【完結】異教(男)の聖女は監禁・強制労働エンドを迎えるはずでした。が、冷徹騎士がオレの手を掴んでいます

藍 雨音(アイ アオト)

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第一章 偽りの聖女と冷徹の騎士

11 聖魔石

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「大規模討伐……なんて。大丈夫なのか……?」

あれは、魔石生成を始めてすぐの頃だったから、聖女職について2か月くらいか。
突然、明日はそれに参加しろと通達が来たものの、詳細が何も分からない。
聞ける人もいない。

おれは悶々としながら、疲れた体で夕刻の勤めに向かっていた。
これから一番の苦行、魔石生成が待っている。

溜息を吐いたところで、廊下の向こうから、さらに憂鬱がやってきた。
やり過ごそうと壁際に避けたのに、そいつはまっすぐオレの方へやって来る。

「何を考えている! 大規模討伐に参加するなど……!」

ああ、こいつの所へも一方が行ったらしい。つまり、もうオレが参加するのは確定事項。
憤るリンドヴァルに苦笑して見上げた。

「リンドヴァル卿、それを私に言われても」

盛大な舌打ちが聞こえた。オレに参加してほしくないらしい。
ただ、何か言いたげにじっと見下ろすものの、中々その口は開かれない。

……そうか、聞くならこいつだ。気分は悪いが、嘘はつかない……はず。



――けど、聞かなきゃよかった。
輪をかけて憂鬱になりながら、人目を憚って作業部屋に入る。
国によると、オレが魔石生成できることは、他言無用の機密事項だそう。
オレの身に危険が及ぶから、なんて。嘘じゃないだろうけど、本当でもないよな。

扉を閉めるか閉めないかのうちに、待ちかねたように担当が小箱を押し付けて来た。

「今日は大規模討伐に向け、少し多めにお願いしたい」
「多めに、ですか……。でも、私も明日参加するのですが」
「ええ、そのため、明日は回復薬も用意されています」

思わず眉をひそめた。
この、魔力回復薬、というのが曲者だ。確かに多少魔力は回復するのだけど、副作用がひどい。二日酔いのような……と言えばいいだろうか。
小箱の中には、3個の小さな白い石。いけるだろうか、このサイズ。

火や水魔石と違って、聖魔石、というのは自然に見つかることが稀なのだそう。他の魔石は、それぞれの魔力が豊富な魔物から採れるそうだけど、聖魔力を持つ魔物というのがいないせいだ。

急かす視線を感じ、渋々石を一つ摘まみ上げて魔道具にセットする。
平たいゴブレット風の台座に七本の鎖が繋がった、どこか物々しい雰囲気の魔道具。
息を吐き、垂れた鎖の一つを握った。

「うっ……」

途端、バリバリと全身を巡る稲妻のような痛み。
魔石をひとつ作るのに、かなりの魔力が必要だ。それはきっとどの属性であっても。この鎖だって7本あるのは、そういうことだ。

薄々気付いている。この魔道具が何なのか。
きっとこれは、囚人や捕虜の枷に繋ぐもの。強制的に魔力を搾り取るための……。
絶対に、聖女に……というか一般の人間に使うものじゃない。
誰だよ、聖女オレに使わせたらお手軽に聖魔石ができるかも、なんて思いついたやつは。

「はあ、はあ……」
「素晴らしい……! エルディア様、本当に素晴らしいですよ!」

こんな時だけ褒められて、だけどその視線は出来上がった透明な聖魔石にしか向いていない。素晴らしいのは、魔石なんだろう。

「明日も心配には及びません、聖女宮騎士隊長を護衛につけることになっていますので」
「…………心強いです」

だから、怒ってたんだろうなあ。

これは、オレがどのくらい使えるか、そのお試しの一環なんだろう。魔石生成にしろ、大規模討伐にしろ、新しく入った人材がどこまでできるか判断する、試用期間。
大きく息を吐いて、もう一つ魔石を手に取った。


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