生きずらさを感じる少女、異世界に転生する

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鍛冶町は、遠くからでもわかるほど煙突が林立し、絶えず赤々とした炎がゆらめいていた。鉄を打つ音が絶え間なく響き、まるで町全体がひとつの巨大な鍛冶場のようだった。葵はそこで、まだ十にも満たないだろう少年と出会った。

少年の顔は煤で黒ずみ、両手は小さな傷で覆われていた。彼は炉の前で、必死にハンマーを振り下ろしていた。
「親父を超えるんだ……!」
ぽたりと汗が床に落ちるたび、その言葉がいっそう強く響いた。

人々から聞いた話によれば、その少年の父はこの町で名を馳せた立派な鍛冶師だった。しかし病で急に亡くなり、遺されたのは未完成の剣と、まだ幼い息子だけ。誰もが少年に無理だと言った。けれど彼は、父を継ぐと誓ったのだ。

葵は彼の姿に、かつて自分が居場所を探してもがいていた頃を重ねた。静かに少年のそばに立ち、声をかける。
「剣はね、ただ鉄を打てば良いものじゃない。心を込めて鍛えなければ、すぐ折れてしまう」

少年は怪訝そうに葵を見た。だが、彼女の黒い瞳がまっすぐであることに気づくと、小さくうなずいた。

葵は日本の記憶から、日本刀の打ち方を思い出す。幾度も火にくぐらせ、叩き、折り返し、鍛え抜く。鋼と鉄を合わせ、しなやかで強靭な刃を生む――それはただの技術ではなく、精神を込める儀式のようなものだった。

「力任せに振るんじゃない。鉄の声を聴きなさい」
「……鉄の声?」
「そう。音の違いで、強さも弱さも教えてくれる」

少年は半信半疑で耳を澄ませながら、何度もハンマーを振った。やがて彼の額には新しい汗が流れ、動きに迷いが消えていった。

月日が経つうちに、少年の背は伸び、腕には逞しい筋肉が宿った。火花を浴びながら打つ姿は、もう幼さを残さない。やがて彼は、かつて父が作りかけた剣を完成させた。それは父の剣を超える輝きを放ち、人々の評判を呼んだ。

数年後、葵が再びその町を訪れたとき、そこには立派な鍛冶屋の看板が掲げられていた。炉の奥から聞こえる力強い打音。あの少年は青年となり、自分の店を持つまでに成長していた。

「葵さん!」
青年は笑顔で手を振った。その顔には誇りと自信が満ちていた。

葵はその姿を見て、胸が温かくなるのを感じた。
――自分はもう、人に何かを残せる存在になっているのだ。
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