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欲を掻くとこうなる

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土手に腰を下ろし、ジュウゾウが溜息を漏らす。
「なんとかでかく稼ぎてえな……」
この四日間、ジュウゾウは例の三人とパーティーを組んで、せっせと仕事をこなしていた。

だから宿屋に泊まって食事をするくらいの余裕は出来たが、それだけと言えばそれだけでしかない。
「真面目に能力をアップしていけば、その内稼げるようになるわよ」

虫食い跡が残るふきの葉の上にとまっていたシルフィーが言う。
「そんなんじゃ嫌だっ、俺は楽して大金を手に入れたいんだよっ」
「そんな楽して稼ぐ方法がどこにでも転がってるなら誰も苦労しないわよ」

「うるせいっ、おい、お前は俺のサポート役なんだろうっ、だったら何かおいしい話持ってこいよっ」
「勝手なことばかり言うわねえ。いいわ、じゃあ、ちょっと耳を貸しなさいよ」



<ランスの酒屋>は大店と言っても良い規模を誇っている。

この町では一番大きく、もっとも繁盛している酒屋だ。

そして今の酒屋の主であるマクネルから、数えて四代続く町の老舗の一つでもある。
ちなみに酒屋の名前は初代の主であるランスから取っている。

そんな<ランスの酒屋>にジュウゾウは、ちょくちょく顔を出しては買い物をするようになった。
朝、店が開くと同時に革袋に酒を詰めてもらい、夕方頃にもう一度、店に顔を出すといった具合にだ。
まあ、買うといっても安酒なのだが、それでも何度も顔を出していれば、店の者とも自然と顔見知りになってくる。

そんなある日のこと、ジュウゾウが慌てた様子で酒屋に駆け込むと、
店先にいた番頭に「売上金四万オーブ」と封じの張り紙をされた集金袋を見せた。
「み、店先でこんな大金拾っちまってさ、も、もしかしてこの店の人が落としたんじゃないのか?」

そんなジュウゾウの言葉に金を横取りしてしまおうと番頭は企んだ。

番頭が笑みを浮かべながら集金袋を受け取ると、
「いや、これは確かにうちの店で使っている集金袋です。店に届けていただいて本当にありがとうございます」
としれっとした顔をして、ジュウゾウに礼を述べる。

「それでいくらかお礼は貰えるのかな?」
「ああ、そうでした。では四千オーブほど謝礼をお支払いします」

それから番頭は店から前借りした四千オーブをジュウゾウに渡すと、もう一度礼を言いながら頭を下げた。

「それじゃあ、俺はこれで失礼するよ」

そう言って店を出ていくジュウゾウを遠巻きに眺めていた番頭は、早速集金袋の封じを開けた。
所が袋の中から出てきたのは、ただのガラクタだった。
番頭はホゾを噛んで悔しがったが、もう後の祭りだ。

こうしてジュウゾウは、酒屋の番頭からまんまと金をせしめた。
古今東西、人間は欲を掻くとロクな事にはならないものだ。


「よっしゃあっ、うまくいったぜっ」
番頭から巻き上げた金を懐に収めたジュウゾウは、小道の辻ではしゃいでいた。
「やったわね、ジュウゾウ、それでそのお金で何するの?」

「そりゃ、勿論、美味い物食いまくって、可愛い女の子とバンバン遊ぶに決まってんじゃん」
「そんな事にお金使ってたらすぐに無くなっちゃうわよ。
それよりも今後のこと考えて、少しは装備品とか整えたらどう?」

「うーん、確かにそうだなあ」
「それに格好良くて強そうなに見えれば女の子達からも好かれるわよ」
「言われてみれば確かにな。じゃあ、買いに行くか」



それから町の商店街に行き、ジュウゾウとシルフィーが売られている武器や防具を見て回った。
様々な品物に目移りしながらもジュウゾウは、鉄兜に動きやすそうなチェインメイルと鉄の槍、
それから旅の必需品一式を買い揃えた。

これで合計二千五百オーブほどが消えたが、懐にはまだ金が残っている。
酒を飲んで浮かれていたジュウゾウは、千鳥足で辻を曲がろうとした。
すると向こうの角から来た人影とぶつかった。

「いてっ、ちゃんと前向いてろよっ」
ジュウゾウはぶつかった人影に文句を言いながら、見やった。

人影はかなりの美人だった。
張り満ちたバストに褐色の肌、ややぽってりとした唇に切れ長の双眸、
身体つきはしなやかそうで、まるで野生の黒ヒョウを連想させる。

「すまん、悪いな」
そういうと人影がジュウゾウから早々と立ち去っていく。
「キャスやナリアも可愛いけど、あんなカッコイイ美人もいいな……」

そんな事を呟きながら、河川敷のテントへと戻る。

そして、残りの金を何に使おうかな、などとヘラヘラ笑いながら算段していると、
「ん、あれ?」
懐に入っていたはずの財布が無くなっていた。
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