33 / 80
約束
しおりを挟む
「遅くなって悪かった」
悲しそうに謝るBランクさんに、 女の人は「意外と自分では死ねないものね」と笑って「あの子と逝くわ。お願いね」と目を閉じる。その顔にはもう、悲しみは浮かんでいなかった。
「ま、待て!まさか!」
一瞬の事だった。
剣士が飛び出したけど、全然間に合わなくて。
Bランクさんの剣は、女の人の心臓を一突きにしていた。
「なぜ……なぜだ! やっと救えたんじゃないか!」
「こいつが望んだからだ」
詰め寄る剣士にも、Bランクさんは全く動じない。彼女の亡骸を愛しげに見つめながら、訥々と答える。
「こいつは誇り高い戦士だった。こいつにとっちゃ命より誇りの方が大事だった、それだけだ」
「……っ」
人間の考える事って不思議だ。命より大事な物なんて何もないじゃない。クイーンの行動は理解できる、自分の命より大切にしたい命があったんだよね。でも、命より誇りの方が大事なの?
わからなくて、アルマさんの懐の中で体を傾げていたら、悔しげな剣士を一瞥したBランクさんが、なぜかツカツカとアルマさんに歩み寄ってくる。
なあに?と思った瞬間、懐から引きずり出されてそのまま空中に投げられた。
くるくると回転しながら落ちてくるあたしに、Bランクさんの剣が真横から襲いかかる。
ビュッ
という、剣が風を切る音だけが嫌に響いた。
「てめえ!」
「スラちゃん!」
「やめて!」
「!!」
落ちていく瞬間、みんなの顔が見えた。驚きと焦りと悲壮感。だれもがあたしに手を伸ばしてくれている。
でも、きっと間に合わない。
迫り来る刃。
急に、Bランクさんのこれまでの虐殺っぷりの凄まじさが、走馬灯のように蘇って、からだが竦み上がった。
みんなが息を飲む音が聞こえて、剣があたしの体を通り過ぎ……
………
………あれ?
あたしはなぜかBランクさんの剣の上に、ピキーンと固まったまま、チョンと乗っかっていた。
え?
あれ?
なんで?
「お前達がこのスライムを連れ歩いてるのと一緒で、人の正義なんざ人それぞれってことだ」
は、あの、どういう、意味でしょうか。
Bランクさんがあたしを乗っけたままを剣を上下にチョイチョイと振るもんだから、すっかり固まったあたしはされるがまま浮いては剣で受けとめられるという、命の縮む時間を過ごしていた。
恐怖のあまりこんなに体がかちこちなのに、なぜ剣の上手に着地出来るのか。Bランクさんの受けとめ方がソフトなのか。
「人によっちゃあ魔物と見れば問答無用で斬られるぞ」
そう言って、ひときわ剣を強く振ったと思ったら、あたしはアルマさんの胸に戻っていた。
両手でしっかりとキャッチされ、一気に全身の力が抜ける。
「スラちゃん!」
「大丈夫?また真っ白だよ、怖かったのね」
「この上なく平べったいな」
「目玉焼き、再び」
みんなの声が遠くに聞こえる。これもう、意識が飛びかけてるんじゃなかろうか。
あたしを囲んで労わってくれるみんなを見て、Bランクさんがやれやれって感じで小さくため息をつくのが薄っすら見える。
「これからも連れ歩くなら、とやかく言わせねえくらいの力を持てよ」
そう言い放ったと思うと、Bランクさんはよいしょと女の人を両手で抱えて堂々とその場を去って行った。
悲しそうに謝るBランクさんに、 女の人は「意外と自分では死ねないものね」と笑って「あの子と逝くわ。お願いね」と目を閉じる。その顔にはもう、悲しみは浮かんでいなかった。
「ま、待て!まさか!」
一瞬の事だった。
剣士が飛び出したけど、全然間に合わなくて。
Bランクさんの剣は、女の人の心臓を一突きにしていた。
「なぜ……なぜだ! やっと救えたんじゃないか!」
「こいつが望んだからだ」
詰め寄る剣士にも、Bランクさんは全く動じない。彼女の亡骸を愛しげに見つめながら、訥々と答える。
「こいつは誇り高い戦士だった。こいつにとっちゃ命より誇りの方が大事だった、それだけだ」
「……っ」
人間の考える事って不思議だ。命より大事な物なんて何もないじゃない。クイーンの行動は理解できる、自分の命より大切にしたい命があったんだよね。でも、命より誇りの方が大事なの?
わからなくて、アルマさんの懐の中で体を傾げていたら、悔しげな剣士を一瞥したBランクさんが、なぜかツカツカとアルマさんに歩み寄ってくる。
なあに?と思った瞬間、懐から引きずり出されてそのまま空中に投げられた。
くるくると回転しながら落ちてくるあたしに、Bランクさんの剣が真横から襲いかかる。
ビュッ
という、剣が風を切る音だけが嫌に響いた。
「てめえ!」
「スラちゃん!」
「やめて!」
「!!」
落ちていく瞬間、みんなの顔が見えた。驚きと焦りと悲壮感。だれもがあたしに手を伸ばしてくれている。
でも、きっと間に合わない。
迫り来る刃。
急に、Bランクさんのこれまでの虐殺っぷりの凄まじさが、走馬灯のように蘇って、からだが竦み上がった。
みんなが息を飲む音が聞こえて、剣があたしの体を通り過ぎ……
………
………あれ?
あたしはなぜかBランクさんの剣の上に、ピキーンと固まったまま、チョンと乗っかっていた。
え?
あれ?
なんで?
「お前達がこのスライムを連れ歩いてるのと一緒で、人の正義なんざ人それぞれってことだ」
は、あの、どういう、意味でしょうか。
Bランクさんがあたしを乗っけたままを剣を上下にチョイチョイと振るもんだから、すっかり固まったあたしはされるがまま浮いては剣で受けとめられるという、命の縮む時間を過ごしていた。
恐怖のあまりこんなに体がかちこちなのに、なぜ剣の上手に着地出来るのか。Bランクさんの受けとめ方がソフトなのか。
「人によっちゃあ魔物と見れば問答無用で斬られるぞ」
そう言って、ひときわ剣を強く振ったと思ったら、あたしはアルマさんの胸に戻っていた。
両手でしっかりとキャッチされ、一気に全身の力が抜ける。
「スラちゃん!」
「大丈夫?また真っ白だよ、怖かったのね」
「この上なく平べったいな」
「目玉焼き、再び」
みんなの声が遠くに聞こえる。これもう、意識が飛びかけてるんじゃなかろうか。
あたしを囲んで労わってくれるみんなを見て、Bランクさんがやれやれって感じで小さくため息をつくのが薄っすら見える。
「これからも連れ歩くなら、とやかく言わせねえくらいの力を持てよ」
そう言い放ったと思うと、Bランクさんはよいしょと女の人を両手で抱えて堂々とその場を去って行った。
0
あなたにおすすめの小説
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる