あたし、スライム。初めての恋をしました

真弓りの

文字の大きさ
76 / 80

新たな目的地

しおりを挟む
「良かった、スラちゃん!」


ぎゅーーーーーーっって、アルマさんが抱きしめてくれて、あたしもう、嬉しくて嬉しくて……!

えーん、あたしもアルマさん達のところへ戻ってきたかったよぅ。

アルマさんの腕の中で幸せを堪能していたら、後ろの海から大きな音が聞こえてきた。アルマさんの腕の隙間から海の方を見てみると、さっき海の魔物がいたあたりに、大きな水しぶきがあがっている。

さしものあの巨大な魔物でも、コーチの攻撃には耐えられなかったんだろう。

海に沈んで、上がってくる様子はない。

ホッとしている一方で、今度は思わぬところから水しぶきが起こった。

えっ……。

あれって、ジョットさん? なんでジョットさんが海に飛び込むの?

不思議に思ってジョットさんが泳いでいく先を見たら、そこでも派手な水しぶきが上がっていた。

あの場所って、さっきコーチが落ちたところじゃない! コーチ、まさか溺れてるの!? あんなに体動かすのが得意なコーチが溺れるだなんて、想像もしてなかった!


「え!? ちょっと待ってよ。トマ、溺れてるの!? 泳ぎダメだったっけ?」


リーナさんからも驚きの声があがる。リーナさんにとっても予想外の事態だったみたいだ。三兄弟も心配げにオロオロプルプルと揺れていてる。

特にトップくんはコーチが心配で仕方ないのか、海に近寄ろうとしてリーナさんに慌てて確保されていた。


「いや、泳ぎは得意だってこの前言ってた。たぶん、皮鎧が重すぎてうまく泳げないんだろう」


厳しい顔でジョットさんがコーチの元までたどり着くのを見ていたアルマさんは、海の中に突然潜ったジョットさんがコーチから脱がせたと思しき皮鎧をこっちに向かって投げつけるのを見て、ホッと息をつく。


「良かった、間に合ったみたいだ」


重石になっている鎧さえなければ、コーチもまだ体力的には泳げたみたいで、やがて二人してこちらに向かって泳ぎ始めて、あたしもようやく安心した。

良かった。まさかコーチが危なくなるだなんて、あたし本当に思ってなかったの。

なんとかジョットさんに救助されたコーチがなんでもないみたいな顔で海から上がってくるのに、トップくんが思いっきり飛びついたけど、あたしだっておんなじ気持ちだよ。

コーチはこっちの心配なんか気が付いた様子もなく、皮鎧を拾い上げながら「はー、ヒデエ目にあったぜ」なんて笑っている。


「やべえ、剣がなくなっちまった。ナイフだけじゃなあ」


コーチったらもう別の心配してて、安心したような肩透かしをくらったような、なんか複雑な気持ちなんですけど。

アルマさんもちょっとだけ笑って、コーチの方をポンと叩く。


「確かにこの状態でクエストを続行するのは危ないね。今すぐリックスに向かおう」

「剣、買ってくれるのか!?」

「そりゃあね。それにこの前買うって約束したし、せっかくだからいいのを選ぼう」

「やったぁあああ!!!!」


アルマさんの言葉に、コーチは本当に飛び上がって喜んだ。なかなかの跳躍力だなぁ、スライムなみだよ。多分わけわかってないけど、なんとなくコーチと一緒に飛び跳ねてるトップくんが可愛い。


「リックスって……この先の港町? たしかアルマのお師匠さんが居る街じゃなかったかしら」


リーナさんの質問に、アルマさんはメガネを軽く上げながら頷いた。


「そう、元々ついでに寄るつもりだったんだ。お師なら、スラちゃんの育成方法に何かアドバイスをくれるんじゃないかと思ってね」


アルマさん……! なんて優しい人なんだ!
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...