七夕伝説

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星の継承者たち 七星 姫奈 視点

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 放課後、教室を出た直後だった。

 スマホが震えた。誰かからのメール。
 画面を開いて、私は息を呑んだ。

 《あなたたちのことを知っています。力になりたい。》

 差出人は――見覚えのある名前。
 テレビや雑誌で一度は見たことがある。日本でも有数の名家として知られる家系。
 そして、その同じ瞬間に、流星もスマホを見ていた。

「お前も……か」

 頷き合う。
 これは偶然なんかじゃない。明らかに“狙って”送られたものだ。

 ――私たちの秘密を、知ってる人がいる。
 無視なんて、できるわけがなかった。

 数日後、私たちは都内の静かな住宅街の奥に建つ、古くて大きな屋敷を訪れていた。
 表札には、あの名家の名字が刻まれていた。木彫りで、重みのある字。

 門が開いた瞬間、すっと人影が現れた。黒い和服を着た、年配の男性だった。

「ようこそ。お待ちしておりました――星の継承者たち」

 その言葉に、鳥肌が立った。

 屋敷に通され、奥へ奥へと案内される。
 古びた廊下、磨き抜かれた床、所々に並ぶ掛け軸や陶器。
 静かで、けれどどこかで“時が止まっている”ような感覚がした。

 そして応接室で待っていたのは、屋敷の主。穏やかながら、厳かな雰囲気の中年女性だった。
 彼女は、私たちに静かに語った。

「――私たちの家系は、代々“織姫と彦星の末裔”を守る使命を担ってきました。
 それがあなたたち二人。ようやく、その星が動き始めたのです」

 証拠を見せてくれた。
 屋敷の者たちは皆、首筋に小さな“空洞の星”の痣を持っていた。
 私たちの痣とは違い、空っぽで色の無い、ただの輪郭だけの星。

 でも――確かに、分かった。
 私たちの痣と繋がっている。勘が言っていた。本能が告げていた。

 本当だ。この人たちは、嘘をついていない。

 「あなたたちには、時間がないかもしれません」
 屋敷の主がそう言った。

 「闇は日ごとに力を増しています。ですが、あなたたちはまだ“基礎”すら知らない。ここで、学んでください。守られてください。そして、いずれは……あなたたちが、他を守る側になるのです」

 私と流星は、目を合わせた。
 迷いはあった。学校を離れること、普通の生活を失うこと。
 けれどそれ以上に――この出会いが、逃してはならない“運命”だと分かっていた。

 そして、私たちは決めた。

 この屋敷で生きること。
 星の継承者として、“闇に抗う力”を身につけること。

 翌週、私たちは転校手続きを終えた。
 制服が変わり、通学路が消え、日常の一部が過去になっていった。

 でも、不思議と後悔はなかった。
 それどころか、胸の奥がずっと、静かに――でも確かに、熱くなっていた。

 ――ここから始まる。
 私たちの、本当の戦いが。
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