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ポリティカル・コレクトネスなシンデレラ
しおりを挟む昔昔、そのまた昔。
北欧のどこかの国には王様がいました。小さいながらも国を豊かにし、民の生活を守り、その信頼を得ていました。多かれ少なかれ悪事もありましたが、全体としては平穏で、それなりに満ち足りた国でした。
しかし、偉大な者というのは往々にして短命なのです。その王も病を抱え、死を目前に悩んでいました。目下の命題は、勿論跡継ぎ問題です。
王にはそれはそれは美しい妻がいました。城のダンスパーティーで出会い、大恋愛の末民衆に祝福され、結婚しました。しかし、美人というのも、往々にして薄命というもの。王妃は子を産み、死んでしまいました。善人は死に、悪人は生き長らえる、それが世の理なのでしょう。
そして、王の息子、つまり王子は悪人の一人でした。王妃の美貌を継ぐ美青年であったものの、王の人柄は遺伝しなかったようです。妻の面影を持つ王子に甘くしすぎたせいもありますが、典型的に傲慢な王子となってしまいました。また、王子はたいそうな色好きでもありました。女をとっかえひっかえし、女を泣かし、同時に王を泣かせました。
そんなドラ息子であるものの、王に兄弟はいません。もう王子しかないのです。せめて、身を固めてくれれば…そうだ、自分のような大恋愛をすれば、あの熱しやすい王子のこと。結婚まで踏み切ってくれるかも知れない。
かくして王は専属の秘書兼魔法使いを呼び出し、ある作戦を遂行させました。作戦とは以下の通りです。
まず、とびきりの美人を探す。そして城で開催されるダンスパーティーへ招待する。時を見計らい、何らかの方法──親が事故だとか、とにかく急を要する方法で女を帰らせる。突然現れ、突然消えた女に王子は思い焦がれ、女を探そうとするだろう。それを、やはり何らかの形で邪魔をする。何故なら恋とは困難を乗り越えればそれだけ想いは強固なものとなるからだ。感動的再会を果たした二人は結婚し、そうして身を固めた王子は大人しくなるだろう。子が出来てもいい。きっと心を改め、素晴らしい王となってくれるに違いない。そうなれば安心して死ねるというもの……
国王の大命を受け、魔法使いは美人を探し回りました。しかし、美人はいることにはいるのですが、パッと目を引く者がいません。いたと思っても意地が悪かったりするのです。国中を探し終え、隣国に差し掛かった時です。森で斧を振るう十七、八の少女が目に留まりました。
彼女は、上空から見下ろす魔法使いでもハッとする程の美人でした。しかし、何故だが汚い身なりをしていました。不審に思い後をつけると、どうやら彼女は継母とその娘に虐められているようでした。父親と母親、双子の姉と共に生きていたのですが、母親が死んでしまい、暫くして父親が死んでしまった。その上姉は突然失踪。さらにさらに継母とその娘は意地悪と来た。今も彼女は掃除をさせられています。魔法使いは健気な美女を哀れみ、一計を案じました。
魔法使いは王の従者を装って、その家を訪れます。
「失礼します。私は隣国の王の従者でございます。近日中に行われるダンスパーティーのお誘いにやって来たのです。ところで、お子様は何名いらっしゃるでしょう……」
「まあ、勿論参加させていただきますわ。この子達二人だけですわ…」
「では、お母様を合わせて、三枚の招待状を送らせて頂きます…」
先程の少女は屋根裏部屋の掃除でいませんでした。ですが、魔法使いの思った通りにことは進みました。普通に彼女が来てしまっては良くないからです。
ダンスパーティーの晩、再び魔法使いはかつての家を訪れました。そこにはあくせくと働く少女がいました。魔法使いは声をかけました。
「お母様方はいらっしゃらないのですか?」
「ええ。隣国へダンスパーティーへ出ております」
「おや。貴女は行きたくないのですか?」
「いえ…本当は行きたいのですが、母親が許しませんし、それにこんなみすぼらしい服しか持ってないのですもの」
そこで魔法使いは言いました。
「私はその隣国の魔法使いです。貴女を城のダンスパーティーへ行かせてあげましょう。服は、ほら」
魔法使いが怪しげな呪文を唱えると、みすぼらしい服は素晴らしいドレスへ、すり減った靴はガラスの靴に変わりました。
「まあ、素敵。でも、もう開演に間に合いませんわ」
彼女は驚きと悲しみの混じった声で言いました。
「なあに、それ」
すると小さなネズミが馬に、カボチャは馬車へと変わりました。
「これに乗っておゆきなさい。今宵は王子もいらっしゃいます。ただし、これだけは忘れずに。この魔法は夜の十二時になると解けてしまいます。それまでには帰ってきなさい」
そう言って魔法使いは消えました。残された少女は不思議がっていましたが、やがて馬車に乗り込むと、馬は飛ぶように王宮へと走り出しました。
城で女を物色していた王子は、開演ギリギリに駆け込んだ女に目をつけました。そして、その美しさに驚きました。早速彼女にダンスを申し込むと、それに合わせてオーケストラが荘厳なメロディーを奏で始めます。それは時に熱く、時に優雅に、時に哀愁漂うメロディーでした。二人の距離は時計の針が進むのに従って、縮まりました。王子はもちろん、少女もまた酔いしれ、夢中になって踊りました。
パーティーも最高潮、王子の恋という名の炎もオーバーヒート。曲が終わり興奮冷めぬまま次の曲へ移行しようという、まさにその時、王宮の鐘が十二時を告げました。
ゴロン、ゴロンと鳴る鐘の音は、それはそれは幻想的であり、人々は一時踊りを止めて耳を澄ませました。そんな中少女だけは大慌てです。はやく帰らなければこの美しい服や靴はまさに幻想となってしまう。王子の手を振りほどき、少女は駆け出しました。勿論王子も追います。しかし、少女が必死なのと、王子の運動不足でその差は埋まりません。人混みをするすると抜け出た少女は既に階段に差し掛かっています。全速力で階段をかけ下りる少女。「せめてお名前だけでも」叫ぶ王子。
つい、少女は振り向いてしまいました。やはり大なり小なり、未練があったのです。その拍子に足をもつらせ、何とか転倒は免れたものの、両方の靴が脱げてしまいました。割れこそしなかったものの、音を立てて靴は階段の下へ落ちてしまいました。しかし、少女にそれを拾う余裕はありません。彼女自身の化けの皮が剥がれるより幾分ましです。ので、彼女は裸足で走りました。門を抜けると、馬車は既に待機しています。少女が乗り込むと、それは飛ぶように駆けました。十二時を少し過ぎていましたが、それは魔法使いの心ばかりの配慮とのことです。次第に遠のく馬車の姿を見つめながら王子は固く、心に決めました。彼女こそ運命のヒトに違いない。必ずや探し出し、迎えに行こう。
さて、その隣国のお話。
王宮の一室で隣国の王妃が何やらぶつぶつと独り言を言っているようです。いや、鏡に語りかけているのでした。
「鏡よ、鏡。この世で一番美しいのは誰だい?」
その鏡は魔法の鏡でした。王妃はそうやって毎晩自分の美しさを確認しているのでした。
いつもであれば「王妃様、それは貴女です」と鏡は答え、王妃は満たされた気持ちで眠りにつくのですが、その日ばかりは違いました。
「それは、校外に住む白雪姫という名の少女です」
王妃は激怒した。
かの容姿端麗の女を除かねばならぬと決意した。王妃に政治はわからぬ。けれども美しさに関しては人一倍に敏感であった。
王妃は狩人に命じて白雪姫を殺害させました。
その晩、はやる気持ちを抑えて鏡の前に佇み、尋ねる。「鏡よ鏡…」現代となっても、美しさに固執する者はいますが、王妃のそれは中毒に近かったのでした。一日でも「それは貴女です」と言われなければ気が済まない。そんなわけで王妃は鏡を必死の形相で見つめますが、鏡はまたしても白雪姫の名を告げました。白雪姫の美しさに目と、ついでに心を奪われ、憐れんだ狩人が森の奥へと逃がしたのでした。
狩人はその日のうちに処刑され、「もう誰も信用出来ないわ。私がこの手で白雪姫を殺してやる」と、王妃はある種の禁断症状でうまく働かない頭で意を決しました。
王妃は魔法を少しばかりかじったことがあったので、毒林檎を作って白雪姫に食べさせようと目論みました。どうやら自分の手で作った毒林檎は、直接ではないにしろ、信用出来るようです。一日かけて作った毒林檎を手に、老婆に変身した王妃は森へと向かいました。
狩人に連れられた森の深部には小さな家がありました。寝る場所にも、食べる物にも困っていた白雪姫は躊躇なく侵入しました。帰ってくると言った狩人は帰ってきません。やっぱり、皆そうなんだわ。口ばっかり。母も、父も…自分で何とか生きるしかないのよ。白雪姫は早いうちに母を亡くし、父を亡くし、さらに不幸なことに彼女自身人売りに攫われてしまったのでした。十歳程まで使用人としてある家で働かされていたのですが、持ち前の大胆さと、行動力でそこを脱出。空き家を見つけ一人こっそりと住んでいた時に、この不幸。私の世界には神様なんていないのね。と、悲しみに暮れるよりは寧ろ、こんな世界が狂っているのだわ。私が正してやるわ。まったく、私が王だったら…と考えるのが彼女です。
白雪姫が憤っていると、家の扉が開き、七人の小人が入ってきました。彼らは自分たちの家に勝手に入り込み、さらには食料まで喰らう大の大人に驚きました。が、温厚な小人たちは白雪姫の話を聞き、それならば…と一緒に暮らすことを許してくれました。
ある日、小人たちが働きに出てしまい、一人留守番している時に、来客がありました。白雪姫が不審に思って出てみると、籠いっぱいの林檎を持った老婆が、いて、それは変装した王妃なのですが、「林檎はいらんかえ」と言いました。
何度も練習した上、連日のストレスから皺は増え、実際老いも進んでいた王妃の演技は、まさに実際のそれ。すっかり騙された白雪姫は特別赤く、美味しそうな林檎を買いました。「怪しい人に会ってはいけないよ」という小人たちの忠告も気にしない。先述の通り、彼女は大胆なのです。
多少の増量はあれ、小人たちの少ない食事に腹を空かせていた白雪姫は早速林檎を齧りました。詐欺師が甘い言葉を囁き、食虫植物が甘い香りを発するように、毒林檎は甘い。白雪姫はペロリと平らげると、コテンと倒れました。
王妃はそれを見届け、歓喜に打ち震え王宮へと戻りました。今晩こそ、鏡は満足のいく返事をしてくれよう。しかし、事は王妃の思い描くようにはいきません。冴えない頭のまま作った毒林檎は完全なものではなかったのです。何処かの国の何とかという男がそうであったように、白雪姫は仮死状態となり、何処ぞの国の何とかという女がそうであったように、小人たちは仮死状態の白雪姫を死んだと思い込み葬儀を執り行いました。
葬儀は静かに行われました。気の強い白雪姫に辟易していたものの、いざいなくなると寂しくなるもの。人とはそんなものです。身体の大小は問わない。苦労も過ぎ去ってしまえば美談となり、安寧の中では闘争を求める。そうして戦禍は繰り返される。その事を知ってか知らずか、小人たちはひっそりと葬儀を執り行うのでした。
また場面は変わる。
王子はダンスパーティーで出会った少女を探していました。少女が落としたガラスの靴を手に、国中を探し回りました。何故魔法が解けていないのか?細かい事は気にしない方が正しいこともあります。
しかし、探せど探せど少女は見つかりません。何度も挫けそうになりますが、いやあの人も俺を待っているはずだと自らを鼓舞して探します。その様子に王もご満悦です。
国内を探し終え、隣国の森まで差し掛かりました。森に若い女などいるはずもない。早々と抜けてしまおうと考えたのですが、森は入り組んでいて、遂に王子は迷ってしまいました。彷徨う内にずんずんと深部へと入ってしまいました。これはどうもおかしいと気がついた時には手遅れ。焦り始めた王子の耳に何やらすすり泣きする音が聞こえてきました。まさか、こんな所に人が。しかし、他に頼る所もない。音のする方へ向かいます。
すると、森が開けていて、そこで小さな者達が棺のようなものを囲んで涙を流したり呪文のようなものを唱えたりしていました。葬儀だろうか、いや、小人にしては大きい棺だ…不審に思った王子は小人たちに近づきました。
小人たちは突然の来訪者に驚き、またそれが隣国の王のドラ息子であることに驚きました。そのドラ息子が躊躇いなく棺の元へと進むものだから、小人のリーダーが進み出ました。
「お前たちは何をしているのだ」王子は尋ねました。
「私たちの同居人の白雪姫が死んでしまったので、葬儀をしているのです」リーダーの言葉が終わるや否や、王子は「おお、それは可哀想に」と棺の中を覗き込み、大いに驚愕しました。棺の中の女は目を見張る程の美女だったからです。どことなく、先日の少女を思わせる。いや、彼女にはこんな所にホクロはなかった…いや、そんな事は関係ない。彼女は美人だったが、この者も美人だ。違ったところで、なんだ。
「美しい人よ。目を覚ましてくれないか」
王子は涙を流し、これは見せかけの涙なのですが、眠ったままの白雪姫の唇にキスをしました。王子に何かの意図はなく、あったとすれば下心ですが、愛ニアリーイコール下心の力により毒林檎の呪いは解けてしまいました。悪い魔法に対抗するのはいつだって真実の愛。ところが今回に限っては、王妃の中途半端な魔法は王子の下心で消え去ってしまったのでした。おそらく、王妃の心労が祟ったのでしょう。
王子は長い間キスをしました。その間に白雪姫が蘇生していることに気がつきません。唇を話した時にやっと、彼女が息を吹き返していることに気がつきました。遅れて、小人たちも気がつき、そしてザワザワとしました。
「あれ……私は…」白雪姫が呟くと、「悪い女王に毒を盛られたんだ」小人の一人が説明します。
「そう。そして、一度は死んだ君を私が救ったんだ。いや、私たちと言うべきか。私たちの愛は呪いをも打ち負かしたのだ!」王子がしゃしゃり出てきました。彼は既に自分がダンスパーティーの少女を捜索している途中なのを忘れ、同様に美しい白雪姫へと心をすっかり移してしまっていたのでした。
初めのうちはとろんとした目で話を聞いていた白雪姫でしたが、次第に頭が冴えてきたのか、思案して、そして口に手を当てるとキッと王子を睨みつけました。
「なんてこと!貴方は私が眠っている内にキスをしたっていうのね。それで私を救ったですって?ただでさえ不遇な上命まで狙われ、逃げおおせた先でも少ないご飯を我慢しなきゃいけなくて、もう死のうかと考えていたのに。救っただって?貴方は私にキスをしたばかりか、地獄へ連れ戻しただけじゃない。これは強制わいせつ罪よ。私の自己決定権を侵害してもいるわ。訴えてやる!」
ポリティカル・コレクトネスな社会では何よりもまず個人の権利、特に弱者のそれが重要視されます。それは例え一国の王子であろうと同じです。今までの女なら金の力でどうにも出来ましたが、白雪姫は人一倍気の強いものだから、取り付くしまもありません。同居人を救ってやったと小人たちにすがりつくも、彼らとしても悲しんではいたものの、白雪姫の復活を心から喜ぶものはいないのでした。
二国間の沙汰ということもあり、この問題は国際裁判所に持ち込まれました。法廷で王子は人違いだったと弁明しますが、彼の今までの素行と、何より白雪姫の境遇に同情的な裁判官の前には為す術もない。王子が悪いのだから当然と言えば当然。今までがおかしかった。
いよいよ判決の日。「被告人の全財産及び権力を原告に譲渡することを命ず」
白雪姫は王子の、ひいては国の全権を持つところとなりました。これに最も驚いたのは国王です。各方面に許しを乞うのですが、皆取り合ってくれません。そうして王家は没落しました。
代わって王となった白雪姫は手始めに隣国を攻めました。かつて自分を殺さんとしたあの王妃を懲らしめるためです。白雪姫の名采配により、大きな犠牲はあったものの、戦争に勝利し、王妃を捕らえた白雪姫は王妃を磔にした上殺しました。
隣国を併合したことで国はさらに富みました。国民も従って豊かになりました。況や王妃をや。
白雪姫はその小さな身体いっぱいに詰まったポリティカル・コレクトネス精神をもって国を統治しました。正しい王に抗う民などいましょうか。いや、実の所少しはいました。が、それは過去の話。国はまさに清浄そのもの。これこそ、正常です。コレクトネスです。
まあしかし王ともなれば驕ってしまうもの。白雪姫の境遇を鑑みればそれも仕方ないとすら言える。白雪姫の生活は次第に華美なものとなりました。豪勢な食事、豪奢な服。城にあった美しいガラスの靴も履きました。パーティーの回数も日に日に増し、付き人も若く美しい男を好むようになりました。それらのことに文句を言う者はいません。いや、少しいましたが、全体としては、何だかんだで国をよく治めてくれるのだから…と多少の事は目を瞑ります。
新体制となって五年目の祝典です。
白雪姫はいつもに増して華美な服装に身を包みました。祝杯を終え、日の傾く中最後の挨拶にベランダへと出ました。
眼下に数多とひしめく民衆を一瞥し、マイクを持った、まさにその時です。
「おい、なんて卑猥な格好だ。大衆の面前だってのに。ポリティカル・コレクトネスに反している!」
その大衆は皆、声の主を探しました。白雪姫もです。それは、彼女もよく知る者でした。
「この清浄の国の王に相応しくない格好だ!」
それは、かの元王子でした。とは言え、あまりにみすぼらしい格好をしていますが。
確かに白雪姫は胸元の大きく開き、肩の出るドレスを着ていました。元王子はその事を公序良俗に反すると言ったのです。まさか。彼女は彼女の意思でそうしたのです。
「お前の意思など知るか。相応しくないのにかわりはない!」
元王子は聞く耳を持たず、民衆はざわつき始めました。本気で元王子の言い分を信じるものは少なかったのですが、何やら面白そうだ、と刺激的な娯楽に飢えた彼らは思いました。
白雪姫は使用人に元王子を捕縛させました。捕まえられる際、元王子は言いました。
「おい、若い男ばかりじゃないか。これは男女平等に反するぞ!」
確かに、ボディガードも一応兼ねた側近は若い男ばかりでした。しかしそれ以外に女も多く雇っていたのです。幾分白雪姫の好みもありましたが、それでも適材適所というもの。しかし、王子はやはり聞く耳を持たない。また民衆は面白がって騒ぎ立てる。彼らの声は広がって、やがてデモさながらの状態にまでなりました。なんと楽しい娯楽でしょう!
白川の清きに魚の棲みかねて元の田沼の濁り恋しき…そのようなポエムが東の国にはあるそうですが、まさにそれ。民は奮起し、革命の名の下白雪姫は捕らえられました。
さあ目下の課題は、次なる王は誰か。元王子は革命のきっかけとは言え碌でもないのは明白。さあどうしよう。白雪姫のあまり余る財は民に分配します。そんな中、ガラスの靴だけが誰にもサイズが合わず、残ってしまいました。もう、この靴に合う者が王で良いのではないか。誰かが戯れに言いました。そうする間に本当にガラスの靴にピッタリと合う女が現れました。
冗談でガラスの靴に合うものを王にしようと言った者は、実際にガラスの靴に足を通した女を見て、これは本当に彼女が王で良いのでは。と思いました。その女は外れに住む家の娘で身分は低いものの、誠実な者と知られていました。また、親を幼少期に亡くし、姉と生き別れた不遇の者としても知られていました。
王位を誰にするかで酷く気を揉んでいた民衆は、その女を王とすることに賛同しました。真面目に生きた彼女は信頼出来る。女は戸惑っていましたが、やがて意を決し、王となることにしました。
彼女は素晴らしい王となりました。国を豊かにし、治安を改善し、であるが程々に、刺激的な国を造りました。これらは前王から学び取った結果です。やはり学ぶことは大切なのです。彼女は教育にも力を入れました。
勿論ポリティカル・コレクトネスな精神を忘れません。同時に、それが暴走を産む可能性もしっかり頭に留めているのですから、彼女は賢王と言えるでしょう。
そうして彼女の国は永く栄えました。今その国が存在するのかは知られていませんが、賢王の名は広く知られるところとなりました。
シンデレラ──灰かぶり姫と親しみをもって呼ばれた彼女のサクセスストーリーは、シンデレラ・ストーリーと呼ばれる程に親しまれ、今を生きる私たちに様々な教訓を与えてくれるのです。
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