34 / 73
ムー大陸編
21王宮の客人となる
しおりを挟む
アルハザードと二人、大広間から応接室に案内された。応接室とはいっても、広さは五十畳くらいはあるのではないだろうか。もちろん、天井も床も壁も全てが金色に光輝いている。
テーブルに案内され、案内の女性が目の前のテーブルの上に置いた白い取っ手のついていないカップには赤い液体が入っていた。一口飲んでみると甘酸っぱいイチゴジュースのような味がした。
「これが黄金人の飲み物かな」
「いや、これは白色人の飲み物だ、黄金人の飲み物は黄金人、つまり王族以外には絶対に飲めないそうだ」
「でも、一段階上になったっていうことなのかな」
「そうだね、少なくとも、食べ物ではそうなったということかな」
テーブルの反対側に数人の黄金人と共にラ・ムーが席についた。
黄金人たちの前にも黄金色のカップが置かれたが、どのような飲み物が入っているのかは見えなかった。
「海を越えて来たと言っていたが、それは船に乗って来たのかね」
間近で聴くラ・ムーの声は声量を落としているせいか、荘厳というよりも、優しく語りかけてくような口調だった。
「大きな船に乗って来たのですが、この島に着いた時に船は岩盤に突き当たり大破しました。生き残ったのは僕とこの男の二人だけです」
アルハザードがありもしないことをスラスラと話した。
ラ・ムーはアルハザードの話をじっと聞いていたが、体からふっと力が抜けたように見えた。
「そうか、それは難儀なことであったな。しばらくはこの王宮に滞在するがいい。客人として迎えよう、よいな」
周りの黄金人たちを見た。皆無表情だった。この島ではこれが肯定ということらしい、ラ・ムーは満足そうに案内係の白色人に「この二人を客人用の部屋に案内しなさい」と告げ、黄金人たちを伴って部屋を出て行った。
「神谷、テーブルの下を見てごらん」
テーブルの下を覗くと、テーブルに足はなく、天板が浮いている状態だった。これは街の定食屋で見た光景と同じだ。
「この国ではこれが普通らしいね」
「さっき僕たちの風貌がいきなり黄色人からこの姿に変わっても何も言われなかったね、それも普通なのかな」
「別にその程度のことは不思議だとは思わないんだろうね」
テーブルの上には花瓶が置かれていて、そこには案内係の胸に刺繍されていた黄金色の花が咲いていた。
「花瓶が置かれているから、初めからあったんだね」
「そうだね、そしてこの液体を飲み終わっても消えないね」
甘酸っぱいジュースを飲み終えると、案内係の女性が脇に立っていた。
「宜しければ、部屋に案内しますが、いかがいたしますか」
「その前にこの王宮の中を見学したいのですが、どうでしょうか」
アルハザードの申し入れに女性は相変わらず無表情に「では、王族の方にその旨のお話をしてきます。このままお待ちください」と言い残してその場を去って行った。
「王宮を見学するって、何かあるのかい」
「それが分からないから見学するんだよ。神谷、憶えてるかい、一番初めに会った白色人は僕を普通の人間ではないと断言した、しかし、次にあった赤色人は何も言わなかった。いや、言わなかったのではない、言えなかったんだ。何も感じなかったんだろう。二人とも精神力増幅装置を積んだ車に乗っていた、だが、感じ方が違っていた。不思議だとは思わないか。そして先ほどのラ・ムーだ。僕たちが黄色人の格好をいきなり解いても何も言わなかった、そして、島の外から来たと聞いて、ひどく困惑した顔をしていた。なぜだだと思う」
「そんなこと分かる訳ないじゃのいか。ずいぶんと色々な疑問を持ったんだね、あの短い時間で」
「そうだ、あの短い時間にたくさんの疑問を持ったんだ、だから、それを調べてみたいのさ」
「それが君の望みを叶えることに関係するのかな」
「この王宮を見ることはこの島、ムー大陸を知ることだ。それに……」
「それに?」
「こいつが、そろそろ神谷のギタラを聴きたがっている。部屋に案内されたら早速弾いてもらいたいそうだ」
そうすれば邪神が何かを教えてくれる、ということだろうか。
神谷の考えが分かったのか、アルハザードが肩に乗っているはずの邪神の方を見てクスリと笑った。
その日は客人用の部屋に案内され、翌日から案内係つきで見学できることになった。部屋のドアはホテルと同じく、壁を触ると上に上がり、中は天井も壁も床も白かった。
案内係の女性は、翌日の朝に迎えに来ることを告げると、去って行った。
「割と広い部屋だね」
白い何もない空間だが、十畳くらいの広さがあった。
床に腰を降ろしたアルハザードの肩のあたりから邪神が飛び降りた。
「こいつが早く弾けって言ってるよ」
何もなかった部屋に白い石が現れた。神谷が座るための椅子なのだろう。今日は部屋と同じ色にしたようだ。
「防音仕様にしないのかな」
「この部屋はギターの音くらいは外に漏れないようにできているそうだ、だから、存分に弾いてくれって言ってるよ」
アルハザードの言葉が聞こえたのか、床に寝転がった邪神が目を細めて小さく「ニャー」と鳴いた。
テーブルに案内され、案内の女性が目の前のテーブルの上に置いた白い取っ手のついていないカップには赤い液体が入っていた。一口飲んでみると甘酸っぱいイチゴジュースのような味がした。
「これが黄金人の飲み物かな」
「いや、これは白色人の飲み物だ、黄金人の飲み物は黄金人、つまり王族以外には絶対に飲めないそうだ」
「でも、一段階上になったっていうことなのかな」
「そうだね、少なくとも、食べ物ではそうなったということかな」
テーブルの反対側に数人の黄金人と共にラ・ムーが席についた。
黄金人たちの前にも黄金色のカップが置かれたが、どのような飲み物が入っているのかは見えなかった。
「海を越えて来たと言っていたが、それは船に乗って来たのかね」
間近で聴くラ・ムーの声は声量を落としているせいか、荘厳というよりも、優しく語りかけてくような口調だった。
「大きな船に乗って来たのですが、この島に着いた時に船は岩盤に突き当たり大破しました。生き残ったのは僕とこの男の二人だけです」
アルハザードがありもしないことをスラスラと話した。
ラ・ムーはアルハザードの話をじっと聞いていたが、体からふっと力が抜けたように見えた。
「そうか、それは難儀なことであったな。しばらくはこの王宮に滞在するがいい。客人として迎えよう、よいな」
周りの黄金人たちを見た。皆無表情だった。この島ではこれが肯定ということらしい、ラ・ムーは満足そうに案内係の白色人に「この二人を客人用の部屋に案内しなさい」と告げ、黄金人たちを伴って部屋を出て行った。
「神谷、テーブルの下を見てごらん」
テーブルの下を覗くと、テーブルに足はなく、天板が浮いている状態だった。これは街の定食屋で見た光景と同じだ。
「この国ではこれが普通らしいね」
「さっき僕たちの風貌がいきなり黄色人からこの姿に変わっても何も言われなかったね、それも普通なのかな」
「別にその程度のことは不思議だとは思わないんだろうね」
テーブルの上には花瓶が置かれていて、そこには案内係の胸に刺繍されていた黄金色の花が咲いていた。
「花瓶が置かれているから、初めからあったんだね」
「そうだね、そしてこの液体を飲み終わっても消えないね」
甘酸っぱいジュースを飲み終えると、案内係の女性が脇に立っていた。
「宜しければ、部屋に案内しますが、いかがいたしますか」
「その前にこの王宮の中を見学したいのですが、どうでしょうか」
アルハザードの申し入れに女性は相変わらず無表情に「では、王族の方にその旨のお話をしてきます。このままお待ちください」と言い残してその場を去って行った。
「王宮を見学するって、何かあるのかい」
「それが分からないから見学するんだよ。神谷、憶えてるかい、一番初めに会った白色人は僕を普通の人間ではないと断言した、しかし、次にあった赤色人は何も言わなかった。いや、言わなかったのではない、言えなかったんだ。何も感じなかったんだろう。二人とも精神力増幅装置を積んだ車に乗っていた、だが、感じ方が違っていた。不思議だとは思わないか。そして先ほどのラ・ムーだ。僕たちが黄色人の格好をいきなり解いても何も言わなかった、そして、島の外から来たと聞いて、ひどく困惑した顔をしていた。なぜだだと思う」
「そんなこと分かる訳ないじゃのいか。ずいぶんと色々な疑問を持ったんだね、あの短い時間で」
「そうだ、あの短い時間にたくさんの疑問を持ったんだ、だから、それを調べてみたいのさ」
「それが君の望みを叶えることに関係するのかな」
「この王宮を見ることはこの島、ムー大陸を知ることだ。それに……」
「それに?」
「こいつが、そろそろ神谷のギタラを聴きたがっている。部屋に案内されたら早速弾いてもらいたいそうだ」
そうすれば邪神が何かを教えてくれる、ということだろうか。
神谷の考えが分かったのか、アルハザードが肩に乗っているはずの邪神の方を見てクスリと笑った。
その日は客人用の部屋に案内され、翌日から案内係つきで見学できることになった。部屋のドアはホテルと同じく、壁を触ると上に上がり、中は天井も壁も床も白かった。
案内係の女性は、翌日の朝に迎えに来ることを告げると、去って行った。
「割と広い部屋だね」
白い何もない空間だが、十畳くらいの広さがあった。
床に腰を降ろしたアルハザードの肩のあたりから邪神が飛び降りた。
「こいつが早く弾けって言ってるよ」
何もなかった部屋に白い石が現れた。神谷が座るための椅子なのだろう。今日は部屋と同じ色にしたようだ。
「防音仕様にしないのかな」
「この部屋はギターの音くらいは外に漏れないようにできているそうだ、だから、存分に弾いてくれって言ってるよ」
アルハザードの言葉が聞こえたのか、床に寝転がった邪神が目を細めて小さく「ニャー」と鳴いた。
0
あなたにおすすめの小説
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
自由を愛する妖精姫と、番にすべてを捧げた竜人王子〜すれ違いと絆の先に、恋を知る〜
来栖れいな
ファンタジー
妖精女王と精霊王の間に生まれた特別な存在――セレスティア。
自由を愛し、気ままに生きる彼女のもとに現れたのは、竜人族の王子・サイファルト。
「お前は俺の番だ」
番という名の誓いにすべてを捧げた彼は、王族の地位も未来も捨てて森に現れた。
一方のセレスティアは、まだ“番”の意味すら知らない。
執着と守護。すれ違いと絆。
――これは、ひとりの妖精姫が“特別”に気づいていく物語。
甘さ控えめ、でも確かに溺愛。
異種族の距離を越えて紡がれる、成長と守護のファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる