あたし、スライム。初めての恋をしました

真弓りの

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彼らの危惧

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「これまでに犠牲になった商隊から奪ったものだろうね」


魔術師さんの静かな声に、周りの仲間達も沈痛な顔で俯く。さほど古びてもいないその装備は、このゴブリン達がそう遠くない時期に奪った物だろう事を明白に表していた。


「僕達の人数のほぼ倍の頭数で襲ってきたのが気になるね」

「ああ、変に組織だった動きになっていないといいが」


魔術師さんの危惧に、剣士も別人みたいに思慮深い顔で頷いた。ゴブリンの身につけていた装備を検分していたシーフのリーナさんも、苦い顔で話に加わる。


「思っていたよりも規模が大きいかも知れないわね」

「ああ、結構でかい商隊も犠牲になったっていうから気にはなってたんだよな」

「巣に入り込むと危険かもしれないね、出来れば巣の外におびき出して分散させて倒していきたいところだけど」

「だな、ゴブリンの巣っつったら俺らにゃ狭い事も多いしなぁ。剣が振れなきゃ結構手こずるぜ」


剣士の言い分に、思わずゴブリンと彼らを見比べた。確かに体の大きさが倍近くもあるんだもの、ゴブリンの巣は自然に出来た洞窟を利用したものが多いらしいけど、ゴブリンにとって使い勝手のいい巣は人間にとっては動きにくいサイズの場合が多いのかも知れない。

武器もうまく使えない動きにくい場所で多勢に無勢になっちゃうと、こんなに強い彼らでも不覚を取る事があり得るんだと思うと、なんだかあたしまで緊張してきちゃう。


「なんなら煙で燻して巣から出しちまいたいとこだがな」

「連れ去られた人が、いるかも知れない」


剣士の意見に、初めて武闘家が異を唱えた。もし連れ去られた人がいたりするんならその人まで煙の被害にあっちゃうから、ダメって事なんだろうね。あたし達スライム属は煙とかじゃ死んだりしないけど、焦げ臭いのは嫌だなあ。


「そうだね、できるだけ道中で数を減らして、巣が近いようなら何匹かあえて逃して援軍を呼ばせた方がいいかもね」

「ええ、できるだけ広い場所で数を減らしたいわ」


そんな風な会話をしてからも何度かゴブリン達の襲撃を受けながら歩き続けて、森が薄暗くなってきた頃には、みんなの顔はハッキリとわかるくらい青ざめていた。

このままもう暫く行けば一番被害の酷い地域に着くらしいんだけど、むしろ少し戻った所の岩場で一旦夜を明かそうかという話になって、今はその岩場に向かって移動しているところ。雰囲気はとっても重苦しくなって、あたしまでなんだか悲しい気持ちになってしまう。


「道中で30体は倒したんじゃないか?」

「最後の奴らなんか1体倒しただけで一斉に退却したよね、あれ、巣に伝令にいったんじゃないかと思うんだけど」

「ええ、明らかに組織だった動きだったわよね。確実に50匹程度じゃ収まらない、どれくらいの規模感か想定がつかないわ」


移動しながらも深刻な会話が続いている。


「いったん、ギルドに報告に戻った方がいいと思う」


魔術師さんが厳しい顔でそう言って、パーティーには気まずい沈黙が落ちた。
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