親友は砂漠の果ての魔人

瑞樹

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ムー大陸編

19王宮からの御招待

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 白色人の街で点々と昼はギターの演奏会、ホテルに泊まる生活を五日も続けていると、街を歩いているだけで頻繁に「あら、楽器が上手な人ね」「やあ、この前の演奏は良かったよ」と声をかけられるようになった。拍手や賞賛はしない変わりに、素直な感想は隠さずに話すようだ。

「この街の人たちは愛想は良くないけど、心根は素直な人ばかりみたいだね」

「うん、そうだね、善良な者ばかりだけど、なぜか人間性に欠けるような気がするね」

 人の域を超えている魔人の言葉とは思えない。

「何を言うんだい、僕だって昔は普通の人間だったんだよ、そのくらいのことは分かるさ」

 アラブの魔人はいつものようにクスリと笑った。

 首都ヒラニプラに入って六日目、新しく見つけた公園での演奏会が終わり、ギターをケースにしまっていると、道路の方から鈴が鳴る音がして、それが段々とこちらに近づいてくるのが分かった。
 顔を上げて音のなる方を見ると、長身の女性が二人の青色人を伴ってこちらに歩いてくるところだった。青色人は二人とも身長は軽く二メートルは越えているだろう。服の上からでも屈強名な筋肉を身にまとっていることが分かる。

 立ち上がると、白色人の女性は神谷よりも十センチほど背の低く、白い服は他の白色人と同じだが、胸の所には花のような模様が金色で刺繍されている。
 鈴のような音は二人の青色人の持っている、彼らの背の高さほどの長さの青い棒の頭についている金色の玉から出ているようだった。

「この方たちは王宮から来たみたいだよ」
 アルハザードが小さく攝いた。ということは、白色人の女性が王宮からの使者で、青色人の二人の男性はその護衛ということだろう。

 三人は神谷たちの前で止まり、女性が微かに見える金色の王宮を指差した。
「私たちはあの王宮から来た者です、あなたが最近このあたりで楽器を弾いている方ですね」
 女性が神谷に向かって凛とした声を張り上げた。
「そうですが」
「あなたの弾く楽器というのは、あなたが方に担いでいる物ですか」
「そうです。正確に言えばこれはケースで楽器はこの中に入っています」
 背中の黄色い色となったギターケースを指差した。

「私の前で今、弾いて頂けないでしようか」
 今までの島で出会った人の中で一番上品な言葉遣いだ。もちろん、邪神が訳しているのだが。
「構いませんが、一曲だけでいいんですか」
「ええ、少し聴かせて頂ければ充分です」

 再び邪神の出してくれた黄色い椅子に腰を降ろし、少し悩んでから、アルハンブラ宮殿の思い出をゆっくりと、雑音を出さないようにして弾いた。
 最後の和音を弾き終わると、女性は小さく頷いた。
「やはり噂通りですね。今すぐに私と一緒に王宮に来て頂けますか」
 どのような噂なのかは、おおよその察しはつく。

「王宮ではこの島の王、ラ・ムーが待ってるんですか」
 隣でアルハザードがロを開くと、女性が目を見開いた。耳に入った声があまりにも涼やかで美しいからだろう。
「ええ、王宮には偉大なる王、ラ・ム一様があなた達をお待ちしています」
「喜んで伺いますよ、いいだろう」
 アルハザードが神谷を見た。異存はなかった。
「では、こちらに」
 女性の前後に青色人がつく、その後ろにアルハザードと神谷が並んだ。

 道に出ると、畳一枚分ほどの大きさの白色の、見るからに高級そうな絨毯が敷いてあった。
「こちらにお乗りください」
 言いながら女性が自分も絨毯の上に乗った。青色人は左右に分かれて、絨毯の上には乗らない。
「この絨毯には、この女性と僕たちだけで乗るみたいだね」
「そういうことだろうね」

 アルハザードが女性の後ろに乗り、神谷がそれに続いた。
 三人が乗ると絨毯はドーム状の家々のよりもやや高い位置までふわりと浮きあがり、黄金の王宮目指してゆっくりと進んで行った。
「まるでアラビアンナイトの魔法の絨毯だね」
 女性とアルハザードは立ったままだが、神谷は落ちないように片膝をついて絨毯に両掌をついた。

 横から下を覗くと、青色人は道路の上を足早に歩いている。
「この絨毯も精神力増幅装置で動いているのかな」
「そうだろうね、この島には他にエネルギー源はなさそうだからね」

「やっぱり、青色人たちはこれに乗れないのかな」
「どうだろうね、でも、これだけの広さがあるんだから、乗ろうと思えば乗れるよね。そう考えると、乗れないと結論づける方が合理的だろうね」

 絨毯が王宮の真正面に着いた。大きなドーム型の建物は他の建物と同じく、入り口も窓も何もない、唯広さも高さも比べものにならないほど大きい。
 絨毯が宙に浮かんだまま王宮の直前で止まると、女性が右手を上げて何かの呪文のような言葉を発すると、壁に人が通れる空間ができた。絨毯はそこを通って王宮の中へと入った。

「開けゴマかな」
「神谷、僕以外の人にそれを言うなよ。残念な人と思われかねないからね」

 頭の悪い子供のような扱いだ。それとも親父ギャグの範疇なのだろうか。
「違うよ、何とかの一つ憶えって日本のことわざにあるだろう」

 ことわざではないのだが、ここは掘り下げるところではない。
 
 王宮の中は、他の家の仄かな明かりとは違って、目がくらむほどに明るかった。壁、床、天井そして室内に置かれているテーブルなどの調度品全てが金色に輝いている。
 絨毯は静かに金色の床に降りた。
「私の後ろについて来て下さい。王、ラ・ム一様のいらっしゃる部屋まで御案内致します」

 女性が部屋の壁に向かって歩き出した。
「きっとあの壁にも穴が開くよね」
「そうだね、開くだろうね」

 壁に向かって女性が手を伸ばすと、思った通り、人が通れる空間ができた。
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