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悩ましい問題だ

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「でもこれ、ちょっと大きすぎないか? ルシャが着たらぶかぶかになりそうだけど」

正直に疑問を口にした私に、ルシャは嬉しそうに笑ってみせる。

「そう思うでしょ」

そう言いながら、スーツのジャケットを手に取って自分の体にあててみる。やっぱり肩幅なんて全然合っていないし、袖もかなり長い。大きすぎるのは明らかだった。ところがルシャは、得意げな顔をして私を見上げる。

自信たっぷり。可愛くて、私が大好きな顔だ。

「見てて」

ヒラ、とジャケットが翻る。

ルシャがジャケットに袖を通すと、なぜか袖がぴったりと合った。

「え?」

驚いている間にジャケットを着終わったルシャを見ると、ジャケットはあつらえたように体にフィットしている。

「凄いな……! これも錬金術かい?」

「もちろん。着る人の体に合うような付加効果をつけたんだ」

「とんでもないことを考えるなぁ。でも、これは便利だな。私でも着ることが出来るのか?」

「着てみる?」

ジャケットを脱ごうとしたルシャは、突然動きを止めて、困った顔で私を見上げてきた。

「やっぱりダメ」

「?」

「レオニーが着て、僕より似合ってたら着ていく自信がなくなる……」

「……っ」

上目遣いであまりにも可愛い事を言う物だから、ちょっと萌えた。

「そんな事ないとは思うけど、ルシャが嫌ならやめておこう。当日は、その素敵なスーツに似合うように私も精一杯準備してくるよ」

「うん、楽しみにしてる!」

当日はこのスーツに、私の髪色と同じアイテムを身につけてくれるんだろうか。

それを想像すると、可愛くてかっこいいルシャが脳内で再生された。

楽しみだが……困ったな。

そう思った。

***

邸に戻った私は、早速お母様にドレスの相談をしていた。

「ルシャ様は濃いシルバーのシャープなシルエットのスーツなのよね」

「うん、チーフとラベルピンは多分私の髪色を入れてくれると思う」

「素敵ねぇ……」

「ただ、ルシャが着るととても可愛かった」

「殿方にそんな事を言ってはダメよ?」

お母様にたしなめられてしまった。でも本当に可愛かったんだ。

「さすがに言わないよ。問題は私がどうするか、なんだよなぁ……」

「まぁ、何か悩むことがあって?」

「デビュタントはふわっふわな可愛さ全開のドレスだから、絶対に私には似合わないし困ったなと思って」

そうなんだよね。

ルシャは「レオニーが着て、僕より似合ってたら着ていく自信がなくなる」なんて言っていたけれど、私も同じ悩みを抱えている。

私がドレスを着たところで、ルシャより可愛くなれるわけがないし、第一似合わないんだよね……。
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