5 / 15
二章 クチナシの花
ニ話
しおりを挟む
お艶はそれから、手早く食事の支度をした。
炊きたてのご飯、熱々のネギと豆腐の味噌汁。
芋の煮っ転がしに漬け物。
それに鰹。
「お♪鰹か!」才蔵は破顔した。
見栄っ張りの江戸っ子は鰹に限らず、初物を誰よりも早く食べたがる傾向が強い。
当然値はかなり張るので、出たからと言って、すぐに口に入れられるのは、大店の金持ちぐらいだ。
結局、庶民の才蔵達が食べられるのは、かなり遅くなって……魚河岸でも鰹が珍しくもなくなり、値段もボチボチ落ち着く頃からである。
三太も満面の笑みになった。「オイラ、鰹は今年、初物っすよ。初鰹、女房を質に入れても食いたいってね♪」
「……おやぁ?お前さん、そうなのかい?」お艶は亭主を怨ずるように軽く睨む。
途端に才蔵はブルブル首を振った。「ンな事するけぇ!大事な女房だ。勿体ねえ。おう、三太にはやらなくていいぜ。この罰あたりめ」
「親分~」
「……そうしようかね」
三太は泣きを入れた。「姐さ~ん。もう勘弁しておくんなさい。失言でした!」
その情けない顔に笑ったお艶は、ちゃんと三太にも出してやり、3人は賑やかに食事を取った。
食後の茶をのんびり喫していた三太は、親分の微妙な合図に気が付く。
三太「…!あの、オイラそろそろ…姐さん、ご馳走様でした。美味かった!」
お艶「え?もう帰るのかい?」
炊きたてのご飯、熱々のネギと豆腐の味噌汁。
芋の煮っ転がしに漬け物。
それに鰹。
「お♪鰹か!」才蔵は破顔した。
見栄っ張りの江戸っ子は鰹に限らず、初物を誰よりも早く食べたがる傾向が強い。
当然値はかなり張るので、出たからと言って、すぐに口に入れられるのは、大店の金持ちぐらいだ。
結局、庶民の才蔵達が食べられるのは、かなり遅くなって……魚河岸でも鰹が珍しくもなくなり、値段もボチボチ落ち着く頃からである。
三太も満面の笑みになった。「オイラ、鰹は今年、初物っすよ。初鰹、女房を質に入れても食いたいってね♪」
「……おやぁ?お前さん、そうなのかい?」お艶は亭主を怨ずるように軽く睨む。
途端に才蔵はブルブル首を振った。「ンな事するけぇ!大事な女房だ。勿体ねえ。おう、三太にはやらなくていいぜ。この罰あたりめ」
「親分~」
「……そうしようかね」
三太は泣きを入れた。「姐さ~ん。もう勘弁しておくんなさい。失言でした!」
その情けない顔に笑ったお艶は、ちゃんと三太にも出してやり、3人は賑やかに食事を取った。
食後の茶をのんびり喫していた三太は、親分の微妙な合図に気が付く。
三太「…!あの、オイラそろそろ…姐さん、ご馳走様でした。美味かった!」
お艶「え?もう帰るのかい?」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
月弥総合病院
僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる