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やったぜ
しおりを挟む脱兎の如く駆け出し、少女が厠に入る前にジュウゾウは、自らが個室内に飛び込んでいった。
そんなジュウゾウの取った行動に少女が慌て始める。
腹部を押さえ、苦しそうな表情を浮かべる少女の姿にジュウゾウはある種の興奮を覚えた。
それは便意を必死で堪えている少女の仕草や、少しばかり青ざめている顔色に背徳感を感じたせいだ。
ジュウゾウのこれまでの人生で、便意に身悶える美少女を目の前にしたことなど、
どれほどあるというのだろうか。否、一度たりともそんなことはあり得なかった。
好奇の目でジュウゾウが少女を眺め続ける。
「あ、あの……スイマセンが先に用を足させては貰えませんか?」
内腿をモジモジとこすり合わせながら、少女はジュウゾウにか細い声で願い出た。
藍色のワンピースと赤いリボンがよく似合う少女だ。
シルフィーがジュウゾウの耳元で「売って欲しいって頼んでみれば、この前みたいに薬にするからって言ってさ」と囁く。
そそのかすような妖精のその言葉に、黙って少女を見ていたジュウゾウは口を開いた。
「あ、あの、ウンコを売って貰えないかっ」
思いがけないジュウゾウの申し出に少女は一瞬、戸惑いを見せた。
少女の瞳が僅かながらも潤み、瞳孔が猫のように広がる。
「あ、あたしのウンチを売って欲しいって……」
少女の疑問に畳み掛けるようにジュウゾウが答える。
「お、俺は病に冒されていて、わ、若くて綺麗な女の子のウンコを薬にして飲まないと死んでしまうんだっ」
そして地見で拾い集めていた金を少女に差し出し、ジュウゾウがこれでなんとか売って欲しいと頼み込む。
困った少女はジュウゾウの申し出に考え込んでしまった。
しかし、迫り来る便意とジュウゾウの必死とも言える頼みについに折れてしまい、
少女は「わかりました……」と承諾した。
(よっしゃあっ、美少女のウンコ、ゲットだぜっ)
心の内で喝采しながらもジュウゾウが道端で拾った割れ鍋を少女に差し出す。
少女──ナリアは差し出された割れ鍋を黙って受け取った。
「それじゃあ……その、少し外で待っていてください……」
ジュウゾウは言われた通りに個室から出た。
そして素早くトイレの戸の隙間を覗き込む。
割れ鍋にしゃがんだ少女が辛そうに呻いた。
途端にブリリッという破裂音が、堰を切ったように個室内に響き渡る。
(やっぱり生で見るのは迫力や臨場感が違うな。DVDとは比べ物にならねえよ……)
二つの白い球体の狭間から、黄色くなったズッキーニを思わせる排泄物が垂れていった。
転生以前もクズだったが、ここに来てジュウゾウは文字通りのクソ野郎に成り果てていた。
(おおお……なんていう太さなんだ……)
用を足し終えた少女が鍋を手に持ってトイレを出てくる。
「あの、それじゃあ、これ……」
恥ずかしそうに俯いている少女から鍋を受け取ると、ジュウゾウは金を渡した。
金額は9オーブほどだった。
こちらに背中を向けて、通りへと走り去っていく少女を眺めながら、ジュウゾウは気味悪い笑みを浮かべた。
「やったわね、ジュウゾウ。今日からシットイーター(糞食い)のジュウゾウと名乗るといいわよ。
さあ、早く食べるのよ」
妖精がジュウゾウにせっつく。
「うるせい、わかってるよ」
この前のミスから学んでいたジュウゾウは、湯気を立てている少女の排泄物を指で小さくすくい取ると、
小粒のブドウを食べるように飲み込んでいった。
独特の異臭に粘つく食感と、舌を刺すようなえぐみには、未だに慣れる事はできなかったが、
それでも吐かずに食すことができた。
なんとか少女の大便を食べ終わると、途端に力が増したのがわかった。
ジュウゾウのステータスがアップした。
STR=4
VIT=3
DEX=3
AGI=3
INT=5
ジュウゾウはスキル「マジックショット」を覚えた。
マジックショットは遠距離攻撃用の初歩魔法だ。
「やったじゃない、ジュウゾウ、スキルを覚えたわよ」
「おお、ようやく、役に立ちそうなスキルが来たな」
「それじゃあ、早速試してみましょうか。最初は弱いモンスターで練習するといいわよ」
「よし、それじゃあ、いくか」
そう言うや否や、ジュウゾウとシルフィーは町の南門を出て修練用のダンジョンを目指す。
修練用ダンジョンは、門から出て十五分ほど歩いた場所にあった。
入口から見れば、なんの変哲もない洞窟のように思える。
「ちなみにこのダンジョンの奥にある赤い玉を貰ってくれば、無試験でこの町の冒険者として登録してもらえるわよ」
「ほほう」
「とにかく、中に入りましょう」
足を踏み入れたダンジョンの内部は、やはりジュウゾウの知っている洞窟と変わらなかった。
洞窟の壁面にはカンテラが設置されており、洞窟内を薄く照らしていた。
ジュウゾウが手頃なモンスターを探し始める。
「あそこにいるグリーンスライムに撃ち込んでみなさいよ。グリーンスライムの仕留め方は、
トイレの便槽で教えたわよね?」
「ああ、覚えてるぜ、よし、マジックショットッ」
ゴツゴツした岩壁を這っているグリーンスライムの核にジュウゾウはマジックショットを食らわせた。
途端に核を壊されたグリーンスライムが壁から剥がれ落ち、溶け崩れていく。
「結構楽しいな、これ」
「喜んでもらえて何よりだわ」
それからジュウゾウは、どんどん洞窟内の奥へと進んでいった。
その途中にいた天井にぶら下がっている大蝙蝠や、人の頭ほどの大きさの蜘蛛などをマジックショットで仕留めていく。
「これも腐らせて食べれば、パワーアップに使えるわよ」
シルフィーが蝙蝠や蜘蛛の死骸を指差して言う。
「いや、それはちょっと……」
「蛇の腐った死骸やウンチでも食べたんだから、今更でしょう?」
「でも蜘蛛や蝙蝠の腐ったもんはまだ無理だ……」
途中で道がT字に分かれた。
右と左、どちらに行くべきか考え、ジュウゾウは右側の道に入っていった。
すると向こう側から白いキノコに手足が生えたようなモンスターが現れ、ジュウゾウの行く手を塞いだ。
「何だ、あれは?」
ジュウゾウがシルフィーに尋ねた。
「あれはホワイトマタンゴっていうモンスターよ。雑魚だけど、蝙蝠や蜘蛛よりは厄介な相手よ」
「ふーん」
再びジュウゾウがマジックショットを撃った。
放たれたマジックショットが、ホワイトマタンゴの半球状の笠の部分を吹き飛ばす。
その衝撃にホワイトマタンゴが転倒する。
「なんだ、弱いじゃん」
「いいえ、まだ倒してないわよ」
マジックショットを喰らいながらもホワイトマタンゴは立ち上がった。
「もう一発、マジックショットっ」
次は円筒状の胴体に撃ち込んでやる。
再び倒れたホワイトマタンゴは、それから二度と起き上がることはなかった。
「ちょっと耐久力があるけど、やっぱり雑魚だな、こいつ」
ジュウゾウの周りを飛び回りながら、シルフィーがホワイトマタンゴを指差した。
「これも腐らせてから食べれば、能力が増えるわよ」
「そうだな……キノコなら食えそうだな……」
ジュウゾウは殺したホワイトマタンゴを持っていくことにした。
ホワイトマタンゴの亡骸を肩に担ぎ上げる。
「結構軽いな、これ」
「あんたの力が増えたからそう感じるんじゃないの?」
それから洞窟を進んでいったが行き止まりだったので、T字路まで引き返して次は左側の方へと歩いた。
左側の道奥へと歩を進めていくと、小さな休憩所のようなものが見えた。
そこには二人の兵士が立っていて、ジュウゾウの姿を見つけると手を振ってきた。
「このダンジョンの奥まで来れたんだな。おめでとう。はい、記念品だ」
そういうと兵士の一人がジュウゾウに赤い玉を手渡す。
「おお、これがあると冒険者に無試験で登録できるって聞いたけど」
「ああ、そうだとも。登録したいならこれを持って冒険者組合に行くといい」
赤い玉を貰ったジュウゾウは、その足で洞窟を出ると冒険者組合へと向かった。
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