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【ルシャ視点】腹を割って話すか
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「なるほど、賢いな」
急に、騎士団長がニヤッと悪い笑みを浮かべた。
「私が婚約者などをさっさと決めてしまわないように、先手を打ちに来たわけか」
一瞬迷った。
純真無垢な風を装うか、腹を割って話すか。
でも、僕はすっかりレオニーを好きになっていて、この騎士団長も気に入っている。いつかはバレる嘘なんかついても仕方が無い。ありのままの僕でいようと瞬時に思った。
「はい。婚約者が決まってからじゃ、僕なんかじゃ手も足も出なくなっちゃうんで、チャンスが欲しいと思ってお願いにきました」
「なるほど、承知した」
「いいんですか!?」
「いいもなにも、レオニーと君の問題だからな。私はそもそも早急に婚約者を見つけようとは思っていないし、レオニーが心から共にいたいと思う相手なら、反対する気も無い」
「お父様……! 男前……!!!」
「まだ早い。男前、という言葉だけ受け取っておこう」
「はい! お父様と呼べるようになるように頑張ります!!!」
「ははは、楽しみだな」
騎士団長が機嫌良く笑ったタイミングでノックの音がした。
「レオニーが戻ったようだな」
「そうですね」
「頑張りなさい、そう呼んで貰える日を楽しみにしているよ」
ニヤリとニヒルに笑って見せて、騎士団長はレオニーを応接室へと招き入れる。
言質はとった。
安堵とともに、新たな緊張感も得た。
レオニーが心から共にいたいと思う相手なら反対する気も無いって事は、結局選ぶのはレオニーって事だから、ますますダグラスやその他のヤツらに負けるわけにはいかない。
レオニー、僕、頑張るから……絶対に僕を選んでね。
レオニーも交えて薬やクリームの話に花を咲かせながらも、僕はレオニーにそう願いを込めた。
***
その翌週のお休みの日、僕はレオニーと一緒に僕が今住んでいる管理小屋に居た。
なんせレオニーは平日は剣の鍛錬に明け暮れてるから、お休みの日で無いとこんな風にゆっくり会えたりしない。ちょっと寂しいけど、僕には僕でやらなきゃいけないことがいっぱいあるから、これはこれでいい。会える日を精一杯楽しめればいいと思うんだ。
今日はレオニーに見せたい物があるから、あえて採取には出ずに管理小屋にいる。
「ルシャ、もしかしてこれ……」
「あ、うん。それね、夜会に行く時のタキシードだよ」
そう、このタキシードだ。
色は黒に近いような濃いシルバーカラーだけど、かなり光沢があって上品な煌めきを放っている。僕がふわっとした雰囲気だから、逆にシャープなシルエットとラインでちょっとでもかっこよく見えるように頑張った。
「かっこいいな……」
タキシードに見蕩れてたレオニーが、ぽつんとそう呟いてくれた。
気に入ってくれたみたいでなによりだ。
「でもこれ、ちょっと大きすぎないか? ルシャが着たらぶかぶかになりそうだけど」
「そう思うでしょ」
僕は思わずにんまりと口角をあげた。
急に、騎士団長がニヤッと悪い笑みを浮かべた。
「私が婚約者などをさっさと決めてしまわないように、先手を打ちに来たわけか」
一瞬迷った。
純真無垢な風を装うか、腹を割って話すか。
でも、僕はすっかりレオニーを好きになっていて、この騎士団長も気に入っている。いつかはバレる嘘なんかついても仕方が無い。ありのままの僕でいようと瞬時に思った。
「はい。婚約者が決まってからじゃ、僕なんかじゃ手も足も出なくなっちゃうんで、チャンスが欲しいと思ってお願いにきました」
「なるほど、承知した」
「いいんですか!?」
「いいもなにも、レオニーと君の問題だからな。私はそもそも早急に婚約者を見つけようとは思っていないし、レオニーが心から共にいたいと思う相手なら、反対する気も無い」
「お父様……! 男前……!!!」
「まだ早い。男前、という言葉だけ受け取っておこう」
「はい! お父様と呼べるようになるように頑張ります!!!」
「ははは、楽しみだな」
騎士団長が機嫌良く笑ったタイミングでノックの音がした。
「レオニーが戻ったようだな」
「そうですね」
「頑張りなさい、そう呼んで貰える日を楽しみにしているよ」
ニヤリとニヒルに笑って見せて、騎士団長はレオニーを応接室へと招き入れる。
言質はとった。
安堵とともに、新たな緊張感も得た。
レオニーが心から共にいたいと思う相手なら反対する気も無いって事は、結局選ぶのはレオニーって事だから、ますますダグラスやその他のヤツらに負けるわけにはいかない。
レオニー、僕、頑張るから……絶対に僕を選んでね。
レオニーも交えて薬やクリームの話に花を咲かせながらも、僕はレオニーにそう願いを込めた。
***
その翌週のお休みの日、僕はレオニーと一緒に僕が今住んでいる管理小屋に居た。
なんせレオニーは平日は剣の鍛錬に明け暮れてるから、お休みの日で無いとこんな風にゆっくり会えたりしない。ちょっと寂しいけど、僕には僕でやらなきゃいけないことがいっぱいあるから、これはこれでいい。会える日を精一杯楽しめればいいと思うんだ。
今日はレオニーに見せたい物があるから、あえて採取には出ずに管理小屋にいる。
「ルシャ、もしかしてこれ……」
「あ、うん。それね、夜会に行く時のタキシードだよ」
そう、このタキシードだ。
色は黒に近いような濃いシルバーカラーだけど、かなり光沢があって上品な煌めきを放っている。僕がふわっとした雰囲気だから、逆にシャープなシルエットとラインでちょっとでもかっこよく見えるように頑張った。
「かっこいいな……」
タキシードに見蕩れてたレオニーが、ぽつんとそう呟いてくれた。
気に入ってくれたみたいでなによりだ。
「でもこれ、ちょっと大きすぎないか? ルシャが着たらぶかぶかになりそうだけど」
「そう思うでしょ」
僕は思わずにんまりと口角をあげた。
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