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ヘタレマスターに召喚されたんだが
カエン様、ダンジョンへご案内!
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「違いねぇ! まあ俺様のトコで正解だ。他のギルドでこんな話してみろ。お前、確実に殺されてたぜ?」
……そりゃそうだろうな。
今だって、ゼロはどうだか知らねえが、正直俺は警戒心バリバリだ。この火龍をどこまで信用していいかなんて、まだ分からない。
火龍は少し思案した後、ニヤリと笑ってこう切り出した。
「よし、ここからは商談だ」
俺達の反応を楽しむように、ヤツが一拍おく。自然に、喉がゴクリと鳴った。
「取り引きの基本は信頼関係だ。お前らが俺様を本気で信頼するなら、全面的にバックアップしてやってもいいぜぇ? お前らの事は結構気に入ったからなぁ」
うわ、イヤな予感しかしない。 ぶっちゃけムチャを言う前フリにしか聞こえねぇし!
「……何が言いたいんだよ」
俺の喉からは、思わず唸るような声が漏れる。火龍のニヤニヤは最高潮に達した。
「お前らのダンジョンの、マスタールームに招待しな」
昨日に続いて2度目の絶望感。
ムチャにも限度があるだろう! 用心深いマスターなら、仲間ですら入れない心臓部だぞ!?
「言っとくが、俺様は転移の魔法は習得済みだ。よぉ~く考えて返事しな」
つまり、1度招待したが最後、次からはダイレクトにマスタールームにアクセス出来るって事か。
最悪だな。
火龍という強大な後ろ盾を得る代わりに、瞬殺されるリスクを負うって訳ね。ハイリスク&ハイリターン過ぎて、いっそ清々しい。
ゼロと目があったから、好きにしろ、と頷いた。こいつの答えなんか分かってるしな。
もちろん、「ご招待します!」だ。
*********************************
それから小一時間の後、何故か俺達は高級レストランで上品なメシを食っていた。
俺達の答えに満足した火龍に、「ちょっと野暮用済ませてくるから、メシでも食ってな」と、ここに放り込まれたからだ。
まぁ、奢りだから文句ねぇけどな。ゼロも幸せそうだし。
「なぁ、ゼロ。もうこんな肝の冷える事はごめんだ。今度から、せめて相談してからにしてくれよ」
思わずこぼす俺に、ゼロは困ったように笑っている。
「だって言ったらハク、絶対止めるだろ? むしろ外にも出してくれなくなるんじゃないかって思ったから」
確かにそれは否定出来ない。図星過ぎて俺は口をへの字に曲げる。
そりゃそうだが。だとしても!
「今回はたまたま上手く行ったから良かったけど」
言いかけた俺をゼロは「大丈夫!」と遮った。
「僕、ハクのおかげで今、相当運いい筈だし! だから、たぶん大丈夫!」
いや、運って。
呆れる俺に「今度から、出来るだけちゃんと言うから。ね?」と満面の笑み。
なんか誤魔化された気もするが、いまさらしのごの言っても状況が変わるわけでもない。とりあえずは、これから先のことを考えなければ。
上機嫌で戻って来た火龍と合流し、俺達はいよいよダンジョンに戻る。
もう後戻りは出来ない。
いざ、ダンジョンへ!
*******************************
そんなこんなで火龍を連れてダンジョンに戻った俺達だが、マスタールームに入るなり、火龍はまた腹を抱えて大爆笑している。
まぁ、ベッドしかないしな、この部屋。
ゼロは既に寝転んでるしな。
そりゃ緊張感ないよな。分かるけどさ。
キッチンがある自分の部屋で、一人グチりながらお茶を淹れる。マスタールームに戻ると、2人はベッド上で思い思いに寛いでいた。
つーか火龍、馴染み過ぎだ。
既に俺よりはるかにくつろいだ様子になっている火龍に若干のイラつきを覚えつつ、声をかけようとして……俺ははたと気が付いた。
そういえば、この火龍の名前さえ知らない。
「なぁ火龍、あんた名前は?」
「カエン」
ストレートに聞いてみたら、案外あっさりと答えてくれる。お互いに簡単な自己紹介を終えると、カエンはいたずらっぽく笑って、さっき何処に行ってたと思う? と切り出した。
「実はお前達の事を話しに、王宮に行ってきた」
「はぁ!?」
「冒険者の訓練施設作りたいって言ってたじゃねえか。王室に話を通しといた方が話が早いからな」
「あ、ああ、なるほど」
「めでたく王国公認の訓練施設に認定されたぜ。良かったな」
意味がわからない。っていうかぶっちゃけ話が見えないんですが。
「王国公認さえ抑えとけば、他のギルドも他国からの冒険者も、簡単には手出し出来ねぇぜ? 暫くは安泰って訳だ」
な、なんだそれ、凄すぎる!!
「あ、ありがとう~! カエン凄い!」
ゼロは踊りだしそうなくらい喜んでいる。それにしても、話が早過ぎやしないか? そう思ってつい問いかければ、カエンはニヤリと笑って見せた。
「オレ様にも王にも、でかいメリットがあるからなぁ」
その言葉に、俺とゼロは思わず顔を見合わせたけれど、カエンには、本当に意外すぎる、俺達に協力する理由があった。
「オレ様は、実はこの国の初代国王の冒険者仲間でなぁ。今でも代々の国王の相談役になってんだ」
なんとこの火龍は、建国からずっとこの国を見守り続け、歴代の王と協力して問題を解決してきた、守護龍のような存在らしい。
「まぁそんで今、オレ様達が困ってんのは他でもねぇ、ダンジョンの発生だ。潰しても潰しても新しく出来やがってキリがねぇ」
「やっぱり、つぶすんだ……」
「当たり前だ。初期はたいしたことなくても、でかくなりゃ近隣の村や町を襲ったりするからな」
ゼロの小さな呟きに、さも当然、といった顔で放たれるカエンの答え。
内心肝が冷えた。ここで出会ってなければ、むしろ俺達のダンジョンも近い将来潰されていたんだろう。
「ダンジョンが増え始めたのは、ここ数百年だ。しかも、人為的なニオイがしやがる」
誰が何の目的で作っているのか。
どんな仕組みでどんな事が出来るのか。
少しでも多くダンジョンの情報を得るために、カエンは冒険者が集まるギルドを運営していたらしい。
王様はカエンから俺たちの話を聞いて、「ダンジョンの仕組みを研究出来る、またとない機会だ」と、二つ返事で支援を約束してくれたそうだ。
ちなみに、訓練施設の構想については大絶賛だったらしい。
「冒険者の訓練施設を作るにゃ金と時間がべらぼうにかかるからなぁ。お前らが造ってくれるってんなら願ったり叶ったりってことだ。練兵場も出来るかも、って喜んでたぜぇ!」
なるほど、王様もなかなかちゃっかりしている。
カエンと王様にとって、俺達が利用価値が高いと分かり、とりあえず安心する。それならばきっと、そう簡単には殺されたりしないだろう。ある意味、心強い味方が増えたと言える。
「ゼロ、良かったな。カエンや王様のためにも、いい訓練所作らなきゃな」
「うん!」
ほっとしてゼロに話しかけたら、ゼロも嬉しそうに笑顔を見せた。
良かった、ゼロの目にも生気が宿ってきたな。
「ああ~楽しくなってきた!どうしよう、どんなダンジョンがいいかな?」
人を殺さなくていいと思った途端すっかり気が楽になったのか、ゼロも楽しそうにダンジョンの話をするようになってきた。
いい傾向だ。何よりやる気が出て来たってのがありがたい。
「冒険者のレベルアップが目的なんだろ? レベルに応じた難易度があるといいよな」
「初心者は結構、退き際の判断が甘ぇからな、お灸を据えるくれぇで丁度いい。実践で死なせねぇための訓練所だからなぁ」
「でもさ、クリアしたら、何かご褒美があると嬉しいよね」
思い思いの意見を言い合い、作りたいダンジョンの構想が朧気ながら見えてきた頃、ふと気付いたように、カエンが言った。
「そう言やぁ、このダンジョンって、街からは遠いのか? あんまり離れてっと、本気で低レベルのヤツぁ生きてたどり着けねえかも知れねえぞ」
カエンの言葉にぎょっとして、俺とゼロは顔を見合わせた。
俺たちのダンジョンが、どれくらいカエン達の街と離れてるかなんて知らねえし。だいたいこのダンジョンが今どこに位置しているか自体わからない。
ゼロが慌ててダンジョンコアに確認する羽目になった。
「えっとね、現状アルファーナから結構離れた場所にあるみたいなんだけど、ダンジョンを解放するまでは場所を変えられるんだって」
「へえ、便利だな」
素直に感心した俺と違って、カエンは苦い顔で眉をしかめている。
「チッ、とんでもねえな。どうなってんだ」
「あとね、ダンジョンの入り口も好きな場所に設置出来るんだって」
「……ほう」
それを聞いたカエンはニンマリと笑う。何か思いついたらしい。
「よし、そんならオレ様のギルドの中に入り口を繋げ! 絶対に安全だぜぇ? お前らもいつでも街で遊べるじゃねぇか」
確かにギルドの中なら、 カエンが門番をしてくれるも同然だ。これ以上安全な場所はないかもしれない。
さりげなくゼロを見たら、ゼロもしっかりと頷いた。
早速ゼロが、ダンジョンコアに指示を出し、ダンジョンコアからは、機械的なアナウンスが流される。
『ダンジョンが開放されました』
その途端。
ビーーーーッ
ビーーーーッ
ビーーーーッ
けたたましく警報がなり響き、さらに冷静なアナウンスが流れる。
『ダンジョンに侵入者が現れました』
ええっ!? 今ダンジョン開放したばっかりだぞ!?
慌てふためいたゼロが、ダンジョンコアにとびついて……気が抜けたようにため息をついた。
「なんだ、カエンだ」
「へ? さっきからいたじゃねえか。なんで急に……あっ、入り口繋げたから、ダンジョンとして機能しはじめたってことか?」
「たぶん」
ビビった。いきなり戦闘かと思った。
俺も密かにほっと胸をなで下ろしていたら、カエンのニヤニヤ顔と目があってしまった。
「侵入者らしく、軽~く手合わせしてやろうかぁ?」
め、めっそうもない!
俺は全力で固辞する。冗談で一撃くらっただけで、軽く死ねるっつーの!
なのに、カエンは肩眉をあげて威嚇してきた。
「言っとくがシャレじゃねぇぜ? このダンジョンはもう開放しちまってるからなぁ。ほぼ唯一の戦力にしちゃあ、お前はまだ弱過ぎる」
俺様がいねぇ時どうすんだ、と言われると返す言葉がない。
「おっしゃ、じゃーやるかぁ!」
上機嫌のカエンに引き摺られ、いやいやながら組手を始める。
ゼロが「いいなぁ、僕も……」と呟いたのが聞こえたけど、お前ふざけんなよ。一歩まちがったら死ぬからな?
2時間近くも鬼のようなしごきを受け、ガックリと膝をつく俺。
「しょーがねぇなぁ、続きは明日な」
そう笑うと、カエンは足取りも軽く帰っていった。そして、カエンの姿が消えるなり、高らかになるファンファーレ。
「侵入者を撃退しました!」
ああ、そう言えば侵入者扱いだったな……。そんな事を考えながら、俺は意識を手放した。
……そりゃそうだろうな。
今だって、ゼロはどうだか知らねえが、正直俺は警戒心バリバリだ。この火龍をどこまで信用していいかなんて、まだ分からない。
火龍は少し思案した後、ニヤリと笑ってこう切り出した。
「よし、ここからは商談だ」
俺達の反応を楽しむように、ヤツが一拍おく。自然に、喉がゴクリと鳴った。
「取り引きの基本は信頼関係だ。お前らが俺様を本気で信頼するなら、全面的にバックアップしてやってもいいぜぇ? お前らの事は結構気に入ったからなぁ」
うわ、イヤな予感しかしない。 ぶっちゃけムチャを言う前フリにしか聞こえねぇし!
「……何が言いたいんだよ」
俺の喉からは、思わず唸るような声が漏れる。火龍のニヤニヤは最高潮に達した。
「お前らのダンジョンの、マスタールームに招待しな」
昨日に続いて2度目の絶望感。
ムチャにも限度があるだろう! 用心深いマスターなら、仲間ですら入れない心臓部だぞ!?
「言っとくが、俺様は転移の魔法は習得済みだ。よぉ~く考えて返事しな」
つまり、1度招待したが最後、次からはダイレクトにマスタールームにアクセス出来るって事か。
最悪だな。
火龍という強大な後ろ盾を得る代わりに、瞬殺されるリスクを負うって訳ね。ハイリスク&ハイリターン過ぎて、いっそ清々しい。
ゼロと目があったから、好きにしろ、と頷いた。こいつの答えなんか分かってるしな。
もちろん、「ご招待します!」だ。
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それから小一時間の後、何故か俺達は高級レストランで上品なメシを食っていた。
俺達の答えに満足した火龍に、「ちょっと野暮用済ませてくるから、メシでも食ってな」と、ここに放り込まれたからだ。
まぁ、奢りだから文句ねぇけどな。ゼロも幸せそうだし。
「なぁ、ゼロ。もうこんな肝の冷える事はごめんだ。今度から、せめて相談してからにしてくれよ」
思わずこぼす俺に、ゼロは困ったように笑っている。
「だって言ったらハク、絶対止めるだろ? むしろ外にも出してくれなくなるんじゃないかって思ったから」
確かにそれは否定出来ない。図星過ぎて俺は口をへの字に曲げる。
そりゃそうだが。だとしても!
「今回はたまたま上手く行ったから良かったけど」
言いかけた俺をゼロは「大丈夫!」と遮った。
「僕、ハクのおかげで今、相当運いい筈だし! だから、たぶん大丈夫!」
いや、運って。
呆れる俺に「今度から、出来るだけちゃんと言うから。ね?」と満面の笑み。
なんか誤魔化された気もするが、いまさらしのごの言っても状況が変わるわけでもない。とりあえずは、これから先のことを考えなければ。
上機嫌で戻って来た火龍と合流し、俺達はいよいよダンジョンに戻る。
もう後戻りは出来ない。
いざ、ダンジョンへ!
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そんなこんなで火龍を連れてダンジョンに戻った俺達だが、マスタールームに入るなり、火龍はまた腹を抱えて大爆笑している。
まぁ、ベッドしかないしな、この部屋。
ゼロは既に寝転んでるしな。
そりゃ緊張感ないよな。分かるけどさ。
キッチンがある自分の部屋で、一人グチりながらお茶を淹れる。マスタールームに戻ると、2人はベッド上で思い思いに寛いでいた。
つーか火龍、馴染み過ぎだ。
既に俺よりはるかにくつろいだ様子になっている火龍に若干のイラつきを覚えつつ、声をかけようとして……俺ははたと気が付いた。
そういえば、この火龍の名前さえ知らない。
「なぁ火龍、あんた名前は?」
「カエン」
ストレートに聞いてみたら、案外あっさりと答えてくれる。お互いに簡単な自己紹介を終えると、カエンはいたずらっぽく笑って、さっき何処に行ってたと思う? と切り出した。
「実はお前達の事を話しに、王宮に行ってきた」
「はぁ!?」
「冒険者の訓練施設作りたいって言ってたじゃねえか。王室に話を通しといた方が話が早いからな」
「あ、ああ、なるほど」
「めでたく王国公認の訓練施設に認定されたぜ。良かったな」
意味がわからない。っていうかぶっちゃけ話が見えないんですが。
「王国公認さえ抑えとけば、他のギルドも他国からの冒険者も、簡単には手出し出来ねぇぜ? 暫くは安泰って訳だ」
な、なんだそれ、凄すぎる!!
「あ、ありがとう~! カエン凄い!」
ゼロは踊りだしそうなくらい喜んでいる。それにしても、話が早過ぎやしないか? そう思ってつい問いかければ、カエンはニヤリと笑って見せた。
「オレ様にも王にも、でかいメリットがあるからなぁ」
その言葉に、俺とゼロは思わず顔を見合わせたけれど、カエンには、本当に意外すぎる、俺達に協力する理由があった。
「オレ様は、実はこの国の初代国王の冒険者仲間でなぁ。今でも代々の国王の相談役になってんだ」
なんとこの火龍は、建国からずっとこの国を見守り続け、歴代の王と協力して問題を解決してきた、守護龍のような存在らしい。
「まぁそんで今、オレ様達が困ってんのは他でもねぇ、ダンジョンの発生だ。潰しても潰しても新しく出来やがってキリがねぇ」
「やっぱり、つぶすんだ……」
「当たり前だ。初期はたいしたことなくても、でかくなりゃ近隣の村や町を襲ったりするからな」
ゼロの小さな呟きに、さも当然、といった顔で放たれるカエンの答え。
内心肝が冷えた。ここで出会ってなければ、むしろ俺達のダンジョンも近い将来潰されていたんだろう。
「ダンジョンが増え始めたのは、ここ数百年だ。しかも、人為的なニオイがしやがる」
誰が何の目的で作っているのか。
どんな仕組みでどんな事が出来るのか。
少しでも多くダンジョンの情報を得るために、カエンは冒険者が集まるギルドを運営していたらしい。
王様はカエンから俺たちの話を聞いて、「ダンジョンの仕組みを研究出来る、またとない機会だ」と、二つ返事で支援を約束してくれたそうだ。
ちなみに、訓練施設の構想については大絶賛だったらしい。
「冒険者の訓練施設を作るにゃ金と時間がべらぼうにかかるからなぁ。お前らが造ってくれるってんなら願ったり叶ったりってことだ。練兵場も出来るかも、って喜んでたぜぇ!」
なるほど、王様もなかなかちゃっかりしている。
カエンと王様にとって、俺達が利用価値が高いと分かり、とりあえず安心する。それならばきっと、そう簡単には殺されたりしないだろう。ある意味、心強い味方が増えたと言える。
「ゼロ、良かったな。カエンや王様のためにも、いい訓練所作らなきゃな」
「うん!」
ほっとしてゼロに話しかけたら、ゼロも嬉しそうに笑顔を見せた。
良かった、ゼロの目にも生気が宿ってきたな。
「ああ~楽しくなってきた!どうしよう、どんなダンジョンがいいかな?」
人を殺さなくていいと思った途端すっかり気が楽になったのか、ゼロも楽しそうにダンジョンの話をするようになってきた。
いい傾向だ。何よりやる気が出て来たってのがありがたい。
「冒険者のレベルアップが目的なんだろ? レベルに応じた難易度があるといいよな」
「初心者は結構、退き際の判断が甘ぇからな、お灸を据えるくれぇで丁度いい。実践で死なせねぇための訓練所だからなぁ」
「でもさ、クリアしたら、何かご褒美があると嬉しいよね」
思い思いの意見を言い合い、作りたいダンジョンの構想が朧気ながら見えてきた頃、ふと気付いたように、カエンが言った。
「そう言やぁ、このダンジョンって、街からは遠いのか? あんまり離れてっと、本気で低レベルのヤツぁ生きてたどり着けねえかも知れねえぞ」
カエンの言葉にぎょっとして、俺とゼロは顔を見合わせた。
俺たちのダンジョンが、どれくらいカエン達の街と離れてるかなんて知らねえし。だいたいこのダンジョンが今どこに位置しているか自体わからない。
ゼロが慌ててダンジョンコアに確認する羽目になった。
「えっとね、現状アルファーナから結構離れた場所にあるみたいなんだけど、ダンジョンを解放するまでは場所を変えられるんだって」
「へえ、便利だな」
素直に感心した俺と違って、カエンは苦い顔で眉をしかめている。
「チッ、とんでもねえな。どうなってんだ」
「あとね、ダンジョンの入り口も好きな場所に設置出来るんだって」
「……ほう」
それを聞いたカエンはニンマリと笑う。何か思いついたらしい。
「よし、そんならオレ様のギルドの中に入り口を繋げ! 絶対に安全だぜぇ? お前らもいつでも街で遊べるじゃねぇか」
確かにギルドの中なら、 カエンが門番をしてくれるも同然だ。これ以上安全な場所はないかもしれない。
さりげなくゼロを見たら、ゼロもしっかりと頷いた。
早速ゼロが、ダンジョンコアに指示を出し、ダンジョンコアからは、機械的なアナウンスが流される。
『ダンジョンが開放されました』
その途端。
ビーーーーッ
ビーーーーッ
ビーーーーッ
けたたましく警報がなり響き、さらに冷静なアナウンスが流れる。
『ダンジョンに侵入者が現れました』
ええっ!? 今ダンジョン開放したばっかりだぞ!?
慌てふためいたゼロが、ダンジョンコアにとびついて……気が抜けたようにため息をついた。
「なんだ、カエンだ」
「へ? さっきからいたじゃねえか。なんで急に……あっ、入り口繋げたから、ダンジョンとして機能しはじめたってことか?」
「たぶん」
ビビった。いきなり戦闘かと思った。
俺も密かにほっと胸をなで下ろしていたら、カエンのニヤニヤ顔と目があってしまった。
「侵入者らしく、軽~く手合わせしてやろうかぁ?」
め、めっそうもない!
俺は全力で固辞する。冗談で一撃くらっただけで、軽く死ねるっつーの!
なのに、カエンは肩眉をあげて威嚇してきた。
「言っとくがシャレじゃねぇぜ? このダンジョンはもう開放しちまってるからなぁ。ほぼ唯一の戦力にしちゃあ、お前はまだ弱過ぎる」
俺様がいねぇ時どうすんだ、と言われると返す言葉がない。
「おっしゃ、じゃーやるかぁ!」
上機嫌のカエンに引き摺られ、いやいやながら組手を始める。
ゼロが「いいなぁ、僕も……」と呟いたのが聞こえたけど、お前ふざけんなよ。一歩まちがったら死ぬからな?
2時間近くも鬼のようなしごきを受け、ガックリと膝をつく俺。
「しょーがねぇなぁ、続きは明日な」
そう笑うと、カエンは足取りも軽く帰っていった。そして、カエンの姿が消えるなり、高らかになるファンファーレ。
「侵入者を撃退しました!」
ああ、そう言えば侵入者扱いだったな……。そんな事を考えながら、俺は意識を手放した。
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