前にいる女が所属しているものだ。
 少なくとも、俺は最近になって気づき始めていたのだ。
 その組織、今は仮にxと名づけるとしよう。そのXがこの学校に探りを入れてきている、ということを。
 理由としては、そもそも能力者による犯罪をFクラスが対応するなどないに等しい。単純にAクラスに任せるのが普通だ。だが、あの時は何故か俺たちFクラスが対応することとなった。
 しかも、警察から事情を聞いてみたが、中々に動機がはっきりしなかったという。
 つまりは犯行動機は自分の意志ではない。という可能性が高まる。
 さらにはその男を俺は知っていた。
 その男はその組織に所属していたということも知っていた。
 目の前の女も組織に所属していることを知っている。
 そして、組織的な絡みがあるこの試験。
 さて、ここまで述べてきたことの根本的なところにある前提条件。

 言うなれば、俺もその組織の一員だったということだ……。
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